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成長株に投資する「グロース投資」とは|概要やメリット・デメリットを解説

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

株式投資は運用方針によって大きく「グロース投資」と「バリュー投資」の2つに分けられます。これらの違いを理解していないと自分の軸が定まらず、利益を得ることが難しいのはもちろん、損失を出してしまうリスクもあります。

グロース投資とバリュー投資の違いを押さえることは上記のような状態を避けるために重要です。しかしこれから株式投資を始める方にとっては、両者の違いや参考にすべき指標、具体的な銘柄を把握するのは容易ではないでしょう。

そこで本記事では、株式投資の手法の一つであるグロース投資を中心に、概要やよく比較されるバリュー投資との違い、メリット・デメリットを解説します。成長株を見極めるために大事な注目すべき指標や代表的な成長株についても紹介するので、参考にしてください。

目次
  1. グロース投資とは「成長株」への投資手法
  2. グロース投資の優位性、バリュー投資との違い
  3. グロース投資のメリット
  4. グロース投資のデメリット
  5. 成長株の見極め方、グロース投資で注目すべき3つの指標
  6. グロース投資に最適、代表的な成長株の例
  7. グロース投資で狙う成長株のハイリターン

1.グロース投資とは「成長株」への投資手法

グロース投資とは、 業績が好調で成長が期待される銘柄への投資手法です。現時点での株価がそこまで高くなくても、画期的なサービスの開発や将来的に大きな利益が生み出せそうなサービスを展開している企業へと投資します。

投資家からの期待がかかる分株価が割高になるケースも多くなりますが、期待通りに企業が成長すれば大きなリターンを得ることが可能です。

後ほど詳しく紹介しますが、グロース投資の対象となる成長株を見極めるには「ROE(株主資本利益率)」「売上高成長率」「時価総額」などの指標が重要です。

2.グロース投資の優位性、バリュー投資との違い

グロース投資とともによく比較されるのが、バリュー投資です。バリュー投資とは、本来の価値よりも低く見積もられている割安な銘柄に投資する手法です。グロース投資とバリュー投資は両極端の投資手法で「投資対象となる企業」や「利益の出し方」などに違いが見られます。

そこで続いては、それぞれの違いや両者の使い分けを解説します。

2-1.投資対象となる企業

グロース投資とバリュー投資は、投資対象となる企業が異なります。

グロース投資の対象となる企業は、売上や利益が急激に伸びており成長率が著しい企業です。代表的な企業としてGAFAM(*)が挙げられます。いずれも2000年代に台頭してきたIT系の企業で、国内では株式会社メルカリなどが該当します。このようにグロース投資の対象となる企業には、IT・テクノロジー系や最先端技術を取り扱うものが多い傾向です。

一方のバリュー投資は、株価が企業の本来の価値よりも低く見積もられている企業へ投資する手法です。バリュー投資の対象となる業界は金融業や製造業などが多いですが、これは、ある程度市場として成熟しているため利益が安定していることが大きな理由とされます。

*Google(Alphabet)、Apple、Facebook(Meta Platforms)、Amazon、Microsoftの頭文字を取った呼び名。

2-2.利益の出し方が異なる

グロース投資とバリュー投資は、利益の出し方にも違いがあります。

グロース投資での利益の出し方は「キャピタルゲイン(保有している資産を売却することで得られる利益)」がメインです。

例えば株価10万円で購入した株式が15万円になった状態で売却すれば、5万円のキャピタルゲインを得ることができます。グロース投資の対象となる企業は成長率が高いことから株価上昇が期待でき、キャピタルゲインにより大きなリターンを狙える点が魅力です。

一方のバリュー投資は、比較的安定性が高く、かつ割安な銘柄に投資するため、キャピタルゲインに加えて「インカムゲイン(資産の保有を通じて得られる利益)」を狙えることが特徴と言えます。例えば、100万円分の株式を保有し配当利回りが5%の場合、年間で得られるインカムゲインは5万円です。

2-3.両者の使い分け

グロース投資とバリュー投資を使い分けるには、先述した投資対象となる企業の違いや利益の出し方の違いを押さえておくことが重要です。その上でグロース投資とバリュー投資を使い分けるには、自身の運用の目的を明確にしましょう。

成長企業へ投資するグロース投資は、キャピタルゲインを通じて大きなリターンを得たい投資家に適しているでしょう。ただし、株価下落のリスクも高めなため、詳細な企業分析を行い、成長率を見極めることが必須と言えます。

一方で割安株への投資であるバリュー投資に向いているのは、リスクを抑えつつ堅実にリターンを得たい投資家です。

続いては、グロース投資のメリットを詳しくご紹介します。

3.グロース投資のメリット

グロース投資にはいくつかのメリットがありますが、代表的な「大きなリターンが期待できる」「長期投資・短期投資の両方に適している」の2つについて解説します。

3-1.大きなリターンが期待できる

冒頭でも簡単に触れたように、グロース投資のメリットとして「大きなリターンが期待できる」点が挙げられます。グロース投資の対象となるのは、平均的なリターン率を上回り、急速に業績を伸ばすセクター・企業の銘柄です。

一方でボラティリティが大きいため、悪材料が表れれば瞬く間に急落するケースもあります。つまりグロース投資は株式投資の中でも、特に「ハイリスク・ハイリターン」な手法と言えるでしょう。

実際、代表的なグロース株のAppleは、iPhoneが販売された2007年6月の株価は4.5ドルほどだったにもかかわらず、2023年5月時点では170ドルを超えており、約15年で38倍以上の上昇を遂げました。

3-2.長期投資・短期投資の両方に適している

また、グロース投資は長期投資・短期投資の両方に適している点もメリットです。

成長株は長期的に見て株価が上昇する点が特徴です。その間ロングポジションを保有していれば、株価上昇に伴い含み益が増えていきます。

一方で、ボラティリティが高いとはいえ、値動きは仮想通貨より安定しています。そのため、1日に何度もチャートをチェックする必要性は高くありません。高いリターンを狙いたいが、値動きに一喜一憂したくない方は、グロース株を長期投資の一環としてポートフォリオに取り入れてみるのも良いでしょう。

また、グロース投資は短期投資にも向いています。

その理由は、短期間で急激に株価が上昇するケースがあるため。グロース株は、業績の追い風となる内容の発表が行われた場合や、決算にて純利益の増加が判明した場合などは、株価が瞬間的に上昇する可能性を秘めています。短期トレードで利益を得たい投資家にとっても、グロース株は選択肢の一つとなり得るでしょう。

4.グロース投資のデメリット

ここまでにグロース投資のメリットを解説しましたが「インカムゲインが少ない傾向にある」「株価が割高なことが多い」などのデメリットもあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

4-1.インカムゲインが少ない傾向にある

グロース投資は、配当などのインカムゲインが少ない傾向にあります。これは、成長企業は利益を株主に還元するよりも、設備投資や新規事業への投資・事業拡大の資金とする傾向があるためです。

その結果、グロース投資での利益獲得の仕方は株価上昇によるキャピタルゲインがメインとなり、インカムゲインによる利益はあまり期待できません。そのため継続的に安定したインカムゲインを得たい投資家は、高配当なバリュー株への投資を検討すると良いでしょう。

4-2.株価が割高なことが多い

グロース株は投資家からの期待が株価に反映されている分、相対的に株価が割高なケースが多くあります。

ここで、株価が割安・割高かを測る指標としては「PBR(株価純資産倍率)」や「PER(株価収益率)」などが主流です。PBRは「1株あたり純資産の何倍の株価か」、PER「1株あたり純利益の何倍の株価か」を計算することで、株価の適正性を測ります。

グロース株の場合、一般的に以上の指標に基づいて計算した際、市場平均より高い数値が算出される傾向にあることに留意しましょう。

グロース株は割高になることが多くリスクもあることを踏まえた上で、企業の財務状況を確認するほか、分散して投資することが大切です。

5.成長株の見極め方、グロース投資で注目すべき3つの指標

グロース投資では成長株を見極めることが重要です。成長株を見極めるには以下の4つの指標を確認しましょう。

  • ROE(株主資本利益率)
  • EPS(1株あたり純利益)
  • 売上高成長率
  • 時価総額

それぞれの指標を詳しく解説します。

5-1.ROE(株主資本利益率)

ROE(株主資本利益率)は「当期純利益÷自己資本×100」で算出される指標で、企業が自己資本を基にどれほど利益を出しているかを把握できます。例えば株式発行により得られた自己資本が5,000万円で、得られた当期純利益が1,000万円ならROEは20%です。

ROEが高ければ、自己資本をうまく活用して利益を出していると判断できます。ROE10〜15%以上をグロース株かどうかの基準とするといいでしょう。

ただし、企業が事業資金とするのは自己資本だけでなく借入金の場合もあるため、あくまでも参考程度にしながら同業種と比較したり、負債も考慮したりすることが重要です。

5-2.EPS(1株あたり純利益)

EPS(1株あたり純利益)は「当期純利益÷発行済株式総数」で割り出すことができ、1株あたりどのくらいの利益が出ているかを表す指標です。

EPSが高ければ企業の利益が多いため、余剰資金を積極的に新規事業や事業拡大に投資できます。EPSで企業の今後の成長率も推し量ることができるため、成長株を見極めるには重要な指標です。

5-3.売上高成長率

グロース株かどうかを判断する際、売上高成長率も重要な指標となります。売上高成長率は「(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100」により算出されます。

グロース株の場合、売り上げが過去数年と比較して伸びているケースが大半なので、売上高成長率に着目してみましょう。売上高成長率を同業種と比較することで、どの程度企業が成長しているかを把握できます。

5-4.時価総額

時価総額もグロース株かどうかを判断できる指標となります。時価総額が大きな企業というのはほとんどが大企業で、株価が数倍になることはあまり期待できません。

一方で時価総額が大きくない企業の場合は、今後の成長率に期待できることも多く株価が2倍、3倍、なかには10倍以上になるケースもあります。

ただしグロース株でも、テスラやメルカリのように時価総額が大きい企業もあるため、あくまでもグロース株かどうかを判断できる一つの指標として捉えておくのがいいでしょう。ROEやEPS、売上高成長率と組み合わせて考察することが重要です。

6. グロース投資に最適、代表的な成長株の例

ここまで、グロース投資のメリットや成長株を見出すために重要となる指標を見てきました。ここからは2023年2月下旬時点でグロース投資に最適と考えられる代表的な成長株の例を国内・国外ともに紹介します。

6-1.国内の成長株

国内の成長株である「メルカリ」「東京エレクトロン」「サイバーセキュリティクラウド」の3つを見ていきましょう。

6-1-1.メルカリ

日本ではおなじみのフリマアプリ「メルカリ」は成長株として注目を集めています。フリマアプリのほかにもスマホ決済サービスの「メルペイ」、暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの「メルコイン」の運営など、幅広い事業を手掛けている企業です。

コロナ以前の株価と比べると2021年は約4倍になっていますが、2022年前半から急激に株価が低下しています。

しかし新規事業に取り組むスピードの速さや海外進出していること、2022年後半からは回復傾向が見られることも考えると、今後の成長に期待できる銘柄です。

6-1-2.東京エレクトロン

東京エレクトロンは、半導体製造装置やFPD(フラットパネルディスプレイ)の開発・製造を手掛ける企業です。半導体製造部門で世界シェア3位になるなど、半導体需要が高まる昨今注目を集めています。

2022年3月時点でのROEは36.86%、売上高成長率は43.2%と大きく業績を伸ばしています。

スマートフォンやパソコンなどの電子機器への需要は尽きないので、半導体製造を中心に事業を展開する東京エレクトロンは今後も成長が期待できるでしょう。

6-1-3.サイバーセキュリティクラウド

サイバーセキュリティクラウドは、AI開発やサイバーセキュリティサービスを展開する企業です。

2022年12月期のROEは27.43%、売上高成長率は2021年12月期が約52%、2022年12月期が約43%といずれも高い水準にあると判断できます。

リモートワークやDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進される昨今、サイバーセキュリティの重要性は増しています。世界有数のサイバー脅威インテリジェンスとAI技術を活用しているサイバーセキュリティクラウドの今後の成長には期待大です。

6-2.国外の成長株

国外の成長株である「Tesla(テスラ)」「NVIDIA(エヌビディア)」「Raytheon Technologies(レイセオン・テクノロジーズ)」の3つを解説します。

6-2-1.Tesla

Teslaは、アメリカのカリフォルニア州に本社を置く、電気自動車や関連製品の開発・販売を行う電気自動車(EV)メーカーです。仮想通貨市場において大きな影響力を持つイーロン・マスク氏がCEOを勤め、また同社が資産として多額のビットコインを保有しているため、仮想通貨投資家にとっても馴染み深い企業として知られています。

株価動向としては、2023年4月に同年第一四半期において24%の減益を記録したことを発表し、一時160ドル程度まで下落。しかし、その後に持ち直して2023年6月上旬時点では230ドル付近を推移しています。

6-2-2.NVIDIA

NVIDIAは、アメリカのカリフォルニア州に拠点を置く半導体メーカーです。ビジュアルコンピューティングの先駆者として、20年以上にわたりゲーミングやデータセンターなどの業種における半導体市場をけん引してきました。人口知能アルゴリズムの訓練にも使われるスーパーコンピューターの多くはNVIDIAのチップを使用しており、近年では自動運転システムの開発も手掛けています。

株価は2021年末から2022年後半まで下落トレンドが続き、一時は100ドル近くまで下落しました。しかし、その後大きく持ち直し、2023年6月上旬時点では400ドル付近を推移しています。

既に業界トップクラスのシェアを誇る企業でありながら、将来的にも人工知能や自動運転技術の普及に伴い、さらなる成長が期待できるでしょう。

6-2-3.Raytheon Technologies(レイセオン・テクノロジーズ)

Raytheon Technologiesは、アメリカ・バージニア州に本社がある航空宇宙事業・防衛事業を展開する企業です。「航空部品」「航空エンジン」「ソフトウェア・サイバー」「防衛」の4つの部門で構成されています。

2022年11月には、米国防総省がウクライナへの軍事支援のためにレイセオン・テクノロジーズにミサイル6基(12億ドル相当)を発注したと発表されました。

軍事産業はアメリカを支える産業の一つであり、世界情勢が不安定になると需要が上昇する領域です。株価は、今後の地政学的な動向に大きく影響を受けて変動するでしょう。

7. グロース投資で狙う成長株のハイリターン

一口に株式投資と言っても、運用方針により「グロース投資」「バリュー投資」に分けられます。利益を出すために、そして損失を生み出すリスクを下げるためにもそれぞれの違いを押さえておくことは重要です。

グロース投資ならキャピタルゲインにより大きなリターンを得られるほか、長期投資・短期投資の両方に適しています。リスクを許容できる範囲でグロース投資にチャレンジしてみるのもいいでしょう。

成長株を見極める際は、今回紹介したROE(株主資本利益率)やEPS(1株あたり純利益)、売上高成長率、時価総額を参考指標としてみてください。

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