仮想通貨市況
トランプ米政権による「相互関税」導入の発表が4月2日に迫る中、投資家心理の冷え込みが暗号資産(仮想通貨)市場にも影響を及ぼしている。この政策は、米国の貿易相手国と同水準まで関税率を引き上げるもので、米国経済への下押し圧力となる可能性が高い。
日経平均株価は、一時1500円超安の下げ幅を記録した。
暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコイン(BTC)は前日比-1.69%の1BTC=81,839ドルと続落した。
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暗号資産(仮想通貨)市場は全体的に下落トレンドが続いており、特に主要アルトコインの価格下落が顕著となっている。
市場データによると、ビットコインは前週比で-6.51%に対し、イーサリアムは-13.0%、XRPは-14.3%と、ビットコインの2倍以上の下落率を記録している。その他の銘柄では、ソラナが-10.7%、カルダノが-10.4%、ドージコインが-9.2%と軒並み大きく調整している。
前週までの反発局面では、ビットコインは一時88,770ドルまで上昇し、3月上旬に記録した76,600ドルの安値から回復を見せていた。
この回復の背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)による量的引き締め(QT)政策の緩和があると専門家は分析している。BitMEX共同創設者のアーサー・ヘイズ氏は「ビットコインの77,000ドルが底値だった」との見解を示し、Axie Infinityの共同創設者Jeff Zirlin氏も、FRBの政策緩和は市場にとって好材料だと高く評価している。
FRB(米連邦準備制度)は19日、量的引き締めペースを大幅に減速させる方針を発表した。国債売却額を月間250億ドルから50億ドルへと80%削減する決定により、市場の流動性が改善し、リスク資産であるビットコインへの資金流入が促進される環境が整いつつある。
しかし、4月2日に迫るトランプ大統領の新たな関税発表を前に、市場は再び貿易摩擦への緊張感を高めている。
デジタル資産投資プラットフォームNexoのステラ・ズラタレバ氏は「4月2日は米国の新たな関税発表の潜在的な火種として注目を集めている」と指摘している。
過去の例を見ると、トランプ大統領が1月20日の就任当日に中国製品への輸入関税を発表した後の2ヶ月間で、ビットコインは18%、S&P500指数は7%以上下落した経緯がある。
著名投資家のAlex Kruger氏は、4月2日のトランプ政権による相互関税発表を「今年最大の市場イベント」と位置づけ、警鐘を鳴らした。
相互関税発表日について、昨年11月の米大統領選に匹敵するイベントだと指摘、FOMC(米連邦公開市場委員会)よりも遥かに重要と強調している。
Alex Kruger氏は、想定される3つのシナリオを示している。
- 緩和シナリオ:市場予想よりも融和的な措置を発表した場合、市場は激しく反発する
- 中間シナリオ:中途半端な発表の場合、ロングとショート両方のストップを誘発する市場の混乱が起きる
- 強硬シナリオ:全面的な関税導入を発表した場合、伝統金融市場はさらに10%から15%急落する可能性がある
また、最悪のケースでは、トランプ大統領が強硬的な関税を導入した後、対象国との厳しい交渉を経て関税を徐々に撤回・緩和するパターンも考えられるとし、その場合は米国の確定申告日と重なる4月第2週頃に市場の悲観論がピークに達する可能性が考えられるという。
米国経済は依然として強いものの、トランプ大統領がどの道を選んでも関税により減速する可能性が高いと指摘している。ただし、多くのエコノミストはすでに年末にかけての急激な経済減速を予想しており、「この点については、大部分がすでに市場に織り込まれている」と分析している。
著名アナリストのピーター・ブラント氏は、ビットコインの下落リスクについて警鐘を鳴らした。
同氏の最新分析によれば、ビットコインは85,000ドルの重要サポートレベルを失った後、弱気継続パターンから脱却できておらず、今後70,000ドルを下回る可能性が高いという。
ビットコインは2024年11月から2025年1月にかけて急騰した後、2月から下落トレンドに転じた。現在のチャートは“ベアウェッジ”と呼ばれる下降三角形のパターンを形成しており、下値余地は約65,600ドルとされている。
足元は売られすぎ水準にあるが、株式指数の反転なくして仮想通貨市場単体での上昇は困難だろう。いずれにせよ、FRBの金融政策や4月2日に予定されるトランプ政権の関税発表といった外部要因に大きく左右されそうだ。
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