- ICOの効率性
- ここ数年で、新たな資金調達方法であり、一般投資家とプロジェクトを直接結びつけるICOは急成長を遂げ、多くのプロジェクトの重要な資金源となっています。そして、ICOは、資金の流動性が高く、多くの出資方法があり、成長性の高い仮想通貨関連プロジェクトに出資できるため、VC企業にとっても効率的な投資方法であると考えられています。
- 関心の高まり
- ICO熱が高まる中で、VC企業はもはやその資金を切り札として使用できず、そのプロジェクト自体にどれほどの付加価値を与えることができ、プロジェクトコミュニティに貢献できるかが肝となっています。多くのVC企業が既に仮想通貨市場に参入してきていることから、今後のVC企業と仮想通貨プロジェクトの関わり方が注目されています。
VC業界と競合の資金調達法ICO
ここ数年でICOという資金調達の方法が急激に高まり、業界内の多くの専門家やエヴァンジェリストは、ベンチャーキャピタル(以下、VC)の資金調達方法が既に遠い昔の資金調達方法であると結論付けられています。
実際に、ICO市場は、ここ1年半で特に伸びてきており、2018年第一四半期の調達額は、2017年の総額を越す勢いを見せています。
一般投資家が自身の支持するプロジェクトに直接投資することができ、企業側も比較的自由に調達を行えるICOが発展してきたのは当然の結果であると言えるでしょう。
さらに、VC業界も、仮想通貨および、ブロックチェーン技術の影響を無視できなくなってきており、新たな機会やアイデアを求めて調査を行なっているのです。
多くのVC企業も早いところでは、2013年から仮想通貨中心のファンドを設立するなど、仮想通貨市場に参入し始めてきています。
一見、VC業界と競合とも取れるこの資金調達方法に注目が集まっているのには理由があります。
VCにとって、仮想通貨および、ブロックチェーン業界は、大きな流動性および、金融の安定をもたらし、利益を見込める可能性を秘めた未開拓の市場なのです。
そして、ブロックチェーン技術が今後もあらゆる業界に浸透していき、メインストリームに進出していく見込みも高まってきていることから、今後その技術に対してどのような計画で物事を進めていくかが定まっていないVCは、時代に取り残されていってしまうと考えられています。
より効率的な投資モデル
VC企業が行う既存の出資方法は、一度出資を決めた後に、プロジェクトの成果が思うように出なかった場合、買収または、IPO以外で資金の回収を行うことが非常に難しいのです。
しかし、ブロックチェーンを使用したICOで出資を行なった場合、比較的容易に資金の回収を行うこともできるのです。
さらにVC企業は、様々な方法でプロジェクトに出資を行うことができます。
既存の方法と似た方法で出資を行うこともでき、ICO事前段階で出資を行ないプロジェクトが設立されたら一部トークンを売却することができるSAFT(Simple Agreement for Future Tokens)と呼ばれる出資方法も選択することができるのです。
仮想通貨市場の流動性も考えると、ブロックチェーン基盤の企業の方がより速く利益を上げることができると言えます。
そして、株式の代わりにトークンを受け取ることで、VC企業はパフォーマンスの予想を下回った企業を容易に損切りすることもでき、仮想通貨価値のボラティリティに対して、比較的迅速に対応することができるのです。
よって、すぐにトークンを売却できる場合が多い仮想通貨業界は、大きな投資機会を有していると考えられています。
実際そのボラティリティもVC企業によっては肯定的に捉えられる場合があります。
2017年には、ヘッジファンドの平均リターンは8.7%であったのに対し、仮想通貨に特化したファンドは、3000%近くのリターンを記録しました。
VC企業は2012年から仮想通貨業界に25億ドル(約2750億円)相当を投資しており、そのうちの10億ドル(約1100億円)相当が2017年のみで投資されていることから、VC企業の関心の高まりも示唆されています。
しかし、VC企業が懸念しているのは、仮想通貨業界においての規制です。
仮想通貨業界は、人気が高まってきている業界であるのに対し、その規制は未だ不透明で不完全であると言え、適切な規制の整備が必要となってきています。
現時点で、仮想通貨価格にも多大な圧力を与えている規制の不透明性ですが、その不透明性が払拭され、規制枠組みが整うことこそが、機関投資家が流入してくるサインになるとされています。
この適切な整備によって、セキュリティ、消費者保護の向上、仮想通貨詐欺の排除などが行われることは業界に非常に大きな影響を与えるでしょう。
先日のアメリカ証券取引委員会(以下、SEC)がビットコインやイーサリアムを証券ではないと定義したことは大きな進歩であると言え、VC企業は今後の規制による影響が緩和されたと感じています。
Science BlockchainのCEOを務めるGreg Gilman氏は以下のようにコメントしています。
SECを始めとする多くの規制局は、それぞれが適切であると考える方法で規制を行っていくため、ここ数ヶ月で仮想通貨コミュニティとの接触を図っています。
そして、ScienceやA16zのように、今後さらに多くの実績のあるファンドや企業が参入してくることで、規制局が感化され、合法性を高めようとする取り組みを行っていくことが期待されています。
現時点で、規制局の仮想通貨市場に対する姿勢が不透明なため、ほかの仮想通貨市場に比較的寛容な国々に遅れを取っているのが現状であると言え、SECなどもこの現状を認識していると考えられています。
よって、イノベーション促進しつつ、消費者保護も考慮され、仮想通貨市場に比較的寛容な適切な規制が近いうちに整備されるのではないかとされています。
最後に、多くの企業は、仮想通貨市場はバブルではないかと懸念を示している一方で、仮想通貨やブロックチェーン技術を無視する方が多くの機会損失を被ると考えているようです。
VC企業も例外ではなく、少なくとも仮想通貨業界に足を踏み入れることを考慮しています。
2017年に仮想通貨特化型ファンドが58であったのに対し、2018年には225もの新規仮想通貨特化型ファンドが設立されたことから、企業の仮想通貨に対する関心も着実に高まってきていると言えるでしょう。
関心の高まり
この仮想通貨ファンドの高まりは、ブロックチェーン技術が破壊的技術であることを示唆していると言えます。
そして、今後その技術はあらゆる業界に影響を及ぼしていくと考えられることから、VC企業がその技術について理解を深め、ハイブリッド型の出資モデルの作成などを行うことで、ブロックチェーンスタートアップのさらなる発展を促すことができるのではないでしょうか。
すでに、AlphabetやSequoia Capitalなどの名だたるVC企業が、主要ブロックチェーンプロジェクトに数億円規模で投資を行っており、今後もさらなる企業が支援される予定です。
この変革は、VC企業がビジネスモデルを根本的に変える必要があることなど、容易ではありませんが、必要な適応であると言えます。
TLDR Capitalの共同創業者を務めるPer Tom Graham氏は、以下のようにコメントしています。
ICOは、プロトコルやユーティリティトークンプロジェクトのための資金捻出のコストを大幅に削減し、既存VC企業のビジネスモデルに対し大きな脅威となっています。
そして、ICO投資家は、少ない購買力を持ち、優先株式や特別扱いを求めることはありません。
VC企業が、その大半の株式を所持することや、先駆的なプロジェクトをコントロールすることを目的とした場合、資金はもはや切り札として通用しなくなっています。
よって、資金調達が比較的容易になった現在では、仮想通貨投資企業が仮想通貨プロジェクト、そして、そのコミュニティにどれほどの付加価値を与えられるかが肝となっているのです。
2018年3月までにVC企業から、あらゆる業界のブロックチェーン企業に既に4億ドル(約440億円)が出資され、Rockefeller estate傘下のVC企業であり、SnapchatやVenrockにも出資したLightspeedのような有名企業も仮想通貨関連プロジェクトへの出資を発表しています。
ICOはプロジェクトを資金的に支える一方で、VC企業は、プロジェクトが成功するために必要不可欠な基礎の部分で支援を行っていくことが求められていると言えるでしょう。
What’s Behind the Multi-Billion Dollar Venture Capital Interest in Crypto?
July 16, 2018
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