CoinPost独占インタビュー
2018年の夏、米サンフランシスコにあるフレキシブルオフィス「WeWork」でNEAR Protocol(以下、NEAR)のプロジェクトが発足しました。
プロジェクト開始時のメンバーは3名で、国際送金の問題点を解決するために、どのようにブロックチェーン技術が活用できるかを考えるところから始まったと、共同創設者のIllia Polosukhin氏は説明しています。
その後、NEARは2020年4月にメインネットをローンチ。スマートコントラクト機能を備えたブロックチェーンとして、「暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)のライバル」の1つと呼ばれるまでに発展しました。
今回CoinPostは、NEARの共同創設者であるIllia Polosukhin氏にインタビューを実施。NEARプロトコルの開発状況や日本の印象について見解を伺いました。
自己紹介
私はNEARの共同創設者で、最初はプロトコルの設計や構築を担当していました。この1年ぐらいはNEARの普及活動を行っており、NEARのエコシステムにアプリやプラットフォームを構築する人々のサポートをしています。
現在は、他にも多くのことを担当しており、エコシステムの人々が成功できるように協力しています。
開発状況について
ーシャーティングシステム「Nightshade」の開発遅延要因は
我々は「シンプルさ」、「セキュリティ」、「スケーラビリティ(拡張性)」に特化しており、基本構造としてこの3つを同時に提供したいと考えています。
シンプルさについては、現在多くの時間を費やしており、アカウント作成方法などもそうですが、NEARを利用する開発者にとっても、使いやすいことが重要です。最近、非常に多くの開発者が使うプログラミング言語「JavaScript」でスマートコントラクトを書けるようにしました。開発者が新しいプログラミング言語を学ばなくてもいいようにしています。
セキュリティについては、プラットフォームとして安定すること、またユーザーが資産を失ったり、詐欺や攻撃の被害に遭ったりしないようにしなくてはなりません。
スケーラビリティについては、仮に何十億というユーザーが利用しても滞りなく処理をこなせるのか、そのためには本当にシャーディングを導入しなくてはいけないのか、また、それをどのようにシンプルに実現するのかを考慮しています。
この3点を同時に実現することは非常に難しく、2021年11月にフェーズ0の「Simple Nightshade」ローンチ後も構築は進んでいるのですが、現在はまだテストを重ねている状況です。
また、開発チームの中心メンバーがウクライナとロシアにいたことも遅延につながりました。戦争が始まった後、国外避難を余儀なくされました。今年9月には、Nightshadeの次の段階をローンチできるように、バリデータを集めてテストをしています。
ーウクライナ情勢が与えた影響は
私は戦争が始まった時、米国にいました。家族はウクライナから引越していますが、非常に衝撃的な出来事でした。
まずは安全確保に努め、同時にファンドを立ち上げたりして、仮想通貨の起業家のグループとも協力しました。またウクライナ政府とも協力し合いました。
ー開発拠点は他にもあるか
米国のニューヨークやボストン、デンバーなど北米に開発者が集まっています。他にもメキシコやアルゼンチンといったラテンアメリカの地域にも開発者はいますし、ウクライナの開発者の大半はポルトガルのリスボンに移っています。
他にも、ヨーロッパのバルカン半島にも開発者がいたり、ケニアでも新しいことを始めましたし、インドも大きな拠点になっています。中国や、ベトナムやインドネシアなどの東南アジアにも開発者がいます。
NEARの特徴
ーイーサリアムなど他のL1チェーンとの違いは
NEARはシンプルさ、セキュリティ、スケーラビリティの3つを最初から重視していることが大きな違いです。
レイヤー1ブロックチェーンの多くは、この3点ではなく、希望のコンセンサスの仕組みを構築するところから開発が始められています。また、我々は問題がない状態でソリューションを開発するのではなく、問題に対してソリューションを提供するというアプローチをとっていることも特徴です。
日本の印象
ー日本コミュニティの印象は
日本には2019年、ミートアップが開催された時に行きました。バックグランドが多様で、コミュニティはブロックチェーンに対する関心が高かったことを覚えています。
ただ、スタートアップ的な起業家精神を持った方々は他国よりも少ない印象でした。数名の開発者の方ともお話しましたが、みんな一般企業に就職していて、プロジェクト開発のため、退職してでも起業するという考えをお持ちの方はいませんでした。
ミートアップの開催場所にもスタートアップ企業が数社いましたが、シリコンバレーやベルリンなどと比べると活気がないように感じました。ただ、それはあくまで私の印象ですし、現在は変わっていることを願います。
ー日本の開発者へ伝えたいことは
ぜひ、日本の開発者の方もNEARのエコシステムに参加して欲しいです。
「これを作りたい」と率先して名乗り出る開発者が現れて欲しいですし、そうした場合は我々も資金提供やツールなどを提供する、サポート体制を構築したいと考えております。
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