- EU議会レポート内容
- 世界で最も強力な権限を持つ立法機関の一つとされる欧州議会の経済金融委員会は20日、仮想通貨業界のバリューチェーンの中で大きな影響を持つ「5つの分野」について定義を行い、報告書に記述した。
- フィンテックとは
- 金融を意味するファイナンス(Finance)と、技術を意味するテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語のこと。
EU議会レポート内容
7月20日に、欧州議会の経済金融委員会(European Parliament Committee on Economic and Monetary Affairs、ECON)は、昨今のフィンテック分野の概要をまとめた「フィンテック業界における競争問題(Competition issues in the Area of Financial Technology)」という報告書を公開しました。
その報告書内では、銀行業、決済、送金、資産運用、保険などを始め、仮想通貨についても言及されており、仮想通貨業界のバリューチェーンの中で大きな影響を持つ、以下の5つの分野について記述されました。
- ブロックチェーン
- マイニング
- ウォレット、取引所、決済
- スマートコントラクト
- 銀行および、クレジットカード決済
ブロックチェーン
仮想通貨業界の根底にあるのは、ブロックチェーン技術であり、その技術は、あらゆる人々が参加可能な「パブリックチェーン」と承認型の「プライベートチェーン」の2つに分類されると記述され、中央銀行や、商業銀行が使用するのであれば、プライベートブロックチェーンであると言及。
しかし、どのようなブロックチェーンであれ、その技術は、Peer-to-Peer(P2P)ネットワーク上のノードが協力して台帳を運用していく、分散型、または非中央集権的な特徴を持つとされています。
そして報告書内では、ブロックチェーンの定義として、
- 暗号化アルゴリズムが用いられている
- P2Pネットワークの規則が存在する
- 合意形成の仕組みがある
- 台帳である
- 承認の規則が存在している
という5つの特徴を持っていると記述されました。
マイニング
マイニングは、新しいブロックの承認を行う活動であり、ブロックチェーンを存続させていく上で、非常に重要な活動であると記述される一方で、多大な処理能力および、電力などのエネルギー消費を必要とするという否定的な記述もされています。
そして、そのマイニング分野は、もはやマイニング活動だけに止まらず、マイニング専用のチップの開発や製造、個人でのマイニング、クラウドマイニング、マイニングプールなど、様々な事業形態が台頭してきていると主張されました。
ウォレット、取引所、決済
ウォレットは、ユーザーが通貨の保有や消費の際に使用するアプリケーションです。
しかし、特定の仮想通貨から、法定通貨やその他の仮想通貨に替える際は、一度仮想通貨取引所を経由しなければならないため、仮想通貨取引所のアカウントで仮想通貨を保有している人も増え始めており、ウォレットと取引所の境目が曖昧になってきていると記述されています。
そして、仮想通貨業界におけるウォレットや決済、取引所分野は、提供業者が非常に多く、参入障壁が低いと考えられる一方で、取引所分野に関しては、上位5社がビットコイン取引市場の75%を占めるなど、寡占市場的な傾向にある懸念が示されました。
スマートコントラクト
月末の家賃の支払いなど、ある条件が満たされた場合、あらかじめ定められていたものが自動的に執行される特色を持つ、スマートコントラクトも、仮想通貨業界において重要な役割を果たすと記述されています。
銀行および、クレジットカード決済
イーサリアムの実用化に向けた企業組合であるEnterprise Ethereum Alliance(EEA)や、JPモルガンのクォーラムプロジェクト、サンタンデール銀行および、アメリカンエクスプレスのリップルとの提携など、銀行や決済企業も、プライベートな承認型ブロックチェーンの発展に貢献し、仮想通貨業界の中で、重要な役割を果たしていると考えられています。
このように、欧州連合の議会組織であり、世界で最も強力な権限を持つ立法機関と言われている欧州議会の委員会の1つが、銀行業や保険といったテーマとともに仮想通貨を挙げており、調査を行なっているということは非常に肯定的であり、今後の動向が注目されています。