- 仮想通貨取引にかかる税金や確定申告、考えられる節税方法など
- 仮想通貨の税金の解説記事を、齋藤雄史公認会計士・税理士事務所 代表の齋藤雄史氏に寄稿していただきました。
仮想通貨専門税理士・公認会計士
齋藤雄史
東北大学大学院経済学研究科会計専門職課程修了、慶應義塾大学大学院法務研究科法務専攻履修。
新日本有限責任監査法人を経て、公認会計士・税理士事務所を開業し、自らも経営者、投資家として、経営者や投資家の財務・税務をサポートする。
2017年より、仮想通貨専門税理士として、税金の仕組みの基礎から、仮想通貨の税金対策セミナーを各地で開催している。
これまで500人以上の税務申告の相談にのり、要望の大きさから仮想通貨専門の税務相談サービス(Coin Tax Service)を設立、監修を務める。
はじめに
2017年末、かなりの盛り上がりを見せた仮想通貨ですが、ビットコインをはじめ、様々な仮想通貨価格が急騰する事態となりました。
その中で、「億り人」と呼ばれる仮想通貨長者も多数出現したようです。
その一方で、3月には確定申告の期限がやってきます。
これまで税金になじみのなかった方々からは
「確定申告のやり方がわからない…」
「税金払わない方法はないの?」
など、税金について考えるにあたり、様々なご相談を受けることが増えてきました。
結論から言えば、仮想通貨関連で数十万の利益が出た方は、確定申告をしなければならない方が多いでしょう。
本連載では仮想通貨に関する税金についてわかりやすく解説をし、正しい税金対策の仕方をご紹介します。
したがって、仮想通貨での取引のみをしている人に焦点を絞って税金の解説をしていきます。
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仮想通貨取引にかかる税金について
仮想通貨取引に関係する確定申告について
その他
仮想通貨取引にかかる税金について
仮想通貨で得た利益は所得税の対象になる!
仮想通貨で利益が出た場合、所得税と個人住民税を納税する必要があります。
所得税は、1月1日〜12月31日の1年間に得た利益合計(所得金額)を計算し、そこに税率をかけることで納めるべき税金を計算します。
また、所得金額の計算は12月31日に決まりますが、実際に所得税を納付するのは翌年3月末以降になるので、それまでに納付するお金の確保をする必要があります。
仮想通貨取引の利益は「雑所得」か「事業所得」が基本
仮想通貨取引で得た利益は、基本的に「雑所得」か「事業所得」に分類されます。
大雑把に分けてしまえば、その違いは、副業なのかメインの仕事なのかです。
サラリーマンや他の仕事をメインに生計を立てていて、その傍らで仮想通貨取引をしている人はであれば「雑所得」になります。
一方、仮想通貨取引で生計を立てているような人であれば「事業所得」になります。
所得税は10種類のその性格によって所得を次の10種類に区分しています。
画像引用元:所得の区分は10種類|知るぽると
「雑所得」の計算式
雑所得の計算は以下の通りです。
例えば、50万円で買ったBTCが100万に値上がりして、現金100万円で売却。取引手数料に1万円かかった。という場合
100万円—(50万円+1万円)=49万の利益となり、この49万円に税金がかかってきます。
総合課税と累進課税制度
「雑所得」は総合課税という区分に分類されます。
総合課税とは、他の所得と合算してから、税率等を決めて、課税するシステムです。
そして総合課税と大きく関わるのが、日本で採用している累進課税制度です。
累進課税制度では所得金額が多ければ多いほど、税率が高くなります。
サラリーマンであれば、今までの給与所得に仮想通貨の所得がプラスされ、これまでより高い税率になる可能性があります。
税率は最高で55%程度になる!
所得税の税率は以下の表にまとまっています。
「国税庁:速算表」(https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm)
では、具体的にいくらの税金がかかるのか見てみましょう。
(給与所得が年間500万円のみの場合)
■前提
①給与所得500万円(給与所得控除後346万円)
②社会保険料控除:50万円
③基礎控除:38万円
給与所得{(給与所得控除後)-所得控除額(社会保険料控除+基礎控除)}x税率-控除金額={346万円-(50万円+38万円)}×10%-97,500=160,500円・・・①所得税
{給与所得(※給与所得控除後)-所得控除額(社会保険料控除+基礎控除)}x税率={346万円-(50万円+33万円)}×10%=263,000円・・・②住民税※各都道府県、市町村により異なる可能性ございます。
①+②=423,500円の税金を払う(※説明を簡易化するため復興特別所得税は加味しておりません。)
(給与所得が500万円で、雑所得(仮想通貨による利益のみ)が500万円の場合)
■前提
①給与所得500万円(給与所得控除後346万円)
②社会保険料控除:50万円
③基礎控除:38万円
{(給与所得(※給与所得控除後)+雑所得)-所得控除額(社会保険料控除+基礎控除)}x税率-控除金額={(346万円+500万円)-(50万円+38万円)}×23%-636,000円=1,107,400円・・・①所得税
{(給与所得(※給与所得控除後)+雑所得)-所得控除額(社会保険料控除+基礎控除)}x税率={346万円-(50万円+33万円)}×10%=763,000円・・・②住民税※各都道府県、市町村により異なる可能性ございます。
①+②=1,870,400円の税金を払う(※説明を簡易化するため復興特別所得税は加味しておりません。)
こんな取引をした人は確定申告が必要です
年末調整済みの給与所得を有する方で、1月~12月までに仮想通貨取引や他の雑所得の利益合計が20万円超の場合は、確定申告をしなければなりません。
しかし、一口に仮想通貨取引と言っても、様々なものがあり、どの取引が税金の対象になるのか判断が難しいです。
細かな取引について、国税庁から課税の対象となる取引が発表されています。
参照:国税庁「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」
(https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/171127/01.pdf)
現金で仮想通貨を購入しただけならば、課税はされませんが、その他の取引は分かりにくいですね。
(例)主に、以下のような取引に注意する必要があります。
BTCを100万円購入し、130万円に値上がりした後、すべてを現金に変換した。
⇨値上がり差額30万円が課税対象になります。
BTCを100万円購入し、130万円に値上がりした後、すべてをETHに変換した。
⇨値上がり差額30万円が課税対象になります。
BTCを100万円購入し、130万円に値上がりした後、すべてをETHに変換した。
⇨変換した時点で、値上がり差額30万円が課税対象になります。
その後、ETHが140万円に値上がりし、全額をXEMに変換した。
⇨変換した時点で、値上がり差額10万円が課税対象になります。
BTCを100万円購入し、200万円に値上がりしたが、何にも変換せず、そのまま保有していた。
⇨変換していないので、課税対象になりません。
イメージとしては、保有する仮想通貨を何か違う通貨やモノに変換したら、利益が発生し、課税の対象になる認識で良いと思います。
また、マイニングによるコインの取得、ハードフォークで取得したコインを現金化した場合なども課税の対象になります。
仮想通貨取引に関係する確定申告について
確定申告って何?
確定申告とは、1月1日〜12月31日の間に生じた所得金額について、納税者が自分で全額計算し、税金を納める手続きのことです。
確定申告と関係が深い言葉に、「源泉徴収」というものがあります。
給料は「源泉徴収税」が天引きされた状態で支給され、あらかじめ所得税を納付しています。
しかし、実際の所得金額が決まり、本当の税金の額が決まるのは12月31日です。
源泉徴収する金額は「毎月の給与がこのくらいなら、所得税もこのぐらいだろう」という曖昧な計算を元にしているのです。
そこに仮想通貨のような予定外の収入があると、予想よりも多くの税金がかかっているのに徴収できていない状態になります。
そこで、納税者が自ら所得金額を計算し、確定申告をすることでその過不足を調整します。
確定申告をしないと犯罪者なの?
確定申告をしなかった場合でも、すぐに脱税の罪に問われるわけではありません。
金額や悪意の程度によったペナルティがあります。以下、確定申告をしなかった時のペナルティです。
延滞税
納付するべき期日を過ぎても、税金を納付していない場合に、年率7.3%〜14.6%が延滞税として加算されます。
加算税
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 不納付加算税
- 重加算税
この中では「重加算税」が一番重く、これに該当しまうと納付額に対し約35%〜40%を追加で加算されます。
脱税罪
脱税とは、納税義務者、または徴収納付義務者が、偽り、その他不正の行為により、所得税ないし法人税をのがれ、またはその還付を受けることです。(所得税法第238条、法人税法第159条)
「10年以下の懲役」または「1,000万円以下の罰金」、もしくはその両方が課されます。
確定申告しなかった場合にも、税務署は追加徴収をより多くするため3年ほど時間を置いてから徴収に来るケースが多いです。
すぐに連絡がこない場合でも安心というわけではありません。
確定申告の流れ
2017年所得に対する確定申告の期間は2018年2月16日〜2018年3月15日です。確定申告の流れは、主に以下のようなものです。
それぞれ見ていきましょう。
①必要書類の準備
確定申告には、以下の書類を用意する必要があります。
- 申告書
- 仮想通貨取引の書類(入出金明細書、ウォレットの残高スクショ、取引所ごとの取引履歴のデータ・スクショ)
- 源泉徴収票などの添付書類
- 医療費控除受ける場合、医療費の明細や生保・損保の控除証明
- その他の控除を受ける場合の証明書類
これらは最低限必要なものとなりますので、きちんと用意しておきましょう。
②確定申告書の作成・提出
それぞれの所得を計算し、確定申告書に記入をしたのち、管轄の税務署に提出します。
所得額(利益額)の計算には税理士に相談する、G-Tax(https://crypto-city.net/)などの税金計算サービスを利用する、エクセル等を使い自分で計算するなどの方法があります。
③追加納税(税金還付)
所得税の納付期限は確定申告の期限と同じなので、2018年3月15日までに、所得税額分を納付しなければなりません。
また、住民税額分については4、5月頃に納付書が送られてきますので、受け取ったら納付します。
考えられる節税策
所得税についての節税方法をご紹介します。
事業所得にする
事業所得にすれば、損失が生じてしまった時でも、給与所得や不動産所得などの所得と損益通算できます。
さらに青色申告していれば損益通算しても残った純損失については3年間は繰越しすることができるうえ、青色申告特別控除65万円を受けられ、また、届出をすれば親族の給与を経費にすることもできます。
しかし、事業所得にするには一定の要件を満たす必要があり注意が必要です。
ふるさと納税
一般的に自治体に寄附をした場合には、確定申告を行うことで、その寄附金額の一部が所得税及び住民税から控除されます。
ですが、ふるさと納税では 原則として自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となります。
ただし、ふるさと納税には所得金額によって控除することのできる上限が定められており、さらに貰った返礼品については一時所得に該当する可能性があるためいくらまでふるさと納税を活用すると有利になるかの判断は注意が必要です。
利益額の調整
税率が上がらないギリギリのところで利益額を調整することです。
上記の税額表は段階的に税率が上がる仕組みです。
したがって、税率が上がるギリギリのところで所得金額を調整すればある程度の節税効果があります。
残念ながら2017年の申告にはもう間に合いませんが、2018年の利益計画を立てる際に参考にして下さい。
最後に
仮想通貨の税金の仕組みや、確定申告、節税方法などを紹介しましたが、仮想通貨の取引が複雑な場合、一般の人がきちんとした税金計算することは、かなり難しいと思われます。
取引量が多い人や金額が大きい人が多い人は税理士に相談することをお勧めします。
節税の相談もしてもらうことができます。
きちんとした税金対策を行い、後々困ることのないようにしましょう!