バイバックとは?
暗号資産業界で今、「トークンバイバック」が新たなトレンドとなっています。
バイバック(Buyback)とは、プロジェクトが市場から自社トークンを買い戻す行為です。最近、株式市場でもトヨタや三菱UFJなど日本企業の自社株買いがニュースで取り上げられることが増えていますが、その「自社株買い」に近い概念で、プロジェクトの収益をトークン価値の向上に還元する仕組みです。
株式の自社株買いとの共通点は?
基本的な考え方に類似性があります。どちらも「市場で買い戻して、流通量を減らす」ことで、持っている人の価値を高めることを目指しています。
ねらいは「保有者に利益を還元したい」、方法は「市場で買い戻して流通量を減らす」、効果は「売りたい人より買いたい人が増えて価格が安定する」、そして投資家にとって「良いニュース」になるという期待感。つまり、「利益を出したら、それを使って買い戻す」という本質は同じです。
違うのは「誰が」「どこで」「何を」買い戻すか、という実務的な部分です。
| 観点 | 株式の自社株買い | トークンバイバック |
|---|---|---|
| 買い戻す人 | 会社の経営陣 | プロトコル(自動プログラムなど) |
| 買う場所 | 証券取引所 | 主に分散型取引所(DEX) |
| 何を表すか | 会社の所有権 | サービスを使う権利・投票権 |
| 実行方法 | 取締役会で承認→市場で購入 | プロジェクトごとに異なる(自動購入、定期購入など) |
トークンの場合、ブロックチェーン上で動くため、誰でもリアルタイムで買い戻しを確認できる透明性があり、毎日・毎時間でも自動で実行でき、プログラムが淡々と実行するので恣意性もありません。結論として、トークンバイバックは「株式の自社株買いを仮想通貨の世界に持ち込んだもの」と考えると分かりやすいでしょう。
では、なぜ暗号資産の世界でバイバックがトレンドとなり普及したのか?そして、実際にどのプロジェクトがどれほどの規模で実施しているのでしょうか。
バイバックがトレンドになった理由
CoinGeckoのデータによると、2025年1月から10月15日までの期間で、28の暗号資産プロジェクトによるバイバック総額は約14億ドル(約2100億円)に達しています。
この流れを牽引したのがハイパーリキッド(Hyperliquid)で、6.4億ドル超のバイバックを実施し、全体の40%以上を占めています。
トークン市場の構造的課題とハイパーリキッドのバイバックモデル
ハイパーリキッドのバイバックが注目を集めた背景には、トークン市場の構造的な課題があります。一般的に、多くのトークンは上場時の初期供給量が総供給量の10%〜20%程度で、その後段階的にアンロックが続きます。供給量の増加により需給バランスが崩れ、長期的には価格が下落トレンドを辿りやすい傾向があります。

HYPEのバイバックデータ(出典:asxn)
ハイパーリキッドは、圧倒的な収益力とその大部分をバイバックに充当する仕組みで、この構造的課題に対抗しました。収益蓄積開始から1年未満で7億ドル以上の収益を達成し、その大部分を毎日継続的にバイバックすることで、6.4億ドル以上の買い圧を生み出しました。HYPEトークンは上場時の約3ドルから2025年9月には最高値58.5ドルへと高いパフォーマンスを記録し、バイバックがその要因の一つとして寄与しています。
このモデルでは、プロダクトが成長すれば収益が増え、バイバックも増加し、トークン価値が向上するという明確な循環が機能します。プロジェクト自身が買い圧を生み出すことで、需給バランスの改善を図る仕組みとなっています。
業界全体への波及
新興プロジェクトだけでなく、大手レンディングのAaveやオラクルプラットフォームのチェーンリンクなど老舗DeFiもバイバックを導入し始めており、バイバックは業界全体のトレンドとなっています。
こうした流れから、プロジェクトの「収益力」と「バイバック構造」に着目し、長期的な価値上昇を期待する投資判断も見られるようになっており、投資先を選ぶ際の新たな視点として注目されています。
2025年バイバック銘柄6選
実際にどのプロジェクトがどれくらいの量のバイバックを実施しているのか、CoinGeckoが公表しているデータをベースに、オンチェーンデータやDuneなどの分析ツールも参照しながら、2025年のバイバック額の多い6銘柄を紹介します。

出典:CoinGecko
2025年バイバック銘柄6選
1. ハイパーリキッド(HYPE)

過去1年間の米ドル建てチャート
出典:TradingView
- バイバック額:約6.4億ドル(2025年1月~10月15日)
- 現在価格:約39ドル(約6100円)
- 時価総額:約130億ドル
- 時価総額ランキング:11位
- 過去最高値:約58.5ドル(2025年9月) *2025年11月20日時点、データ元:コインマーケットキャップ、CoinGecko、ASXN
ハイパーリキッドは、永久先物取引中心の分散型取引所です。1日の取引量は100億ドル、手数料収益は300万ドルを超える日もあります。
その手数料収益の大部分をバイバックに充当し、買い戻したHYPEは「Assistance Fund」と呼ばれる専用ウォレットに送られ、オンチェーン上で確認可能です。データサイトASXNによると、1日あたり平均250万ドルのバイバックが行われています。取引量増加に伴いバイバック額も増える仕組みで、2025年のバイバック総額は全プロジェクト中1位を誇ります。
関連:ハイパーリキッドの将来性・HYPEの買い方|注意点まで徹底解説
関連:ハイパーリキッド(HYPE)の使い方・エアドロップ戦略を徹底解説
2. パンプファン(PUMP)

出典:TradingView
- バイバック額:約1.8億ドル(2025年1月~11月25日)
- 現在価格:約0.0027ドル(約0.42円)
- 時価総額:約9.5億ドル
- 時価総額ランキング:65位
- 過去最高値:約0.0086ドル(2025年9月) 2025年11月25日時点、データ元:コインマーケットキャップ、公式データ
パンプファン(PumpFun)は、ソラナ上に構築されている誰でも数分で独自のミームコインを発行できるプラットフォームです。
パンプファンは、プラットフォーム上でのミームコイン取引から得られる手数料収益の95%〜100%、つまりほぼ全額をバイバックに充当しています。ミームコインの流行により取引量は変動しますが、1日あたり100万ドル以上をバイバックに当てている日が多く、11月25日までに累計1.8億ドルのバイバックを実施しています。
関連:Pump.fun(パンプファン)とは?買い方・使い方・将来性を解説|ミームコイン発行市場
3. レイヤーゼロ(ZRO)

出典:TradingView
レイヤーゼロ(LayerZero)は、異なるチェーンをまたぐ送金やメッセージ伝達を行うクロスチェーンのインフラ基盤です。
レイヤーゼロは約9500万ドル相当(総供給量の約5%)のZROトークンを初期投資家から買い戻しを実施。さらにLayerZero技術を活用したブリッジサービスStargateを買収し、その手数料収入を活用したバイバック&バーン戦略を開始。最初の6ヶ月間は手数料の50%、その後は100%をバイバックとバーン(焼却)に充当予定です。さらに11月には追加で1000万ドル相当の市場買い戻しも実施しており、積極的なバイバック戦略を展開しています。
バーン(焼却)とは?
買い戻した上で、さらにバーンすることで供給量そのものを恒久的に減らし、
より強い希少性と長期的な価値向上を生みやすいモデルです。
4. レイディウム(RAY)

出典:TradingView
- バイバック額:約1.02億ドル(2025年1月~11月25日)
- 現在価格:約1.08ドル(約168円)
- 時価総額:約2.9億ドル
- 時価総額ランキング:137位
- 過去最高値:約15ドル(2021年9月) 2025年11月25日時点、データ元:コインマーケットキャップ、公式データ
レイディウム(Raydium)は、ソラナ上で動作する分散型取引所(DEX)です。
レイディウムでは、プラットフォーム上でのスワップ取引から発生する手数料のうち12%が自動的にRAYトークンのバイバックに充当されます。
2025年1月には、トランプ元大統領のミームコインがソラナ上で流行したことで取引量が急増し、1ヶ月で5500万ドルをRAYの買い戻しに割り当てるなど、大規模なバイバックが行われました。11月25日までに累計約1.02億ドルのバイバックを実施しています。
5. ジュピター(JUP)

出典:TradingView
- バイバック額:約1億ドル(2025年1月~11月25日)
- 現在価格:約0.25ドル(約38円)
- 時価総額:約7.6億ドル
- 時価総額ランキング:74位
- 過去最高値:約1.75ドル(2024年4月) 2025年11月25日時点、データ元:コインマーケットキャップ、CoinGecko、Dune
ジュピター(Jupiter)は、ソラナチェーン上の最適な取引ルートを自動で見つけ出し、効率的なトークン取引を実現するアグリゲータープラットフォームです。そのほかにも永久先物やレンディングマーケットなども展開しています。
DefiLlamaによると、ジュピターは取引手数料などで毎月2000万ドル前後の収益を上げています。2025年2月からバイバックを開始し、収益の50%をトークンのバイバックに充当。これまでに約1億ドル近いバイバックを実施しています。最近ではフォーラムで、買い戻したトークンの用途についての議論がなされており、バイバックしたトークンの用途にも注目されます。
関連:Jupiter(ジュピター)の使い方│ソラナで最大級のDEXアグリゲーターの機能を解説
6. スカイ(SKY)

出典:TradingView
- バイバック額:約8700万ドル(2025年1月~11月25日)
- 現在価格:約0.043ドル(約6.74円)
- 時価総額:約9.9億ドル
- 時価総額ランキング:66位
- 過去最高値:約0.096ドル(2025年7月) 2025年11月25日時点、データ元:コインマーケットキャップ、公式データ
スカイ(SKY)は、独自ステーブルコインUSDSを預けて利息を得ることが可能なDeFiプロトコルです。
DefiLlamaのデータによるとTVL(預かり総資産)は60億ドルを超え、毎月1000万ドル以上の収益を上げています。この収益を活用したバイバックを毎日実施。2025年11月現在、毎日約27万ドルの買い戻しを継続的に行っており、11月までに累計約8700万ドルのバイバックを実施しています。
SKYを取得したい方に
関連:スカイ(SKY)の買い方・将来性、ステーブルコインUSDSの特徴をわかりやすく
投資リスクと注意点
バイバックはトークン価値を支える有効な仕組みですが、バイバックに着目した投資判断の際には、以下の点に注意が必要です。
バイバックの継続性:
バイバックの原資がどこから来ているのかを確認しましょう。手数料収入などによる継続的な収益源がある場合は安定したバイバックが期待できますが、プロダクトの収益が減少すればバイバック額も減少し、トークン価格の下落につながる可能性があります。
また、トークンの大部分がまだロックされている場合、今後のアンロックが進むにつれて売り圧が増加します。継続的なバイバックを行っていた場合でも大規模なアンロックにより、需給バランスが崩れる可能性もあります。
トークンのアンロックスケジュールの確認:

出典:CoinMarketCap
トークンのアンロックスケジュールは、CoinMarketCapで簡単に確認できます。例えば上記のレイヤーゼロの例のように、対象のトークンをCoinMarketCapで検索し、ページ右上に表示される「Token Unlocks」をタップすると、いつ・どれくらいのトークンが市場に追加されるのかを詳細にチェックすることが可能です。
市場全体の影響:
仮想通貨市場全体が下落局面にある場合、バイバックを継続的に行っていても、トークン価格は下落の影響を受ける場合が多いです。バイバックはあくまでトークンの需給改善の一要素であり、市場全体のトレンドに大きく影響を受けることを理解する必要があります。
バイバック後のトークンの用途:
バイバックしたトークンがどう扱われるかも重要です。バーン(焼却)される場合は総供給量が永久的に減少しますが、トレジャリーとして保管している場合が多いです。バイバックしたトークンの用途について明確に言及していないプロジェクトも多く、将来的に再度市場に出回る利用をした場合(例えば、プロダクトを利用するユーザーへのエアドロに使うなど)、売り圧となる可能性もあります。
税金について:
仮想通貨の売買によって得た利益は課税対象となります。日本では原則として「雑所得」として扱われ、金額によっては確定申告と納税義務が発生します。取引履歴を正確に記録しておきましょう。
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