- ミームコイン「LAPTOP」急落の裏側
- 米国規制と日本市場への期待
ジョー・バイデン前米大統領の次男であるハンター・バイデン氏は、2026年9月、ミームコイン「LAPTOP」をローンチした。トークン名は、2020年の大統領選で争点となったノートパソコンにちなむ。
なぜ暗号資産に関わり、トークン発行にどのような思いを込めたのか。そして、過去のトークン価格急落の裏側では何が起きていたのか。来日したバイデン氏が、CoinPostの単独取材に応じた。
伝統的な金融システムへの疑問
現在の金融システムを本当に理解している人で、過去30年の制度的な失敗を見たうえで、なおそれを深く信頼している人はいないと思います。2008年の金融危機はその一例です。
ブロックチェーンは、これまでとは違う道を示しています。この技術が登場するまで不可能だった形で、金融商品を民主化できるのです。
半ば冗談で「法定通貨はまやかしだ」と言ったことがあります。挑発的な表現なのはわかっていますが、本質的には正しいと思っています。政府が自由に通貨を刷れるなら、それはもはや本来の意味でのお金ではなく、まったく別のものになってしまう。
1913年以降、ドルは価値の97%を失いました。インフレは制度に組み込まれ、その代償を払うのは銀行や金融機関ではなく私たち全員です。ブロックチェーンと暗号資産は、少なくともこうした現行制度の失敗に対する解決策の一部になると考えています。
ブロックチェーンを基盤とする暗号資産は、未来そのものだと思っています。グローバル経済の中で、取引相手が誰かを知らなくても、ブロックチェーンによって取引の正当性は確実に保証される。将来の金融を支えられるだけの規模を持つ技術は、これしかありません。
難民支援という原体験
はい。ブロックチェーンに裏付けられたデジタルマネーに関心を持ったのは、WFP USAの理事長を務めていたときです。WFPは世界最大の人道支援機関で、日本は拠出額が世界で2番目に大きい国でもあります。
理事長として取り組んだのが、難民向けの試験プログラムです。シリア内戦で難民がレバノンに流入した際、WFPが食料などを大量に届けたことで、国境沿いの地元経済にデフレ効果が生じ、大きな打撃を与えてしまいました。
そこで、食料を無償で配る代わりに、難民一人ひとりにスマートフォンで使えるデジタルウォレットを用意しました。難民は何も持っていなくても、スマートフォンは持っています。ウォレットで地元経済の中で取引できれば地域が潤い、受け入れ国にとっても難民を受け入れやすくなります。
これをきっかけに『The Internet of Money』を読み、暗号資産の中核としてのビットコインに強い確信を持つようになりました。
この考えは難民にとどまりません。米国では何百万人もの出稼ぎ労働者が、主に中南米の母国へ送金する際、高い場合は12〜15%もの手数料を取られています。しかも多くは銀行口座を持っていません。低い手数料でのデジタル送金を信頼できる形で実現できるのが、ブロックチェーンです。
はい、その理由で信じています。
もう一つ言えるのは、暗号資産やビットコイン、トークン化に最も強く反対しているのが、既存の金融機関だということです。彼らはお金へのアクセスだけでなく、お金の流れの「最初の入り口と出口」を独占してきました。
政府がお金を刷っても、インフレの影響が表れるのはそのお金が消費者の手に渡ってからです。最初にお金を手にする金融機関は、それを私たちにはるかに有利な条件で貸し出せる。それが可能なのは、彼らが莫大な資金ゆえに強大な力を持っているからにほかなりません。
誰か特定の人を名指しするつもりはありませんが、世界の大手銀行のCEOたちは、自分たちに有利な今の仕組みを維持するために足並みをそろえています。彼らがその信頼に値することをしてきたとは思いません。
金融システムで大きな危機が起きるたびに、代償を払うのは金融機関ではなく、いつも市民です。2008年の金融危機はその典型で、数兆ドルが失われ、インフレが続き、一つの世代の資産がまるごと消えました。それでも、破綻するように作られた仕組みを作った側は誰も責任を取っていない。代償を払ったのは、米国人の一世代全体でした。
「LAPTOP」の設計と透明性
透明性です。私たちが作ったものは100%透明です。すべてのウォレットと、その動きのすべてを確認できます。公式サイトでは、EUのMiCA(暗号資産市場規則)に基づくホワイトペーパーを公開しています。ミームトークンが出したものとしては、最も透明性の高い開示資料の一つだと思います。
チームのウォレットには一度も手を付けておらず、ベスティング期間が始まるまで動かさないことも確認できます。供給量の20%は、コミュニティ作りのために見返りを求めず無償で配布しました。30%は、これまでにない予測市場に充てています。予測が当たればその分のトークンをバーンし、外れればその分を慈善団体に寄付します。
ここ数年で、これまで政治の外側にいた多くの人が政治に関心を持つようになりました。そうした人たちに語りかけ、コミュニティを作りたかったのです。
ミームコインの中には、供給量の大部分が発行者側に配分される設計のものもあります。私たちは、コミュニティへの配布や慈善の仕組みを組み込み、すべてを公開することを選びました。
ミームコインは1,000万種類以上あり、詐欺師ばかりのニッチな市場というわけではありません。モノのトークン化、注目のトークン化、あらゆるもののトークン化は未来であり、確実にやってくると思います。
トークン化は道具です。ハンマーと同じで、何かを壊すためにも、何かを作るためにも使える。私は暗号資産を心から信じていて、それが未来だと思っています。仕組みの外側にいた人たちが互いにつながる手段になる。正しいやり方で実現できると信じていますし、それがLAPTOPの当初からの、そして今も変わらない意図です。
もう一つの理由もあります。私は長年、「ハンター・バイデンのノートパソコン」という言葉とともに語られてきました。
LAPTOPのローンチは、その物語を自分の手に取り戻すことでもあります。違うやり方ができると示し、自分に責任がある部分は認めたうえで、真実が大切だと訴える。そのことを世界中の新しい人々に伝えたかったのです。
予測市場という仕組み
割合は、それぞれの出来事が起こる確率の計算に基づいています。その部分は、トークノミクスの設計に詳しい人たちに任せました。
対象の選び方は、大きく分けて2種類です。1つは、今後2年半で米国の方向性を大きく左右する政治的な出来事です。たとえば、11月の中間選挙で民主党が上下両院を奪還するかどうか。議会のチェック機能が働くことは大切だと考えています。もう1つは、フィラデルフィア・イーグルスの開幕戦勝利や、業界の著名人によるトークンへの言及といった、楽しめるものです。
予測の仕組みを入れたのは、ミームトークンの文化がすっかり停滞していると感じたからです。イノベーションがなく、誰も違うことをしてこなかった。2年半にわたる予測を用意すれば、人々が話題にし続け、見続ける理由が生まれます。市場で最も重要なのはそこです。
ローンチ直後の価格急落
当初は中央集権型取引所でのローンチを予定していました。中央集権型取引所でローンチする場合は36〜48時間前に告知する必要がありますが、分散型取引所だけなら、スナイパーに事前情報を与えないため普通はしないことです。
48時間前にXで告知すると、ボットや荒らしとみられるアカウントから激しい攻撃を受けました。しかし、IPOのように告知から上場までは沈黙期間に入るため、反論もトークノミクスの説明もできない。結果として、分散型取引所のみでのローンチになりました。
流動性が極めて薄い状態でのローンチとなり、6ドル分の買いで価格が5%上がる状態になりました。FDV(完全希薄化後時価総額:発行上限の全トークンが流通した場合の時価総額)5,000万ドルでローンチしたトークンが、2分足らずでFDV3,170億ドルに達しました。もちろん虚構です。どの価格にも実際の買い手や売り手はいませんでした。その後、資金が引き揚げられ、30分足らずで価格は暴落しました。
取材時点では1枚8セント前後、FDVで8,000万ドルほどです。5,000万ドルでローンチし、緩やかに成長していく。最初の1時間の「エベレスト」を除けば、チャートは望んでいた形になると思っています。
ベスティングと今後の運営
すべては取引量と価格次第です。ベスティングは約5〜6カ月後から2年かけてリニアに行いますが、市場が耐えられる場合に限り、3人のチーム全員がそろって実行します。ウォレットの取引はすべて公開されます。
持続可能な形で成長を続けたいと考えています。トークンの最低5%は、私が深く関心を持つ依存症からの回復支援に寄付されます。外れた予測の分を含めれば、最大15%近くになる可能性があります。これほど短期間に、それだけの資金を大切な活動のために集める方法を、私はほかに知りません。
中間選挙と規制の行方
今後2年間、米国では暗号資産、特にトークン化の規制をめぐって大きな混乱が続くと思います。
私と関わりのある民主党の多くの人は(私自身は党の指導部とは無関係ですが)、暗号資産に対して条件反射的に反応しています。暗号資産のイメージがトランプ大統領によって形づくられてしまっているため、「彼が賛成だから反対」となり、中身を理解しないまま反対している。
トランプ大統領自身が業界に深く関わったことで、議論がブロックチェーンの基本原則や暗号資産の未来ではなく、純粋な政治の対立軸になってしまいました。業界の健全な発展を願う人々にとって、これが最も大きな損失だと考えています。
トークンには本質的な価値はなく、ポケモンカードのようなコレクティブルです。だからこそ、この市場には強力な規制とその執行が必要です。
公職者と利益相反
長期的な未来には確信を持っています。カリフォルニア州の法律については、LAPTOPへの影響はありません。私の家族には公職に就いている人も、選挙に出る人もいません。父は引退して2年近くになりますし、私も完全な一私人です。当面、大統領選に出るつもりはありません。
現職の公職者やその家族がこうしたルールの対象になるのは、自然なことだと思います。
ミームトークンにも暗号資産にも、本質的に悪いところはありません。大切なのは、業界を監督する立場にある人が、その業界から利益を得る構図を避けることです。
たとえば、公職者の家族が大手銀行の大株主になれば、銀行業界を監督するさまざまな規制当局との間で、利益相反が問題になるはずです。暗号資産にも同じ考え方が当てはまると思います。
私たちのトークンは、透明性を重視し、新しい仕組みを取り入れ、見返りを求めずに多くを配布しています。同時に、私が持つ10%の保有分が自分にとって大きな意味を持つことも正直に認めています。私は資本主義者で、価値あるものを作り、人が集まれば、作った人が恩恵を受けるべきだと信じています。ただし、それは誰に対しても透明な形であるべきです。そうすれば、誰もがルールを理解し、安心して参加できる仕組みになります。
民主党への提言
あります。まず、業界で最も責任ある人たちと対話を始めることです。たとえばコインベースのブライアン・アームストロング氏は、業界で最も責任ある人物の一人だと思います。正しいことをしようとし、誰もが従うべきルールがあるという確信のもとで、より多くの人が参加できるものを作ろうとしています。
それ以上に大切なのは、有権者の声を聞くことです。米国だけでも5,000万人以上が何らかの形で暗号資産に関わっています。ウォレットを持っていたり、ミームトークンを取引していたり。若い世代は、56歳の私の世代よりはるかに深く理解しています。
業界のトップや利害関係者だけでなく、少額決済をしたい人、コミュニティを作りたい人、金融市場や金融商品を民主化したい人など、現実の人々の声を聞くべきです。
そして、最も影響を受ける可能性のある人々の声にも耳を傾けるべきです。ブロックチェーンの恩恵を最も受けるのは、これまで仕組みから締め出されてきた人々です。銀行とのつながりがあり、口座を開けて保険にも入れる、恵まれた人だけが参加できる仕組みの外にいる人々。世界全体で見れば、それこそ民主党が大切にしているはずの人々であり、党はそのことをもっと理解する必要があります。
議員にとっては、世界中のあらゆる問題が対応すべき対象になるので、ここまで新しい技術を理解するのが難しいことは私も理解しています。だからこそ、業界を規制する立場にある人やその家族は、その業界でのビジネスと距離を置くべきだと考えています。
来日の目的と日本市場
こうして皆さんと話すためです。本当にそう思っています。LAPTOPの長期的な将来にコミットしていると示すことが、何より大切だと考えています。
ほかのセレブトークンには、本人が「自分は関係ない」と言うものもあります。私はそうではありません。自分で決めたことで、自分に責任がある。だからこそ13時間かけて日本に飛び、ここに来なければ届かない人々と向き合おうとしているのです。
日本やアジアでの展開も、ぜひ実現したいですね。ビジネスの面だけでなく、日本の文化や歴史にとても惹かれています。
東京は世界有数の人口密集都市でありながら、誰もが安心して過ごせて、驚くほど清潔です。安全や子どもの教育が何より重要になるAIの時代に、日本はそれを際立って正しく実現しているように見えます。何世代にもわたって、どのような選択を重ねてきたのか、日本で学びたいと思っています。
世界がかつてないほどつながりながら、同時に分断が進んでいるように見える今、米国人は学ぶ姿勢を持つことが大切です。とりわけ最も重要な同盟国に対しては、開かれた心で向き合うべきだと思います。
はい、思います。LAPTOPのトークノミクスや透明性、すべてを包み隠さず公開してきたやり方を見てもらえればわかるはずです。日本の規制環境を完全に理解しているふりはしませんが、厳しいことは知っています。
そして、その厳しさこそ業界に必要なものだと思います。誰もが従い、誰もが理解したうえで参加できるルールがあれば、不当に利益を得ようとする人は入り込みにくくなります。日本はすでに取り組みを進めていて、市場構造法案が成立していない米国よりはるかに先を行っています。
LAPTOPで私たちが作ったものを、ぜひ見てください。そして、この物語について考えてみてほしい。4年間にわたって純粋に政治的な動機から向けられた望まない注目を、自分自身のものとして取り戻し、反転させて、コミュニティを作る。暗号資産であれ何であれ、経済に参加する機会がほとんどなかった人々が恩恵を受けられるものを作る。それがこのトークンの意味です。
もう一つ、世界に理解してほしいことがあります。米国の仕組み、そして米国の強さを根本で支えているものは、一人の大統領、一人の人間よりも強いと私は信じています。
米国は完璧には程遠い国だと思います。総じて世界に良い影響を与えてきたと思う一方で、強圧的に振る舞ってきたこともあります。それでも、そうした強圧的な姿勢が最終的に受け入れられるとは思っていません。
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