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Progmat・Boostry・Securitize代表が語る「デジタル証券」市場の現在地と次の一手

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

「取引の高度化」が次の焦点に

一般社団法人日本STO協会は20日、「セキュリティトークン制度開始5周年記念イベント」を開催した。

パネルディスカッション「セキュリティトークン業界全体の未来像」では、セキュリティトークン(ST)の発行・流通基盤を手がけるProgmat、Boostry、Securitize Japanの3社から代表者が登壇し、市場の現在地と今後の方向性を議論した。

日本STO協会とは

2019年10月に証券会社等を構成員として設立。2020年5月に金融庁から金融商品取引法に基づく認定を受けた認定金融商品取引業協会で、セキュリティトークン取引の公正化や投資者保護に向けた自主規制業務、市場の制度整備、関連技術の調査研究などを行っている。

セッションの登壇者は以下の通り。

  • 神本侑季(N.Avenue 代表取締役社長)【コーディネーター】
  • 齊藤達哉(Progmat 代表取締役 Founder and CEO)
  • 平井数磨(Boostry 代表取締役CEO)
  • 小林英至(Securitize Japan カントリーヘッド)

技術は5%、残り95%は「法務×税務×実装力」

各社の強みの議論で、齊藤氏は「ブロックチェーンで価値を発揮できている部分は全体の5%程度。残りの95%は法務と税務と実装力の掛け算だ」と述べた。不動産ST市場を牽引してきた受益証券発行信託スキームも、法務面で第三者対抗要件を解決でき、税務面で分離課税が適用できるという商品設計の強さがあったからこそ成立した。

Progmatの強みは、こうした法務・税務面の設計から技術実装までを一貫して担える点にあるという。齊藤氏が事務局を務めるデジタルアセット共創コンソーシアム(DCC)には約350社が参加し、MMF(投資信託)や株式のトークン化に向けた法務・税務の論点整理を横断的に進めている。

平井氏はBoostryの強みとして、ブロックチェーンから業務アプリケーションまでフルスタックで自社開発できる体制を挙げた。既存の金融機関がSTを取り扱うのは「そんなに簡単ではない」とし、証券会社ごとに異なる勘定系システムへの対応や、税処理・会計処理の吸収にリソースの8割を費やしていると明かした。

小林氏はSecuritizeについて、社債・信託・不動産・映画など幅広い商品の実装済み実績を持ち、すぐに利用できる体制が整っている点を挙げた。こうした「使いやすさ」がリピートビジネスにつながっているという。

実務面の課題にも話が及んだ。齊藤氏は、証券会社の勘定系の上にBoostryの業務パッケージとProgmatのプラットフォームが重なるため、対応パターンが多岐にわたると説明。ただし「5年前と比べると実務的課題は小さくなっている」とも述べ、信託スキームのST発行は「型」が固まりつつあり、新規参入のハードルは下がってきているとの認識を示した。

日本のST現在地

ST市場の理想と現実のギャップに議論が移ると、齊藤氏が自身の分類として次のような整理を示した。日本で行われているのは既存の有価証券をトークン基盤で発行・移転する「トークナイズドセキュリティ」であり、トークンとして発行されたものに証券規制が適用される本来の「セキュリティトークン」とは順序が異なるという。

国内では電子記録移転権利としてのSTはほとんど発行されておらず、その障壁は技術ではなく税務にあると指摘。一方で、個人投資家にとっては分離課税の有無が大きいが、機関投資家は法人課税のため事情が異なるとし、電子記録移転権利としてのSTを機関投資家市場に当てれば、DeFiとの連携もより柔軟に進められる可能性があるとの見方を示した。

具体例として齊藤氏が挙げたのが「リファードトークン(参照トークン)」だ。現物を信託に転換して有価証券化するこれまでのアプローチとは異なり、既存の証券に連動する形でトークンを発行する手法。

小林氏は海外との比較から問題提起した。米国ではSecuritizeが一年半以上前に投入した「BUIDL」(ブラックロックのトークン化ファンド)のように、オンチェーンで完結する商品がすでに存在する。銀行送金なしに投資でき、クロスチェーン取引やDeFi(分散型金融)への応用も進む。

小林氏は「技術的な障壁はほぼない。日本でそれができない理由を考えていかなければならない」と言及。日米の市場構造の違いも指摘し、「米国には数千万人規模の富裕層がいるが、日本は大手金融機関と一口1万円のリテールの間が空洞化している」と述べた。

「商品の魅力」から「取引の高度化」へ

今後の方向性に議論が及ぶと、登壇者からは「取引の高度化」というキーワードが繰り返し挙がった。平井氏は、これまでの国内ST市場が多様なアセットの小口化というリテール向け「商品の魅力」で発展してきた一方、上場株式や国債のトークン化は「商品の魅力ではなく、取引の高度化だ」と述べた。トークン化しても利回りが上がるわけではない。意味があるのは、レポや貸借などオンチェーンならではの取引、すなわち「取引の高度化」だ。Boostryとしてはこれを「Next ST」と位置づけ、まずホールセール(機関投資家向け)から着手する方針だという。

小林氏は「取引の高度化」の具体例としてDeFiとの融合を挙げた。Securitizeが手がけるプライベートクレジットのファンドでは、ルーピング(レバレッジ運用)を組み合わせることでイールドが倍近くに向上する事例があるという。「こうしたインセンティブがなければ、マスでの移動は起きないだろう」との見方を示した。

一方で、KYC済みのパーミッション環境にパーミッションレスのDeFi資産が混在する課題にも触れ、大手金融機関が安心してDeFi取引を行えるソリューションの整備にここ1〜2年注力してきたと述べた。

齊藤氏はこうした「取引の高度化」を支えるには決済手段の進化が不可欠だと訴えた。2030年にグローバルのトークン化資産(ステーブルコイン含む)は約1,400兆円規模に達する見通し。

日本の金融市場シェア(5〜6%)で換算すると約70兆円が必要だが、現状のST市場は約1兆円にとどまる。このギャップを埋めるには、機関投資家の参入に加え、ステーブルコインや預金トークンなど、銀行送金に代わる即時決済手段の整備が同時に求められる。

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