はじめての仮想通貨
TOP 新着一覧 チャート 学習-運用
CoinPostで今最も読まれています

金融庁審議官らが語る日本の暗号資産規制とWeb3特有の課題|HashPort・WebX Round Table

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

日本の暗号資産(仮想通貨)規制が、大きな転換点を迎えようとしている。

2025年3月5日に開催された株式会社HashPortと一般社団法人WebX実行委員会が主催するWeb3をテーマにしたイベント「HashPort・WebX Round Table」では、この転換期にある日本のWeb3政策について、国内外のキーパーソンが一堂に会し議論した。

金融庁の柳瀬審議官や日本暗号資産ビジネス協会副会長の白石陽介氏がスピーカーとして登壇し、規制の方向性について具体的な議論が交わされた。

現状認識と課題

柳瀬氏によれば、資金決済法での暗号資産規制は、2017年4月の施行から約8年が経過し、当初想定されていた決済手段としての役割から大きく変化している。

柳瀬氏:「資金決済法での暗号資産規制はが経過し、当初は決済するんだという話だった。中央銀行あるいは政府から離れた決済手段として役割を持っていた。しかし実際、市場の価格変動もあるし、現時点では決済手段としては普及していない。」

暗号資産は投資対象としての色合いが強まり、柳瀬氏によれば「日本国内でも暗号資産交換業者の管理するアカウント数は1,100万口座に達している」という。この変化に対して、現行の資金決済法の枠組みが今の暗号資産の実態にフィットしているかという問題意識が生まれている。

金融庁による規制改革の動向

金融庁は、2025年6月頃までに「暗号資産の規制の在り方に関する有識者研究会」の結論を出し、金融審議会での検討を経て、同年秋から年末にかけて規制枠組みに関する法案を作成、2026年の通常国会での提出を目指している。もし法案が可決された場合、約1年の準備期間を経ての施行が見込まれる。

金融庁の柳瀬審議官によれば、この法案作成プロセスでは、国際的な規制動向も参考にしながら検討が進められており、特に暗号資産が投資対象として定着してきた実態を踏まえた制度設計が重視されている。

従来の資金決済法による規制では、暗号資産交換業者に対する厳格な分別管理や顧客への説明義務などが定められていたが、これをさらに投資家保護の観点から強化する方向で検討が進んでいる。

金商法移行の可能性

現在、報道されている金商法への移行については、柳瀬氏は選択肢の一つとしながらも、まだ明確に定まった状態ではないとした。重要な点は暗号資産の特性にあった規制をどのように整備していくかであり、単に金商法を組み込むことが目的ではないとのこと。

柳瀬氏:「具体的にどこの法律をどうするかという段階までは決まっていなくて…もちろん金融商品取引法に取り込んでいくというのも一つの選択肢だという認識がありますけれども、まだそこまで明確に固めた状態ではありません」

また別の場面で柳瀬氏は、実用性を重視する姿勢を示し、次のように述べている。

柳瀬氏
「金商法への移行は選択肢の一つだが、無理なことやってもしようがない。国民の資産形成にどういう風に資するのかというのが重要なキーワード。あんまり規制していると結局使わないというのは本末転倒」

「税制改正との関係では、金融商品の税制体系、例えば株式などの税制体系を暗号資産に当てはめる場合、特に一般の利用者に対する投資家保護として何を考えるべきかが重要だ」

と実用性を重視する姿勢を示した。

関連:「暗号資産は金商法に位置づけが適切」塩崎議員が衆院予算委で質問 新アセットクラスとしての検討提言

税制改正との関連

今回の規制見直しは税制とも深く関連している。与党の税制改正大綱では「一定の暗号資産を広く国民の資産形成に資する金融商品として位置づけ、必要な法整備を行うことを前提に、他の金融商品と同様の課税方式を検討する」としている。

これは現在の総合課税(最大税率55%)から分離課税(税率20%)への移行の可能性を示唆するものだが、そのためには投資家保護のための規制整備が前提となる。この点は暗号資産業界から長年要望が出ていた内容であり、実現すれば投資環境の大幅な改善が見込まれる。

関連:仮想通貨税制改正の注目点、申告分離課税の行方・資金決済法改正の影響は?

暗号資産業界への影響

規制改革による事業者への影響について柳瀬氏は「暗号資産交換業者のビジネスのサブスタンスは変わらない」としつつも、「多くの業者が第一種金融商品取引業者になる可能性が高い」と予想。新たな規制体系によりビジネスリスクの低減につながるとの見方を示した。

白石氏もルールが明確化されることでビジネスが加速しやすくなるとポジティブな見方をしている。特に現状では規制の不確実性からサービス開発や投資判断が進みにくい状況があるが、規制の方向性が明確になることで産業全体の発展が期待できる。

Web3特有の課題とウォレットの役割

トークンの多様性については、金融商品としての色合いが強いトークンとそうではないトークンで規制の在り方も変わるべきという認識が共有された。

白石氏によると、カストディアン(資産管理者)を通じて暗号資産を金融商品として購入したい初心者層が存在する。もう一方では、自己責任を前提としたノンカストディのサービスを求める高度なリテラシーを持つユーザー層が存在する。

特にDeFiやノンカストディウォレットなどの新しいサービスについては、従来の金融規制とは異なるアプローチが必要との見解も示している。この点について白石氏は、

白石氏:「初心者でも入りやすくて、安心なちゃんと規制されている世界と、自己責任なんだけれども自由度の高い世界にちゃんと分かれて、入り口からユーザーが迷わないようになっていければ」

と、理想的な規制環境について見解を述べた。

暗号資産業界の健全な発展のためには、初心者でも入りやすく安心な規制された世界と自己責任だが自由度の高い世界が共存できる規制環境の構築が重要との認識で一致した。

厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
04/29 火曜日
19:09
LINE NEXT、ドバイで「Mini Dapp Builder Meetup」開催へ
LINE NEXTがドバイで開催する「Mini Dapp Builder Meetup」の詳細をお届け。TOKEN2049期間中に実施され、2ヶ月で5000万ユーザーを突破したMini Dappの成長戦略や開発支援プログラム「Kaia Wave」について共有。
17:11
イーサリアム次期アップデート「フサカ」、コード改良機能を見送りへ
ペクトラに次ぐイーサリアムの大型アップグレード「フサカ」からEOF導入が見送られることが決定した。Tim Beiko氏はスケジュールリスクとコミュニティ合意の課題を理由に挙げた。
13:01
テザー発行のゴールド担保型ステーブルコインXAUT、監査済み証明書を発行 時価総額1100億円超に
テザー社の金担保型ステーブルコインXAUTが約7.7トンの金に裏付けられ、時価総額1100億円に到達した。テザー社は金価格高騰の背景としてBRICS中銀による蓄積を挙げた。
12:45
需要高まる仮想通貨SUI(スイ)、DEX週次取引量が5400億円突破 トークンアンロック予定も
仮想通貨SUI(スイ)のDEXにおける週次取引量が過去最高の5400億円に到達した。グレースケールの投資信託など様々な好材料が価格上昇を後押ししている。
10:45
最大200兆ドル規模になる可能性、セイラー氏のBTC財務戦略が『ハイパービットコイン化』の先駆けに=アダム・バック氏見解
Blockstream創設者アダム・バック氏がストラテジー社などのビットコイン財務戦略がビットコイン主流化の先駆けになると意見した。一方で企業による寡占リスクを指摘する声もある。
10:12
米国初の事例か、アリゾナのビットコイン準備金法案が知事の署名待ち
アリゾナ州議会がビットコイン準備金に関する2法案を可決し、州財務官に資金の最大10%をデジタル資産に投資する権限を付与。知事の署名が焦点となる中、米国州政府による仮想通貨公式保有の前例となる可能性が注目されている。
04/28 月曜日
18:48
NERO Chain、Web3と日本のサムライ文化を融合した「NERO Samurai NFTコレクション」発表
NERO Chainが「NERO Samurai NFTコレクション」を発表した。サムライ文化と最先端Web3技術を融合し、5,000点のNFTを展開。CoinPost限定キャンペーンも開催中。
18:00
魅力的な報酬体系、コンテンツクリエイター支援プラットフォーム「Quaily」の強みを徹底解説
高度なAI(人工知能)を活用した豊富な機能で、クリエイターの生産性を向上させるQuaily。購読者5,000人で年間240万円もの収益期待値を見込める一方、利用料金は収益の10%とチャンネル取引手数料のみという料金体系で、持続可能なクリエイター活動をサポートする。
14:00
ステーブルコインの未来はオムニチェーン アジアの金融革命を加速させる相互運用性の必然|Four Pillars
ステーブルコインの総供給量は2025年2月に2250億ドルに到達し、前年比63%の急成長を遂げる中、相互運用性が次なる進化の鍵となっている。LayerZeroのOFT標準を採用したTether、PayPal、Ondoなどの先進事例を参考に、アジア市場は単なる発行にとどまらない相互運用性戦略の構築が不可欠な段階に。
13:51
デロイト「トークン化不動産市場は10年後までに4兆ドル規模に急成長し得る」
デロイトの最新レポートによると、ブロックチェーン技術を活用したトークン化不動産市場は年平均27%で成長し、2035年には575兆円規模に達する見込みだ。私募ファンド、証券化ローン、不動産開発の3領域での展開事例を紹介している。
13:40
コインチェック、X不正ログインによりサービス全停止の緊急対応
暗号資産取引所コインチェックが公式Xアカウントへの不正アクセスを受け、フィッシング被害防止のため全サービスを一時停止。再開時期は未定で、顧客に不審URLのクリック回避を呼びかけている。
12:10
米ProShares、XRP先物ETF3種を上場へ レバレッジ型とインバース型を提供
米ProSharesが新たに仮想通貨XRPの先物ETF3銘柄を上場予定だ。2倍レバレッジ型、ショート型などを提供する。現物ETF承認への期待も高まる中、市場への影響が注目される。
11:50
ビットコイン93000ドル台で高止まり、チャイナマネーなど相場転換の主要因は?
週明けのビットコイン市場は9万3000ドル台で高値維持。世界の流動性増加、金と仮想通貨の相関性、米中貿易戦争に伴う中国マネーのシフトがアルトコイン弱気相場からの転換要因に。専門家は市場の「デジタルゴールド」としての性質に注目される。
04/27 日曜日
14:00
今週の主要仮想通貨材料まとめ、米CMEのXRP先物提供やSOLの企業購入事例など
前週比で振り返る仮想通貨市場の最新動向。ビットコインやイーサリアム、XRP、ソラナなど主要銘柄の騰落率や注目材料を一挙紹介。市場トレンドと関連ニュースを詳しく解説する。
11:30
ビットコイン10万ドルも視野、貿易摩擦懸念緩和が支援材料に|bitbankアナリスト寄稿
bitbankアナリスト長谷川氏によるビットコイン週次レポート。ドル安進行と米中関係改善期待を背景にビットコインは200日線を突破し三役好天を形成した。今後の重要経済指標と共に注目される節目の10万ドル到達の可能性を解説。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
重要指標
一覧
新着指標
一覧