- 金融庁後援イベントでbitFlyer加納氏や金融庁の水口審議官が登壇
- 今回のイベントは、『仮想通貨とICOに関するリスクマネジメント』がテーマとなっており、様々な登壇者からICOについて触れられた他、自主規制団体で法律顧問を務める河合氏から課題とこれからの枠組みについてのお話がありました。レギュレーター側の水口審議官は「仮想通貨、ICOといった観点からのフィンテックのイノベーションは重要な要素なので、そういうものの芽を決して摘まないようにしたい」と強調しています。
5月11日に東京都千代田区で開催された「仮想通貨・ブロックチェーンフォーラム2018−仮想通貨、ICOで沸くフィンテック分野におけるリスクマネジメント最前線−」にCoinPost編集部も参加いたしました。今回のアジェンダ及び登壇者については、こちらを参照して下さい。
今回のイベント名にもあるように、ゲストスピーカーからはICOについて多くの議論、提案があり、様々な観点からICOの考え方について発表されていました。
イベント内容をまとめてご紹介致します。
bitFlye代表の加納裕三氏:マイクロペイメントの観点からの「ビットコインは面白い」
村井政務官の開会の挨拶の後、まず最初に行われたのは、日本最大手の仮想通貨取引所「bitFlyer」代表の加納裕三氏による「フィンテックのリスクマネジメントー注目を集める仮想通貨・ICOの可能性とリスクー」という題目での基調講演でした。
同講演の中で加納氏は、ビットコインによってもたらされた新しい取引の一つにマイクロペイメントを挙げ、それについて「例えば一円以下の支払いができる点が面白く、この取引方法を用いて、コンピュータ同士がデータの売買を自動的に取引ができ、こういったコンピュータ同士が自動でお金のやりとりをできるというのが次の世界だと思っていて、こういったマイクロペイメントの機能を活用できるビットコインの特徴は非常に面白いと考えております」と、述べました。
また、ICOの説明もあり、その中で加納氏はTelegramが約1,700億円もの資金を調達した事を例に挙げ、「ベンチャー企業がこれだけ多額の資金を集め、しかも株式を渡さなくていいという事は、非常に大きな可能性を感じる仕組みである。」と、述べました。
CoinPostでも速報記事を上げましたが、同講演の中で加納氏が政府機関におけるブロックチェーンの活用について、内閣官房に提案したとの旨の発言もありました。
DMM.comラボ加嵜氏、篠原氏:インターネットの課題を解決するブロックチェーンの可能性
次にDMM.comラボの加嵜氏と篠原氏による講演「ブロックチェーン・スマートコントラクト技術の可能性とリスク」が行われました。
講演では、これまでのインターネットの課題として
- さまざまなものを電子化してきたが、インターネットの技術だけでは”現金を電子化”する事はできなかった
点を指摘。その理由として、
- コピーや改変がされてはいけない
- 所有権を移転する必要がある
という点をこれまでクリアにする事ができていなかった、と述べました。
また、「インターネット自体がダウンした事はあまりないが、インターネット上のサービスはよく利用できなくなる」点もインターネットでの課題であり、クライアント型サーバーシステムの限界があった事を挙げております。
しかし、ブロックチェーン技術の登場によってこれらの課題をクリアにする事ができると加嵜氏は指摘しております。ブロックチェーン技術の革新性とは「コピーや改変ができないデジタルデータの実現」と「誰も管理者がいない自立分散(非中央集権)システムの実現」にあるといった、まさに技術者からの観点からの講演内容は非常に興味深いものでした。
インロビ後藤田氏:ブロックチェーン業界の人材不足を克服する為に必要な事
3つめの講演は、株式会社インロビ代表取締役の後藤田氏による「ニーズ高まるブロックチェーン人材への対応」という題目で、お話がありました。
会社紹介で、同社は6月に「BLOCKCHAIN JOBS」ブロックチェーン業界業界特化型の求人サイトをリリース予定であるとの説明があり、高まるブロックチェーンの規模、人材の需要に対応していくとの事です。
しかし、国内の課題として圧倒的に人材が不足しているだけでなく、そもそもブロックチェーンについて知見のある人材は非常に限られているとの指摘があり、その解決策としてニューメディアリスク協会をサポートする形で、人材教育を行っていくとの方針がなされておりました。
エルテス平野氏:今後も止められるデジタルリスクマネジメントと同社の取り組み
4つ目は、「仮想通貨、情報銀行、今後求められるデジタルリスクマネジメント」について、株式会社エルテス執行役員の平野元希氏の講演でした。
今後求められる デジタルリスクマネジメントについては、
- 本人確認業務の効率化
- 本人認証業務の効率化
- ①と②の複数事業者連携
の3点を挙げており、これに対応する形で、API提供型KYCソリューション、本人認証技術のアプリケーション提供、複数組織データ利活用を促進するプライバシー保護データマイニング研究などの同社の取り組みの紹介などがありました。
ビットポイントジャパン小田代表:日本が再び仮想通貨市場の中心になる為に
5つ目は、「日本におけるICOの必要性と可能性」について、ビットポイントジャパンの小田代表による講演がありました。
小田代表からは”日本を再び仮想通貨市場の中心にしたい”という意気込みがあり、その為には今後の取り組みが大事だと強調しました。
最も興味深かったのは、同社の(仮想通貨)上場に関する審査ポイントについて、
- ビジネスモデル
- ビジネスバックグラウンド
- トークン
- コンプライアンス
- ファイナンス
の観点から上場審査を行なっている、という部分です。
パネルディスカッション:仮想通貨やICOの現状と課題、そしてこれから
6つ目はパネルディスカッション「仮想通貨・ICOにおけるリスクとは?」について、パネラーに金融庁監督審議官水口純氏、アンダーソン・毛利友常法律事務所河合氏、ビットポイントジャパン小田代表、AnyPay山田氏、Aerial Partners沼澤代表を迎え、モデレーターは今回の主催団体である一般社団法人ニューメディアリスク協会中村理事長が務められました。
中でも興味深かったのは税制について、Aerial Partners沼澤代表は、
「分離課税の導入まではまだ議論の重ねる必要があり、程遠いと感じます。」
「そういった税制の改革においてはまず、仮想通貨の実需を高めていく必要があり、現在決済をすると都度税の計算をしなければならない問題があるが、一定の範囲内で少額決済について課税をしないといった(政府の)英断があると仮想通貨取引が活発になるのではないか」
といった、会計士ならではの観点からお話があったことです。
同様に、アンダーソン・毛利友常法律事務所河合氏からも
「仮想通貨は一種決済の新しい手段になる事を目指しましたが、決済をする度に利益の確定を申告しなければならないのかといった疑問があります。仮想通貨ユーザーが集まるバーに行ったのですが、みなさん仮想通貨を持っているにも関わらず、(税の申告が)めんどくさいから現金払いにしようよという風になったわけなんですね。」
「(仮想通貨を)決済手段として伸ばしていきたいのであれば、税制を変える必要があり、例えば投機的な動きだとか値上がり益に対して課税する事と、少額決済を非課税にするといった上手い組み合わせというものを(税制に携わる方々に)考えていただきたいなと思っております」
と、実体験に基づいたお話や、具体的な提案がありました。
また、仮想通貨交換事業者自主規制団体の法律顧問を務めている観点からも河合氏は、
と、ICOの枠組み作りについてのお話もありました。
これらの意見を受けて、金融庁の水口氏は、以下のように総括しました。
「仮想通貨、ICOといった観点からのフィンテックのイノベーションは重要な要素なので、そういうものの芽を決して摘まないようにする一方で、利用者保護をどう図っていくかというバランスは大事だと考えております。」
まとめ
今回のイベントのタイトルにもあるように、仮想通貨のリスクだけでなく、ICOに関しても多くのお話がありました。
確かに詐欺まがいのプロジェクトもある一方で、ICOのプロジェクトの質が高まってきている点や、その新しい資金調達手段としての可能性に多くのスピーカーが触れており、非常に面白い話がたくさん聞けたと思います。今後もCoinPostでは積極的にイベントレポートを発信していく予定です。