ビットコイン7週連続陰線は2014年以来、オンチェーンアナリストが探る相場の底は CoinPost週次データレポート Vol.49
5月の仮想通貨動向
5月第2週の暗号資産(仮想通貨)市場。株式市場の下落や無担保型のアルゴリズム・ステーブルコイン「テラUSD(UST)」のディペッグ騒動などが相場全体に波及、BTC価格は21年7月以来10ヶ月ぶりに3万ドルのラインを下回った。
時価総額2位のイーサリアム(ETH)も2,000ドルのラインを下回るなど、BTCとともにピーク時の半分以上の水準まで下落した。
一方、米国の金融市場との連動も着目されており、BTCやETHとのS&P500指数との相関性(180日)は、20年3月のコロナショック以来の高水準に接近した。
時価総額TOP20の騰落率
時価総額上位銘柄の週間騰落率は以下の通り。(15日時点:ステーブルコイン除く)
- ビットコイン(BTC)-8.09%
- ポルカドット(DOT)-11.00%
- バイナンスコイン(BNB)-12.21%
- イーサリアム(ETH)-14.77%
- トロン(TRX)-17.33%
関連:2015〜2020年、仮想通貨「時価総額TOP20」の顔ぶれと変化
ビットコインのオンチェーン・データ
ビットコイン(BTC)関連の注目のオンチェーンデータは以下の通り。
UST急落の内訳
USTの急落に際して、Luna Foundation Guard(LFG)は担保資産の売却を通じてペッグを保とうとしたが、これに失敗。累計8万BTCを売却したが、売り圧力が強まりUSTやテラ(LUNA)は急落を続けた。
相場の注目はテラの共同設立者Do Kwon氏などに集まったが、直ちにコメントはみられなかった。
関連:テラUSD(UST)のディペッグ騒動 Terraform Labs社や取引所の対応まとめ
大きな「売り圧力がなくなった」
一方、仮想通貨投資分析企業Castle Island Venturesの共同設立者であるNic Carter氏は、LFGのビットコイン資産の売却は長期的には良い傾向だとコメント。市場は「不安定なシステムが、4,500億円(35億ドル)相当のBTCを売却リスクから解放された」と述べた。
Carter氏は、18万BTCを保有して、2019年の急落時に同様に売却せざるを得なかったPlustokenの事例を挙げ、このようなプロジェクトは相場のボラティリティに加担すると分析している。
最大の仮想通貨取引所
仮想通貨分析企業CryptoQuantのKi Young Ju CEOはオンチェーンデータ上で現物取引が最も多い取引所をリスト化。バイナンス、OKX、FTXが上位を占めたと語った。
バイナンスは個人投資家と大口投資家ともに利用者数が最多。歴史的にクジラ(大口投資家)取引の盛んだったBitfinexから、近年ではバイナンス及びOKXへと現物市場に影響を及ぼす大口投資家が受け継がれている(移っている)とした。
また、先物市場は大口投資家が牽引しており、過去2週間でBitfinexに流入した5万BTCの内、3.9万BTCがロングポジションだった。これはBitfinexのロング数としては過去最多を更新する規模だという。
過去相場との比較
過去相場との比較では、前回の暗号資産(仮想通貨)バブル崩壊時と類似したパターンも見受けられた。
2018年と類似したパターン
オンチェーンアナリストのPlan C氏は、オンチェーンベースのBTCコスト(購入価格)単価で19,000ドルから26,000ドル台の供給量でギャップが生じていると指摘。過去には2018年12月にも同様パターンがあったと考察した。
2014年以来の続落
またBTCチャートの週足は、7週連続陰線に。アナリストのLark Davis氏は、これがビットコイン史上最長だと述べ、2014年に記録した6週連続を初めて上回ったという。
ビットコインの損益率
しかし、ビットコイン供給量の購入時点のBTC価格を基にした収益率は、未だ実益状態(赤)の供給量が上回っている状態が続く。
著名オンチェーンアナリストのOn Chain College氏は、歴史的には実損状態(緑)にある供給量が上回ると弱気相場の底を付けるタイミングと一致する傾向があると述べ、現時点ではまだそのラインを超えていないと分析した。
実現価格ラインをキープ
また、仮想通貨分析企業Glassnodeは13日、ビットコイン価格が一時25,400ドルまで急落したと述べ、実現価格ラインまで接近したとコメント。
実現価格ラインを最後に市場価格が割ったのは20年3月のコロナショック時以来。歴史的にはこの実現価格帯がサポートラインとして機能する傾向があると分析した。
実現価格とは
正式名称はRealized Price。仮想通貨のUTXO(未使用の取引アウトプット)データを基に、現在の市場価格ではなく最後の取引時点での価格を基に算出した時価総額を供給量で割ったBTC価格。
▶️仮想通貨用語集
関連:ビットコイン市場に「2つのシナリオ」 仮想通貨企業Glassnode分析
「ビットコインは買い時」
著名オンチェーンアナリストのWill Clemente氏は、直近のビットコイン価格は底値に近づいていると分析。以下のオンチェーン指標を元に、ビットコインは20,000ドル台半ばで底を打つと予想した。
- 実現価格
- MVRVレシオ
- 休眠フロー(Dormancy Flow)
- リザーブリスク
- メイヤー倍数
- 200日移動平均線
メイヤー倍数とは
アナリストのTrace Mayer氏が考案したオンチェーン指標で、正式名称は「Mayer Multiple」。ビットコイン(BTC)の現在価格を200日移動平均線で割って算出する。
1.0を超えるとBTC価格がポジティブな地合い、2.4を超えると長期的な上昇が見られる傾向があるとされ、長期トレンドを図る上で有益な指標とされる。
▶️仮想通貨用語集
PlanB考察
界隈から賛否両論を集める「ストック・トゥ・フロー」(S2F)モデルを応用した価格予想で知られるアナリストのPlanB氏は、21年12月時点にはさらなる強気相場の上昇を期待していたとコメント。しかし、「22年1Q(1月〜3月)を経て、ビットコインの強気相場は終わっていることが明らかになった」と述べた。
PlanB氏によれば、昨年の最初のピークの21年4月時点で「弱気相場の兆候はあった」と指摘。現在は、次のサイクルに向けてボトムを形成していると考察した。
ストック・フロー比率(S2F)とは
伝統市場ではゴールドなど貴金属の希少性と価値を測るモデルとして利用される金融モデル。市場流通量に対して、1年間に生産(発行)できる量が限られているため、供給過多によって価格が暴落する可能性は低いと提唱する。
オンチェーンアナリストが2020年の半減期を目前位、供給量が2,100万枚で定められているビットコインにこのモデルを応用した。
▶️仮想通貨用語集
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関連: 「半減期とビットコインの高騰」なぜ一緒に語られる、S2F比率から算出する理論価格とは
イーサリアムのオンチェーン・データ
イーサリアム(ETH)関連の注目のオンチェーンデータは以下の通り。
ETH2.0 ステーキング額
ステーキング額:1,213万ETH(前週比+15万ETH)
関連:仮想通貨ステーキングとは|初心者でもわかる「報酬」の仕組み
バーン量
イーサリアムのバーン(焼却)量は17日、前週比で49,251ETHに達した。21年8月以降の通算バーン量は6,000億円(46.8億ドル)相当の234万ETHとなった。
DeFi(分散型金融)
DeFiプラットフォームのTVLは16日時点で14.6兆円(1,137億ドル)だった。
TVL(Total Value Locked)は、DeFiプロトコルへ預入れされた仮想通貨資産の総ロック額を指す。
NFT
クリプト指標
日程 | 指標 |
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5/17 |
コインチェック Factom(FCT)上場廃止 |
5/18 |
国内IEO2回目「琉球コイン」抽選、受け渡し日 |
前回の週次レポートはこちら:ビットコイン長期保有率(1年以上)が過去最高を更新、NFT通算取引量は6兆円規模に
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関連:クリプト指標導入「CoinPostアプリ」の使い方をトレーダー目線で解説|寄稿:Bit仙人
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