ニアー(NEAR)とは
ニアー(NEAR)は、高速処理や安価な手数料、安全性、ユーザーフレンドリーな設計を特徴とした、dAppsなどの構築に利用できるプロトコル。イーサリアムの競合チェーンの一つで、レイヤー1ブロックチェーンとして機能している。
開発者とユーザーの利便性に重点を置いた機能を実装。名前付きアカウントやアカウント抽象化により、ユーザーは複雑な手続きなしに簡単に取引や操作ができる。
合意形成アルゴリズムに、PoS(プルーフオブステーク)を応用したTPoS(Thresholded Proof of Stake)を独自で実装。スケーラビリティを実現するために、複数のネットワークを活用して並行処理を行うシャーディング技術を用いている。
さらに、NEARは、Aurora(オーロラ)やOctopus Network(オクトパスネットワーク)といったプロダクトを通じて、ブロックチェーン間の相互運用性をブリッジ技術で提供している。
ニアーは、元Microsoftソフトウェア開発者のAlexander Skidanov(アレクサンダー・スキダノフ)氏と、元Google ResearchエンジニアリングマネージャーのIlya Polosukhin(イリア・ポロスキン)氏によって、2018年に人工知能スタートアップ「NEAR.AI」として設立された。翌年にはブロックチェーン分野へと事業を拡大。2020年にはレイヤー1ブロックチェーンとしてメインネットを公開した。
価格
- 現在価格(2024年10月10日時点):4.65ドル(約695円)
- 年初来高値(2024年3月):9ドル(約1345円)
- 年初来騰落率(YTD):+69%
- 過去最高値(2022年1月):20.68ドル(約3090円)
価格予測
2024年6月:米国の暗号資産マーケットメーカーGSRが発表した主要仮想通貨の「ETF承認可能性スコア」において、イーサリアムがトップとなり、続いてソラナが2位にランクイン。NEAR、アバランチ(AVAX)、およびアプトス(APT)が上位5位に名を連ねた。この結果は、NEARの市場での評価と今後の成長への期待が反映されたものと言えるhttps://coinpost.jp/?p=563155)。
2024年5月:グレースケール、ビットコインレイヤー2など2銘柄の仮想通貨投資信託を提供開始 グレースケールはNEARのシャーディング技術の高いスケーラビリティと大規模アプリの採用が進むことを理由に、NEARの仮想通貨投資信託の提供を開始。また、トランザクション手数料の一部がバーンされ、供給量が調整されることからも、長期的な価格上昇が期待されている。
以下がニアー(NEAR)のチャートだ。2021年から2022年初頭にかけて急騰し約20ドルのピークに達したが、その後、市場全体の調整により大幅に下落し、2023年は低水準で推移していた。2024年に入ると技術的な進展により回復の兆しを見せ始めたが、依然として強いレジスタンスに直面している。今後の動向は、ニアーの技術アップデートと市場全体の影響に左右される見通しである。
出典:Tradingview
時価総額|関連銘柄
ニアー(NEAR)の時価総額は2024年10月時点で約52億ドル、「AI」セクターの中ではトップに位置する。同セクターで2位のTAOの時価総額は約46億ドル。以降は、ICP(約39億ドル)が追従する。
また、「スマートコントラクト」セクターの中では11位に位置する。同セクターでトップのETHの時価総額は約3240ドル、2位のBNBの時価総額は約840億ドル、3位のソラナ(SOL)は約740億ドル。
主な出来事
- 2024年7月:グレースケール、仮想通貨NEARやRNDRなどに投資する分散型AI関連ファンドを販売開始
- 2024年5月:グレースケール、ビットコインレイヤー2など2銘柄の仮想通貨投資信託を提供開始
- 2023年9月:仮想通貨ニア(NEAR)日本初上場、マーキュリーのCoinTradeが実施
- 2023年3月:NEAR、今後はブロックチェーンの共通基盤として稼働へ
- 2022年10月:NEARプロトコル、グーグルクラウドと提携
- 2022年6月:NEARプロトコル共同設立者、CoinPost独占インタビュー
- 2022年4月:ニア(NEAR)、初のステーブルコイン「USN」をローンチ
- 2022年4月:ビットコイン方向感を欠く展開、前週比36.8%高のNEARが時価総額19位に浮上
エコシステム支援組織
NEAR Foundation(ニアーファンデーション):Viking Educationの創設者であるErik Trautman(エリック・トロートマン)氏によって設立された。彼の共同設立者は、Googleでの3年間を含む10年以上の業界経験を持つIllia Polosukhin(イリア・ポロスキン)氏と、Microsoftで働いてmemSQLに入社し、エンジニアリングディレクターになったコンピュータ科学者のAlexander Skidanov(アレキサンダー・スキヴァノフ)氏である。
ニアープロトコルのチームは、いくつかの国際大学対抗プログラミングコンテスト(ICPC)の金メダリストと受賞者を含む経験豊富な開発者で構成されている。ネットワーク全体のエコシステムやガバナンスを監督している。
トークンアロケーション
NEAR Protocolは、2020年4月22日のメインネットローンチ時に、10億NEARトークンを作成し、個人や組織に継続的に配布した。すべてのジェネシストークンは60か月目の終わりまでにロックが解除される。
出典:NEAR
NEARのトークノミクスは以下のように10億トークンが割り当てられている:
- 17.2% – コミュニティ助成金
- 11.4% – 運営助成金
- 10% – 基金の資産
- 11.7% – 初期エコシステム
- 14% – コア貢献者
- 17.6% – バッカー
- 6.1% – 小規模バッカー
- 12% – コミュニティセール
出典:NEAR
また、毎年5%の追加供給がエポックリワード(ブロック報酬)のために発行され、ネットワークをサポートしている。
NEARトークンは以下の用途に使用される:
- 取引処理およびデータ保存の手数料
- ステーキングによるバリデータノードの運営
- ガバナンスを通じたリソースの配分
Total Value Locked(TVL)
Total Value Locked(TVL)は、DeFi(分散型金融)プラットフォームやプロトコルの価値を評価するための重要な指標の一つ。2024年10月時点、ニアーのTVLは、59億ドル。プロトコル別のTVLトップ3は以下の通り。
- Burrow(1億6000万ドル):分散型レンディングプロトコル。stNEAR、stETH、USDCなどの利息付き資産を供給し、これらを担保に他の資産を借りることができる。また、stNEARを担保として使用し、さらにニアーを借りることで、レバレッジをかけたステーキングポジションを作成できる。クロスチェーン対応。
- LiNEAR Protocol(1億3000万ドル):流動性ステーキングおよびリステーキングのプロトコル。「オムニチェーン(複数のブロックチェーン間でシームレスに資産やデータのやり取りができる技術やシステム)」に対応したステーキングとリステーキングの機能を提供し、複数のブロックチェーンでのシームレスな利回り獲得が可能。
- Meta Pool Near(1億1300万ドル):流動性ステーキングプロトコル。ユーザーはNEARトークンをステーキングして報酬を得ることができ、さらに、ステーキングした資産に対応する流動性トークン(stNEAR)を受け取ることで、資産をロックせずにDeFiなどの他のプロトコルで活用できる。
出資している主なVC
- 資金調達総額:約5億4,000万ドル。2017年から2022年にかけて、13ラウンドにわたり資金調達を実施。
- 大規模な投資ラウンド:2022年1月のプライベートトークンセール(1億5000万ドル)、2022年4月のTiger Globalの主導するラウンドでの追加調達(約3億5000万ドル)
- リードインベスター:Andreessen Horowitz (a16z)、Three Arrows Capital、Tiger Global、MetaStable Capitalなど
- フォロー投資家:Pantera Capital、Electric Capital、Dragonfly Capital、Alameda Research、FTX Ventures、Republic、Pantera Capitalなど
ニアー(NEAR)の将来性
2024年8月にNightshade 2.0がニアーメインネットでリリースされた。ステートレス検証(Stateless Validation)が導入されたことで、バリデーターがシャードの状態をローカルに保存する必要がなくなり、トランザクション処理が効率化された。
シャードの数も増加し、スケーラビリティとパフォーマンスが大幅に強化され、開発者やユーザーにとってより使いやすいネットワークが実現した。
また、懸念されていたバリデーターの中央集権化についても、今回のアップデートにより分散化が促されることが期待される。
2024年の今後のロードマップは以下の通り。
- 混雑制御とトランザクション優先度:ネットワーク混雑時にガス料金の上昇が全体に影響しないようにし、ユーザーが手数料を多く払えば優先処理が可能になる仕組みを導入予定。
- アカウント集約のサポート:複数チェーンのアカウントを1つのニアーアカウントで管理できるようにし、新たなAPIを使って非同期処理をサポート。
- zkWASMの開発:ポリゴン(MATIC)と共同開発中のzkWASMにより、WebAssemblyスマートコントラクトにゼロ知識証明を適用し、L2向けのEVM(イーサリアムの仮想マシン)とは別の実行環境を提供。
- データ可用性の向上:NEAR DA(データ可用性レイヤー)をさらに効率化し、KZGコミットメントを導入することで、データ可用性の証明を不要にし、イーサリアムとのリアルタイム接続を強化。
- イーサリアム(ETH)ウォレットサポート:MetaMask(メタマスク)などをネイティブにサポートし、イーサリアムユーザーがニアーを使いやすくする機能を追加予定。
- シャーディング技術の改良:同期シャーディングとゼロ知識証明を活用してスケーラビリティを強化し、動的にシャード数を調整できる技術の実現を目指す。
2025年初頭からは、負荷に基づいてネットワークがシャードの数を動的に調整する、動的リシャーディングを含む、スケーラビリティとシャーディングの次のフェーズの計画が開始される。
期待される今後の動向
- 技術面の進展:ニアーはNightshade2.0の導入により、シャーディングの性能を大幅に向上させている。これにより、ネットワークのスケーラビリティとトランザクション処理能力が向上し、より多くのバリデーターが参加できる環境が整った。また、zkWASMの開発は、WebAssemblyベースのスマートコントラクトにゼロ知識証明を適用し、さらなるセキュリティとパフォーマンスを提供することを目指している。
- 競争力の強化:ニアーは、イーサリアムやソラナ(SOL)、ポルカドット(DOT)といった他のブロックチェーンと競合しているが、シャーディングを活用した高い処理速度と低レイテンシーを武器にしている。また、開発者にとって使いやすいプラットフォームであり、DeFiやNFT、ゲームなどのdApps(分散型アプリケーション)の成長が期待されている。
投資リスク、懸念材料
- 規制リスク: 暗号通貨全般に共通するリスクとして、規制の不透明性が挙げられる。特に米国や他の主要市場での規制がどのように進むかによって、ニアーの市場価値や普及に影響を与える可能性がある。
- 技術的な脆弱性: 他のブロックチェーンプロジェクト同様、ニアーも技術的な課題を抱えており、特にスマートコントラクトや相互運用性の強化に取り組んでいる。今後のアップデートが成功しない場合、技術的な脆弱性が投資リスクとなる可能性がある。
- 価格変動の大きさ: ニアーの価格は2024年にかけて大きなボラティリティを示している。短期間で価格が上下する傾向があり、短期的な投資においてはリスクが高いことが指摘されている。
- 競争の激化:ニアーは他の主要なブロックチェーン(イーサリアム、ソラナ、ポルカドットなど)と競争しているが、これらのプロジェクトもスケーラビリティや使いやすさを向上させるアップデートを進めており、ニアーが独自の地位を維持するのは容易ではない。特に、ユーザーベースの拡大やDeFi、NFT、ゲーム分野での成功が鍵となる。