
金融商品取引法の改正案
金融庁は2026年を目途に、暗号資産(仮想通貨)を金融商品とする金融商品取引法の改正案を国会に提出する見込みだ。また、インサイダー取引についての規制も導入する。日本経済新聞が30日に報じた。
金融庁は以前より、ビットコイン(BTC)などの仮想通貨を決済手段として扱う現行の規制枠組みが市場実態と乖離していると認識していた。仮想通貨は決済手段ではなく投資目的で取引されることが多いため、これに規制を適合させる動きとなる。
インサイダー取引とは
ある事業の内部者しか知り得ない重要事実に関する情報に接する立場にある者が、その立場上知り得た情報に基づいて、その情報が公表される前に関連株式などを売買すること。金融商品取引法で禁止されている。
海外の事例では、コインベースの元プロダクトマネージャーが仮想通貨の上場前情報を弟と友人に漏洩したことが発覚した。2021年6月から2022年4月にかけて数十種類のトークンを事前購入して約1億3800万円の不正利益を得たとされる。
関係者は通信詐欺の共謀および通信詐欺で刑事起訴され、米SEC(証券取引委員会)からもインサイダー取引で民事提訴された。
最近では、仮想通貨取引所バイナンスの社員が非公開情報を悪用してインサイダー取引を行っていたことが発覚。法的手続きが進められている。
この従業員はBNBチェーンのビジネス開発担当者で、新規プロジェクトのトークン生成イベント(TGE)情報を事前に入手し、複数のウォレットで大量購入。公式発表後に売却して巨額の利益を得ていた。
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税制改正も関連
金融庁は今年2月、仮想通貨を有価証券に準ずる金融商品として位置付ける方向での制度設計に着手したところだ。
これまで資金決済法では、暗号資産交換業者に対する顧客資産の分別管理などが定められていたが、さらに投資家保護の観点から強化する方向で検討が進んでいた。
金融庁の柳瀬審議官や日本暗号資産ビジネス協会副会長の白石陽介氏は3月5日、「HashPort・WebX Round Table」に登壇し、仮想通貨規制の方向性について議論を行っている。
この際に柳瀬氏は、「日本国内でも暗号資産交換業者の管理するアカウント数は1,100万口座に達している」と指摘。決済手段よりも投資対象として普及している現状に合わせた規制の必要性を示唆した。
新たな規制については、ルールが明確になることでビジネスリスクが低減し、関連事業の後押しになることも期待されているところだ。仮に仮想通貨が現在の総合課税(最大税率55%)から株式同様の分離課税(税率20%)へと移行すれば、投資家の税負担が軽減され、市場への資金流入増加や取引活性化につながる可能性が高い。また、税制の簡素化により確定申告の負担軽減やコンプライアンス向上も期待できるだろう。
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トークン分類の必要性
柳瀬氏らは、仮想通貨の中でもトークンの性質は多様であり、規制の上では金融商品としての色合いが強いトークンとそうではないトークンの違いを考慮する必要性もあると指摘した。
規制設定の上では、国際的な動向も参照される可能性がある。現在、米国ではトランプ政権誕生にともない、米証券取引委員会(SEC)が新たにトークンの分類方法を検討しているところだ。
関連して、SEC企業財務部門は2月、ミームコインの提供と販売は証券法の対象とならない可能性があると正式に表明している。
ミームコインは収益を生み出さず、証券のように企業の将来の収入、利益、資産に対する権利を付与することもないとの認識が背景だ。ただしSECは、あるトークンがミームコインを名乗っていても、プロジェクトの実態が証券である場合は、その経済的実態に基づいて評価されると述べている。
ミームコインとは
インターネット上で話題になることで人気を集めるコイン。代表的なものにイーロン・マスク氏がSNSで言及することで取引量が急増したドージコイン(DOGE)がある。2020年にドージコインを踏まえてリリースされたSHIBA INU(SHIB)も存在。