
仮想通貨テゾスを解説
国内の暗号資産(仮想通貨)取引所のSBI VCトレードや、GMOコインなどで取り扱われているテゾスは、分散型アプリケーション(dApp)のプラットフォームを目指して開発が進められているプロジェクトです。近年はRWA(Real World Assets)分野におけるウランのトークン化プロジェクト「Uranium.io」や、サッカークラブ・マンチェスター・ユナイテッドのファンタジースポーツ「Fantasy United」など、実社会やエンターテインメントとの連携事例が増え、注目度を高めています。
本記事では、テゾスの仕組みや特徴だけでなく、こうした最新トピックを交えながら解説していきます。
1.テゾスとは
仮想通貨(暗号資産)国内大手取引所のGMOコインに上場するテゾス(XTZ)は、21年8月時点で、CoinGeckoで時価総額42位のメジャーアルト。2014年よりスタートしているプロジェクトで、分散型アプリケーション(dApps)などで利用されるプラットフォームです。
テゾスは、独自の検証メカニズムを持つスマートコントラクト機能と、ハードフォークすることなくブロックチェーンのアップデートが可能な自己修正機能などの特徴を有しています。スマートコントラクトの安全性、アップグレードのしやすさ、意思決定への参加障壁の低さを同時に実現させることで、ブロックチェーン技術の普及をテゾスは推進しています。
通貨名 | テゾス(Tezos) |
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通貨コード | XTZ |
公開日 | 2017年7月1日 |
コンセンサスアルゴリズム | LPoS(Liquid Proof of Stake) |
公式ウェブサイト | https://tezos.com/ |
公式Twitter | https://twitter.com/tezos |
medium | https://medium.com/tezos |
2.テゾスの特徴
テゾスには、主に3つの特徴があります。
スマートコントラクトの実証機能
テゾスの特徴としては、形式検証(Formal Verification)と呼ばれる技術者によるスマートコントラクトの内容の実証機能が挙げられます。これは、契約情報をテゾスのブロックチェーン上に設定し自動化できるスマートコントラクトの内容を、数学的な視点から技術者が検証を行う方法論です。
コンセンサスアルゴリズムにLPoSを採用
テゾスでは、データ処理にLiquid Proof of Stake(LPoS)を採用しており、マイナーが必要ありません。また、LPoSでは、承認者に選ばれたとしても権限そのものを他人に譲渡することも可能であり、保有者の中から承認者がランダムで選択される為、通貨の保有量などの要素を気にしなくてもいいというメリットがあります。
なお、PoS(Proof of Stake; プルーフ・オブ・ステーク)は、仮想通貨の保有量や保有年数に応じて報酬が決まる仕組みです。
メリットとして、悪意のある攻撃(PoWの51%攻撃など)に強い、マイニングにかかる電気消費量を抑えることができ、環境にやさしいなどがあります。その一方で、富裕層に優位という点がデメリットとして挙げられることが多いです。
ハードフォークすることなくアップデートが可能
テゾスの特徴の中でも異色と言えるのは、システム修正時に対して互換性があるという点です。
ビットコインやイーサリアムは、既存のシステムに疑問を持った人々がシステムを修正したことでハードフォークを経てビットコインキャッシュやイーサリアムクラシックが誕生しています。
しかし、テゾスの場合は、通貨を分裂させることなく、新しい通貨の定義と既存のシステムに互換性を持たせることが可能で、テゾスのシステムを応用した場合、ハードフォークの必要性がなくなるとされています。
3.独自通貨XTZとは
テゾスブロックチェーン上で稼働する独自の仮想通貨名もテゾスと呼ばれ、ティッカーシンボルはXTZです。このXTZは、ビットコイン(BTC)が抱える4つの問題を解決するために発行されています。
- ハードフォークの問題、調整問題へのダイナミックな革新力の欠如
- PoWにおけるコストの悪さと中央集権的なシステム
- ビットコイントランザクション言語の限られた表現力、それに伴うスマートコントラクトの他のブロックチェーンへの強制移行
- 仮想通貨の実行におけるセキュリティ問題への懸念
ベーキングとは
テゾスでは新規ブロックをブロックチェーンに追加し繋げる作業を「ベーキング(Baking)」と呼びます。これはPoS上のブロックチェーン生成であり、テゾスの取引記録を承認する作業のことで、ビットコイン(BTC)で採用されているPoW(プルーフ・オブ・ワーク)のマイニングに相当します。
このベーキングを行うノードをベーカー(Baker)といい、取引記録の責任をもっています。ベーカーになるノードは、安定したインターネット環境と万全なセキュリティ対策を整頓している必要があります。
ベーカーになるには、10,000XTZを保有している必要があります。しかし、仮に必要量に満たしていない場合でも、他者に自分のテゾスを委任し総量が10,000XTZとなることで参加することもできます。
委任システム
PoSにおけるセキュリティデポジット(保証金)は、コンセンサスの過程に参加し、インフラ(物価上昇)の影響を回避することが必須です。PoWにあるように、コンセンサスプロトコルはセキィリティが公正な多数派によって決められ、テゾスプロトコルで奨励され、不正の行為にはペナルティを公正な行為には報酬を与えます。
仮に参加者が不正を犯したとすれば、保証金はなくなります。コンセンサスに参加を望まないユーザーは、他のユーザーに権利を委任する選択権があります。
4.ユースケース
テゾスのユースケースとしては、以下のケースがあります。
- 2019年2月:テゾスの最大のベーカーの一つであるテゾス・キャピタル(Tezos Capital)がStakerDAOを発表。StakerDAOは、テゾス初のDeFiアプリケーションで金融を分散的にマネジメントするプラットフォーム。
- 2019年3月:南米の大手投資銀行BTGパクチュアル(BTG Pactual)とドバイにあるファンドのダルマ・キャピタル(Dalma Capital)が、10億ドルのSTO(セキュリティトークンオファリング)のパイプラインにテゾスブロックチェーンを利用することを発表。
- 2020年2月:証券トークンを発行するセキュリタイズ(Securitize)企業と不動産のSTOを行うエレヴェッティド・リターンズ(Elevated Returns)が、テゾス上で10億ドル(約1.100億円)を目標に不動産のトークン化を実施することを発表。
テゾスはその自立性のあるアップデートと形式認証システムにより金融分野での利用が推進されています。また、テゾスは、dApps(Decentralized Application/分散型アプリケーション)ゲームにも着手しています。
- 2020年4月…テゾスの共同創設者のKathleen Breitman(キャサリン・ブライトマン)がゲーム企業Coaseを設立し、テゾスのブロックチェーン上で構築するカードゲームの「Emergents」をリリースすることを発表。
- 2020年7月:中国の国家ブロックチェーンインフラプロジェクト「BSN(Blockchain-Based Services Network)」にテゾスのブロックチェーンが統合されることが判明。
- 2020年10:^) テゾスのブロックチェーンが、フランスの都市の道路建設計画に関する投票に採用。
- 2021年3月:砂漠で行われるアートフェスティバル「バーニングマン」の開催地に近い米国ネバダ州のリノ市が、テゾスと提携し、DAO(自律分散組織)やNFT(非代替性トークン)の活用に取り組むことを発表。
- 2021年4月:フランスの大手銀行ソシエテ・ジェネラルグループが、テゾスのブロックチェーン上でセキュリティトークンを発行したことが明らかに。
- 2021年5月:レッドブル・レーシング・ホンダが、テゾスとの技術提携を発表。テゾスは公式ブロックチェーンパートナーとして、ファンに向けたNFTの提供等を行っていくことが判明。
- 2021年8月:スイスの仮想通貨関連企業であるCrypto Finance AG、InCore Bank、Inactaの3社は、規制下でテゾスの基盤技術を利用し、金融商品を機関投資家向けに提供することを明らかに。
- 2021年12月: 2021年12月Ubisoft Tezosブロックチェーン上でUbisoft Quartzを構築。NFT市場へ参入。 関連記事
- 2023年2月: Googleクラウドと提携へ。Google CloudがTezos上でバリデーターとなる。WEB3上でのアプリ開発へ向けて加速。関連記事
- 2023年9月: 著名な芸術文化機関であるオルセー美術館と1年間のパートナーシップ発表
- 2024年12月: ウランのトークン化によりウラン取引が可能に
The @TezosFoundation is excited to unveil a year-long partnership with the renowned arts and culture institution, the Musée d’Orsay! 🧵(1/3) pic.twitter.com/Y8Sex5IsTP
— Tezos (@tezos) September 29, 2023
関連:トークン化で小口のウラン取引が可能に、分散型アプリUranium.ioがテゾスでローンチ
5.開発者
この項では、テゾス開発に携わる人物や組織を紹介します。テゾスは、開発拠点をスイスに置いています。
開発者
Kathleen Breitman(キャサリン・ブライトマン)は、テゾスの共同創設者&最高経営責任者です。ブロックチェーンを基盤とし、オンチェーン上にあるガバナンス仕組みを用いたスマートコントラクトプラットフォームを構築しました。テゾスのネットワークの調整やアップグレードを推し進めています。
彼女はCornell University(コーネル大学)出身です。テゾスを創業する以前は、R3(分散型台帳技術を開発する企業)で戦略的な役割を担う先任者として活躍。アクセンチュア、ブリッジウォーター・アソシエイツ、ウォール・ストリート・ジャーナルで働いていた経験もあります。
Arther Breitman(アーサー・ブライトマン)は、キャサリンとともにテゾスを立ち上げた共同創設者であり、最高技術者(CTO)でもあります。セキュリティを高く保ちつつ、利便性の高いスマートコントラクトプラットフォームを構築しています。
テゾスを立ち上げる以前は、ゴールドマン・サックスとモーガン・スタンレーでクオンツ・アナリストとして従事していました。
テゾス財団とは
テゾス財団は、2015年8月1日にスイス財団が設立した組織です。スイス連邦財団監督当局によって管理されています。
テゾスは、新しい技術の促進と開発を目的とし、オープンで分散化型ソフトウエア構成の分野に力を入れています。テゾスの開発には、世界中からの多くの団体が貢献しています。テゾス財団はそのエコシステムの一部であり、エコシステム全体は開発者、ネットワーク上の取引を検証しブロックを繋げるベーカーなどにより支えられています。
6.価格動向
CoinMarketCapのデータによると、テゾス(XYZ)の時価総額は約14.7億ドル(約2,230億円)で、2025年1月6日時点の順位は75位に位置しています。テゾスは2017年のICO後、メインネットをローンチし、2018年8月頃に1トークンあたり約3ドルで初期の価格記録が確認されましたが、その後1ドルを下回る時期もありました。

出典:コインマーケットキャップ
2019年3月ごろから上昇トレンドに入り、2021年10月4日には過去最高値の9.18ドル(約1,452円)を記録しました。その後は下落傾向へ転じましたが、2023年10月にはビットコインETF上場承認への期待や金融緩和を受けた市場全体の上昇に伴い一時的に反発。しかし、2024年3月には再び値を下げ、0.5ドル付近で推移する展開となりました。
2024年11月の米大統領選挙(トランプ氏勝利)の報道を背景に急騰し、2025年1月6日現在は1.46ドル(230円)前後で推移しています。
7. テゾスの将来性、今後の注目点
1. RWA
テゾスコミュニティブログ「The Baking Sheet – Issue #236」によれば、2025年もリアルワールドアセット(RWA)分野での取り組みが引き続き拡大すると見込まれています。RWAとは金や不動産、株式・債権などの伝統的資産のほか、カーボンクレジットや著作権などを含む「現実世界の資産」の総称です。
⚛️ Introducing @uranium_io! ⚛️
— Tezos (@tezos) December 3, 2024
By leveraging a decentralized ledger and smart contract capability, tokenized uranium enables holders to own digitally allocated yellowcake uranium stored in a robust physical vault. 💪
Available on @etherlink, the EVM-comptabile L2 blockchain… pic.twitter.com/gz99RAI5uk
2024年には、テゾス上でウランのトークン化を進める「Uranium.io」のプロジェクトが始動しました。ウラン取引を専門とする大手企業Curzon Uranium社と、機関投資家向け英デジタル証券取引所Archaxの支援によって実現した取り組みで、Archaxはウラン現物のトークン化とカストディ業務を担います。
本プロジェクトでは、従来のウラン投資商品の制限(50,000ポンド:約950万円の最低ロット等)がなくなることでウランへの投資ハードルが大幅に下がり、投資家がアクセスしやすくなり、購入したウラン(U3O8)はCameco社が所有・管理する規制された保管庫に厳重保管されます。
脱炭素社会を目指す流れの中で原子力発電の重要性は増しており、AIブームを背景にテクノロジー大手企業による電力需要が拡大していることもウラン価格の高騰要因の一つとされています。
2. Etherlink
2024年に実装されたレイヤー2ソリューション「Etherlink」は、EVM(イーサリアム仮想マシン)との高い互換性を持ち、ほぼ無コストかつ高速な取引処理を可能にします。ゲーム分野では「Sugarverse」や「Fantasy United」が稼働しており、RWA分野では前述のUranium.ioもEtherlink上で動作しています。
— Tezos Commons (@TezosCommons) December 30, 2024
Fantasy Unitedは、マンチェスター・ユナイテッドが2024/25シーズンに導入したWeb3対応のファンタジーフットボールゲームです。3種類のレア度を持つ選手トレーディングカードを手に入れ、それを使って5人制のチームを編成。現実の試合成績(ゴール、アシスト、タックルなど)に応じてポイントを獲得し、他の参加者と順位を競う仕組みとなっています。クラブの公式コレクションや独自のDiscordコミュニティも展開されており、シーズンを通じて定期的に追加のカードやイベントがリリースされる見込みです。
2025年以降もEtherlinkの利点を活かした多様なプロダクトが充実していくことが期待されています。
3. アート世界とのコラボ
2024年6月28日から2025年6月29日にかけて、ニューヨークの映画博物館「Museum of the Moving Image」は、テゾス財団と1年間にわたるコラボレーションを実施予定です。デジタルツールを活用するアーティストへ展示機会を提供し、来場者は作品の一部を無料でミントして持ち帰ることができる仕組みになっています。
We are thrilled to partner with the @TezosFoundation on a new yearlong project that offers artists working with digital tools an opportunity to exhibit their work and visitors the ability to mint and take home a fragment of the artwork for free. https://t.co/SUBH1eJ93y pic.twitter.com/jrsUXg3OFQ
— Museum of the Moving Image (@MovingImageNYC) June 26, 2024
こうした取り組みから、テゾスはRWAやエンターテインメント、アートなど多岐にわたる分野で独自のブロックチェーン技術を展開し、さらなる実用化やユーザー拡大を見込んでいます。
8.テゾスを取り扱う国内暗号資産(仮想通貨)取引所
国内の仮想通貨(暗号資産)取引所のうち、SBI VCトレードやGMOコインなどがテゾスを取り扱っています。
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