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PBR(株価純資産倍率)を株式投資に活用する方法・注意点を網羅して解説

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

株式投資に限らず、キャピタルゲインを狙った投資の基本は「安く買って、高く売る」事です。一見単純に思えますが、損失を最小化し、確実に利益を上げるには正しい知識が必要不可欠と言えます。

そして、将来的に株価上昇が期待できる銘柄を探すために活用できるのが「株価指標」です。株価指標は複数存在しますが、ある時点における株価の適正性を把握するために適しているのが「PBR(株価純資産倍率)」や「PER(株価収益率)」といった指標。

本記事では、特にPBRについて詳しく解説しましょう。PBRの概要や結果の数値から判断できること、株式投資への活用方法、よく比較される指標のPERとの違いをご紹介します。PBRを判断軸に株式投資をする際の注意点も解説しますので、併せて参考にしてください。

目次
  1. PBRは株価が割安か割高かを判断できる指標
  2. PBRの株式投資への活用方法
  3. PBRに影響を及ぼす要素
  4. PBRを判断軸に株式投資する際の注意点
  5. PBRを株式投資の判断軸に

1.PBRは株価が割安か割高かを判断できる指標

初めに、PBRの基本について解説しましょう。

1-1. PBRの基本と計算式

PBRは「Price Book-value Ratio」の略語で、日本語では「株価純資産倍率」の意味。株価が割安か割高かを判断する指標として、古くから活用されています。

PBRは「株価÷BPS(1株あたりの純資産)」により算出されます。例えば、ある企業の株価が5,000円でBPSが2,500円なら、PBRは「2倍」です。

なお、計算に使用される「純資産」とは、企業が計算時点で保有する総資産(現金、売掛金、固定資産など)から、将来的に返済義務のある負債(銀行からの借入金など)を引いた金額を指す概念です。

純資産がプラスであれば企業の財務状況が健全な状態と推測できる一方、純資産がマイナスであれば財務に問題を抱えている可能性があると判断できます。

続いては、PBRの数値から判断できる情報について詳しく見ていきましょう。

1-1.PBRの数値が表すもの

一般的に、PBRの数値を見るうえでの基準は「1倍」です。ある株銘柄のPBRが「1倍未満」であれば割安、「1倍以上」であれば割高と考えられます。

ただし後述しますが、PBRが1倍未満であれば必ずしも割安とは限りません。他の指標や株価上昇が見込まれる要素があるかを見出すことも大事です。また、ある銘柄のPBRを算出し、その競合他社のPBRと比較する、同一銘柄の過去のPBR・予想PBRを見比べるなど、多角的な判断で、その銘柄が割安かどうかを多角的に判断することが大切です。

1-2.PER(株価収益率)とPBRの違い

PBRとよく比較される株価指標にPER(株価収益率)があります。どちらも株価が割安か割高かを判断できる指標ですが、いくつかの点で違いがあります。

まず挙げられるのが、算出方法の違いです。PBRは企業の純資産を基に算出される一方、PERは純利益を基に「株価÷EPS(1株当たりの純利益)」という計算式で算出されます。

例えば、株価が3,000円、EPSが300円の場合、PERは10倍です。業種にも異なりますが、一般的にPERが10〜15倍以下の銘柄は割安とされます。

また、その他にも短期投資・長期投資のどちらの判断指標とするのが適切かという点でも違います。

PBRは短期での変動が少ない純資産を基準にして株価が割安かを表していますので、短期投資よりも長期投資で効果を発揮する指標と言えるでしょう。

一方のPERは、短期で大きく変動しうる純利益を基にしているため、短期投資における割安・割高を判断する指標として活用されることが多いです。

2.PBRの株式投資への活用方法

ここまでPBRの値から分かること、そしてよく比較される株価指標のPERとの違いを見てきました。

続いては、実際にPBRを株式投資にどのように活用するかを見ていきましょう。PBRは株式投資において「バリュー投資の判断材料とする」「長期投資の指標とする」という活用方法がありますので、それぞれ詳しく解説します。

2-1.「バリュー投資」の判断材料とする

バリュー投資とは、本来の価値よりも低く見積もられている割安な銘柄(バリュー株)へ投資する手法です。

一方、バリュー投資と対になる戦略として「グロース投資」と呼ばれる手法があります。グロース投資では将来的な成長が見込まれる企業に投資するため、リスクは高いものの大きなリターンを狙えることが特徴です。

株価が割安になる理由は様々ですが、「成長期待が乏しい」「注目度が低い」「株式発行数が多い」などの理由が一般的といえます。バリュー株の利点は株価の急落リスクが低く短期間で大きな損失を出さない安定した保有が可能なこと、また配当利回りが高い傾向にあるためインカムゲイン狙いの投資にも適している点でしょう。

2023年6月時点における国内バリュー株の代用的な例としては、国内薬品企業としてトップクラスの売上高を誇る「武田薬品工業」や、海運大手の「川崎汽船」、国内五大商社の一つ「丸紅」などが挙げられます。

このバリュー株を探す際に、PBRが効果を発揮します。ある銘柄のPBRを算出し、関連銘柄と比較することで、割安な銘柄を発見する重要な指標として活用できます。

具体的には、PBRが1倍未満ならバリュー投資に適する銘柄だとされることが多いです。ただし、後述するように業界によってPBRの平均値が異なる点には注意しましょう。

2-2.不況時でも指標として活用できる

PBRを算出する際に用いられる「純資産」は、資産から負債を除いたもので、株主からの出資や、過去から蓄積した会社の利益です。

これらはPERの算出に使われる純利益のように短期での変動がないため、会社の利益が減少する不況時などでも数値が大きく振れません。そのため市況が芳しくない時期でも、PBRを指標にすれば株価の割安・割高をある程度正確に判断可能です。

3.PBRに影響を及ぼす要素

PBRに影響を及ぼすものは、株価とBPS(1株当たり純資産)です。それぞれの変化がPBRにどのように反映されるのか詳しく解説します。

3-1.株価

PBRは株価を1株当たりの純資産で割ったものなので、当然株価の影響を受けます。株価の上昇はPBRの上昇、下落はPBRの下落を招きます。

なお、株価は主に需給のバランスで決まるものです。ある銘柄を購入したい人が多ければ株価は上昇し、少なければ株価は低下します。需給バランスが変動するのは、以下のようなケースです。

  • 新規事業・商品の開発
  • 景気・金利・為替の変動
  • 国際情勢の変化や自然災害

3-2.BPS(1株当たり純資産)

PBRを求める際、分母となる指標が「BPS(1株当たり純資産)」です。BPSが増加すればPBRの数値は下がり、反対に減少すればPBRは上がります。また、純資産は増資や利益増加に伴って増加しますが、純資産の増加はBPSを増加させ、結果としてPBRの減少を招きます。

なお、BPSは「純資産÷発行済み株式数」という計算式により算出されます。

発行済み株式数とは、会社が定款で定めた授権株式のうち、すでに発行した株式の総数です。例えば自社株買い・株式併合により発行済株式数が減少すれば、BPSが増える結果、PBRは減少します。

4.PBRを判断軸に株式投資する際の注意点

以上で解説したように、PBRは株式投資において株価が割安かどうかを知るための重要な指標です。しかし、PBRを株式投資の判断材料とする際は、以下の4点に注意しましょう。

  1. PBRが低くても今後株価が上昇するとは限らない
  2. ネガティブな理由でPBRが低いことがある
  3. 資産の内容までは把握できない
  4. 同業界の企業同士で比較する

それぞれ詳しく見ていきます。

4-1.PBRが低くても今後株価が上昇するとは限らない

PBRが低いから割安と判断し、すぐに購入を決断するのは推奨できません。なぜなら、今割安でも今後株価が上昇するとは限らないためです。ちなみに、割安な状態がいつまでも続くことは「バリュートラップ」と呼ばれています。

バリュートラップにかからないポイントとして、「カタリスト(相場や株価を動かすきっかけになる出来事)」の有無を確認することが重要です。カタリストの例としては、好調業績の公開や自社株買い、M&A、新規事業・商品開発などが挙げられます。

PBRが低く割安な株を発見したら、企業公式サイトや決算情報を確認し、カタリストが訪れるかどうかを調べ上げ、株価上昇が期待できる場合に購入を検討するとよいでしょう

4-2.ネガティブな理由でPBRが低いことがある

また、PBRが低いことは必ずしも良いわけではなく、ネガティブな理由でPBRが下がっている銘柄もあります。そのため、PBRが低い銘柄については、なぜ割安になっているのかを詳しく考察することが大切です。

例えば、赤字・業績悪化が原因でPBRが低いケースでは、投資するか慎重に判断しなければなりません。これらのケースでは、事業縮小により今後の発展が期待できないと投資家から見放されており、将来的にも株価下落が回復に向かわない可能性があります。

4-3.資産の内容までは把握できない

PBRは純資産に対して株価が割安かどうかを表す指標であることはご紹介しましたが、この資産の内容までは加味されていない点には留意しましょう。

一口に会社の資産と言っても、現金や売掛金、在庫、建物、土地など内容は様々です。中には、ビットコイン(BTC)を保有する米MicroStrategy社のようにボラティリティが大きい資産が資産の多くを占める企業も存在します。

資産の構成によっては、価格変動がある金融商品や、工場や機械など時間とともに評価額が減少する資産が多いが故にPBRが下がるケースもあるので注意が必要です。必ず財務諸表を確認し、資産構成を把握しておきましょう。

4-4.同業界の企業同士で比較する

前述のとおり、PBRは「1倍未満」なら割安株と認識されることが一般的です。しかし、この数字はあくまでも目安であり、業種によって平均値が異なることを知っておく必要があります。以下の表のように、業種によってPBRの平均値は異なります。

種別 単純PBR(2023年5月時点)
水産・農林業 1.0
建設業 0.9
食料品 1.3
海運業 0.8
電気機器 1.8
輸送用機器 0.8
精密機器 1.6
銀行業 0.3

出典:その他統計資料 | 日本取引所グループ

PBRの平均値は食品業や電気機器で高く、銀行業では低いことが分かります。

PBRを割安株の指標とする際は、銘柄が属する業界の平均値や同じ業界の競合他社と比較することで、より正確な判断が可能となるのです。

5.PBRを株式投資の判断軸に

株式投資において「安く買って、高く売る」を実行するのは容易ではありません。利益を出すため、そして何より損しないためにも、PBRを始めとした株価指標を使いこなす必要があります。

本記事の内容を参考に、バリュー投資の判断材料や不況時の指標として、PBRを株式投資に活用してみてください。

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