テラUSD(UST)のディペッグ騒動 Terraform Labs社や取引所の対応まとめ

ステーブルコイン急落

時価総額でトップ10内にあった暗号資産(仮想通貨)テラ(LUNA)が、数日間のうちに99.99%下落して、市場に大きな影響を及ぼした。

データサイトCoinMarketCapによると、5月8日時点にルナ(LUNA)の時価総額は約2兆9000億円あったが、5月13日時点には85億円にまで転落。こうした事態は、ルナ(LUNA)が裏付け資産となっているアルゴリズム型ステーブルコイン「TerraUSD(UST)」が、短期間で1ドルの基準値を大きく乖離(ディペッグ)したために生じた。

ルナ(LUNA)の価値が下落するとTerraUSD(UST)の価値を支えられなくなり、市場参加者が次々にUSTを手放す連鎖状態となった。この間、運営チームやコミュニティの応急処置の失敗、一部の大口投資家による大量売却(ダンプ)、仮想通貨取引所やTerraチェーンの機能停止といったイベントにより、投資家の不安感情が増幅された。

本記事では、最初にUSTのデペッグが生じた5月7日以降、Terraチェーンとエコシステムに起きた事象についてまとめていく。

LUNA、USTの価格推移と主要な出来事

UST/BUSD、LUNA/BUSD、30分足@Binance

出典:TradingView

日付 内容
5/7 午後6時(日本時間): Anchor ProtocolからUSTの大口出金(1日で計14億ドル 通常の6倍)が発覚。 (関連データ
5/7~8 約360億円(2億8500万ドル)のUSTがCurveとBianceで売却。 (関連データ
5/7 午後10時: USTに2%弱のデペッグ発生。1.0ドル→0.985ドル。テラ(LUNA)も約10%下落。 (関連記事
5/9 午前1時: Luna Foundation Guard(LFG)が計2,000億円(15億ドル)の流動性をマーケットメイカーに配備。その半分はBTC→UST買い支えに使用する方針。(関連記事
5/10 LFGのBTCウォレット(UST準備金)が残高ゼロに。ビットコインの売り圧として不安が拡大。(関連データ
5/10 午前9時: 時価総額がLUNA<USTに。20億ドルの救済案の噂。Terraform Labsが対策チームを結成。 (関連記事
5/10 午後0時30分: バイナンスでLUNA・UST出金停止(同日午後7時に再開) (関連記事
5/10 午前5時: LFG、新BTCウォレット公開 (関連データ午前10時:残高0に。
5/11 午前4時: Luna Foundation Guard(LFG)が1,300億円規模の資金調達を計画。2年間のロックアップを条件に、投資家にテラ(LUNA)を50%割引で販売する内容。(関連記事
5/11 午後7時: USTを買い支えるLUNAについて、増刷時の容量を2億9300万ドルから約12億ドルに4倍増とするコミュニティ提案。(関連データ
5/11 Anchor Protocolにて、USTの利率を19.5%から最低3%に引き下げる提案。(関連データ
5/11~12 DragonflyやMulticoin CapitalなどVCが次々に「LUNA・USTのエクスポージャーはない」と宣言。NFT発行者やDAO(分散型自立組織)などもトレンドに加わる。(関連データ
5/12 ブラックロックとシタデル、ステーブルコインUSTの取引を否定。「ブラックロックと大手ヘッジファンドのシタデルが共同で、仮想通貨取引所Geminiから10万BTCを借りてUSTを購入した上で、USTを大量売却し、市場を崩壊させた」という噂について、Geminiも「そのような取引はない」と否定。(関連記事
5/12 正午: Do Kwon氏がステーブルコイン「Basis Cash(BAC)」の共同創設者とCoindesk報道。(関連記事
5/12 午後10時: バイナンス、LUNAの証拠金取引の取扱廃止を発表。日本時間13日0時に「LUNA USDT」無期限先物取引市場を廃止。(関連記事
5/13 午前1時~3時 テラチェーン停止。LUMAトークンネットワークの下落によるガバナンス攻撃を防ぐため。LUNAトークンの委任(Delegation)を無効にして再開。(関連記事
5/13 午前9時: BinanceがLUNA現物の上場廃止を発表、10分後に実施。 午後11時:BinanceがLUNA&USTの市場再開→LUNA/BUSD、UST/BUSD。(関連記事
5/14 午前7時: Terraform Labs社のDo Kwon氏、「リバイバル(復興)プラン」を公開。テラのコミュニティと開発者のエコシステムを維持することを最優先に、Terraチェーンの「フォーク」を提案。(関連記事
5/16 午後6時: Binance CZ氏、テラのプロジェクトチームに投資家への補償を要請ツイート。会社として、1,500万LUNAの保有を公表。(関連記事
5/16 午後6時: LFG、UST準備金として保有していた80,394BTCについて、現在は313BTCに減少していることを公表。(関連データ
5/17 午前2時: Do Kwon氏、「リバイバル(復興)プラン2」を公開。テラの復興に不可欠なdAppsをリストアップし、優遇策を提案。(関連記事
5/17 午前11時: 韓国与党議員、テラ開発のDo Kwon氏らを招いた公聴会開催を要請=現地メディア報道(関連記事
5/17 Terraform Labs法務チームの幹部3名が5月に辞職したことが明らかになった。(関連記事
5/17 ポリゴンやファントム等、LUNAエコシステム争奪戦に。BNB Chainもテラ・エコシステム上のプロジェクトの誘致を目的に、資金・インフラ面でサポートしていく方針を打ち出す。(関連記事1関連記事2
5/17 午後9時: リバイバル(復興)プラン2の投票スタート。(関連データ
5/18 Delphi Digitalやノボグラッツ等の著名投資家が釈明、テラ支援とUSTディペッグ騒動の背景を語る。(関連記事
5/20 正午: リバイバル(復興)プラン2の内容を一部修正。批判の声が上がり、支持率は80%→65%に低下。(関連記事
5/25 復興プラン2がコミュニティ投票によって可決。(関連記事

デス・スパイラルの背景

TerraUSD(UST)は、テラブロックチェーン上で発行される無担保(アルゴリズム)型ステーブルコインだ。アルゴリズムをベースにUSTの価格に基づいて、LUNAトークンを発行したりバーンすることで供給量を調整し、米ドル価値とのペッグ(連動)を維持する。

UST価格が1ドルを超えると、LUNAをバーン(焼却)することで1USTを入手できるが、UST価格が下落した場合は、1USTを1ドル相当のLUNAと交換できる仕組み。USTが下落するほど多くのLUNAが発行され、市場で売却される。USTがドルペグを奪還しない限り、負のサイクルは続く。

実際に、USTが5月13日の終値ベースで0.123393ドルまで下落する中、仮想通貨LUNAの流通量は22年5月8日時点の3億4000万枚から5月13日に6兆枚強まで増加した。

TerraUSD(UST)とLUNAの死の連鎖(デス・スパイラル)は日本時間5月8日頃に始まった。少数の大口投資家がTerraネットワークのレンディングプロトコル「Anchor Protocol」から大量のUST(約650億円)を引き出すと、仮想通貨取引所バイナンスや分散型取引所Curveで大量のUSTが売却された。この時期にUSTで約2%のデペッグが生じている。

出典:Anchor Protocol

Anchor Protocoは、USTの預金に19.5%の利回りを約束するTerra最大のユースケースとして普及した。しかし、Anchorの預入総額TVL)は5月4日のピーク1兆8,000億円(140億ドル)を境にして、5月7日以降は急激に減少し始めた。この事実は、Curveの「3Pool」の出口流動性(USTと交換するUSDCやUSDT等のこと)の減少と組み合わさり、投資家の不安を掻き立てた。

Anchor Protocolとは

Terraチェーン上の貯蓄及び融資プロトコル。ステーブルコインUSTの預金に対して年利約20%の高利回りを安定的に提供する。持続可能性には疑問の声も上がっていた。

▶️仮想通貨用語集

関連:ポルカドット上のDeFiプロジェクト「Acala」、テラ基盤の「Anchor」を統合

出典:DuneAnalytics

さらに、Luna Foundation Guard(LFG)はUSTの価値を支える準備金として5月6日時点で、80,394BTC(約3,800億円)を保有していたが、この公開アドレスの残高がゼロになったことがソーシャルメディア上で広まると、投資家のFUD(恐怖、不安、疑念)をさらに煽った。この影響は、ビットコイン(BTC)の価格下落にもつながっている。

実際のところ、22年3月から進めてきたUSTの拡大戦略の一環で、Terra運営サイドがAnchor ProtocolとCurveの「3Pool」からUSTを出金し、Curve「4Pool」へ移すことを計画していた事が分かっている。5月8日にDo Kwon氏は「4poolのためにUST資金を引き出した」旨を公言している。

それでも、このタイミングを狙って攻撃者が大量の資金力でCurve「3Pool」のUSTの出口流動性を枯渇させ、大量のUST売却によって意図的にディペッグ状態を作り、混乱に乗じてビットコイン(BTC)やLUNAのショート(空売り)で収益を得たとの憶測も広まっている。

テラチェーン復興に向けて

Terraform Labs社のDo Kwon共同創設者は14日、テラ(LUNA)のエコシステムに関する「リバイバル(復興)プラン」を公開。テラのコミュニティと開発者のエコシステムを維持することを最優先に、Terraチェーンのコードをコピーして再構築すること(「フォーク」と表現)を提案した。

新たに10億トークンを発行し、忠実なコミュニティメンバーや開発者がエコシステムに留まるように、「攻撃開始前」のLUNA・USTトークンの保有者に対してより多くのトークンを分配する意向を示している。

復興プランは14日午前8時頃から投票が開始されており、投票期間は7日間に設定されている。

5/18追記:

Do Kwon氏は17日、Terraチェーンの「リバイバルプラン(復興)プラン2」を提案。既存のテラネットワークを「Terra Classic」、その仮想通貨を「LUNA Classic(LUNC)」に変更し、エコシステムの優れた人材とリソースは新生テラブロックチェーンに移すべきだと主張。また、ステークホルダーに新たに作成する仮想通貨ルナ(LUNA)をエアドロップすると述べた。

特にWeb3(ウェブスリー)エコシステムを成立する上で不可欠なdAppsを列挙。これらのプロジェクトに対して新たなTerraチェーン上でのローンチを約束することを条件に、好条件を持ち掛ける内容となっている。

出典:Terra Station

Do Kwon氏は、復興プラン2がTerraの主要なプロトコルから支持を得ていると強調。18日に開始されたコミュニティ投票は執筆時点では約87%の賛成票を集めており、残り6日間の期日をよそに、定足数に迫っている。なお、仮に過半数の支持を得たとしても、「拒否権付き反対(No with veto)」の割合が33.4%の閾値を超えていれば廃案となる。

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