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米国株連動トークンを担保に使えるperp DEX「Nado」の仕組み

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

Nado|米国株価格連動トークン(xStocks)を担保に使えるperp DEX

ビットコインとイーサリアムを同時に取引したい。でも資金を50万ずつに分けると、どちらかが急落したとき、もう一方の余剰資金をすぐに使えない。そんな経験をしたトレーダーは少なくないはずです。多くの取引所では銘柄ごとに資金を分けて管理する仕組みになっており、一方に余裕ができても、もう一方の強制清算(ロスカット)を止めるためにすぐ動かせない問題が生じます。

この「資金の分断」を解消する設計として登場したのが「Nado(ナド)」です。Krakenの出身メンバーを含むチームが開発し、KrakenのEthereum Layer 2「Ink」上で稼働する無期限先物DEXで、すべてのポジションを一つの残高でまとめて管理できる設計に加え、米国株の価格に連動するトークン(xStocks)を担保として使える世界初のperp DEXと同社はしています。本記事はNado提供資料にもとづき、そのサービスの仕組みを解説します。

無期限先物(perp)とは

無期限先物(Perpetual Futures、通称perp)は、満期日を持たない先物契約です。一般的な先物取引は「〇月〇日に決済する」という期限がありますが、perpにはその制約がありません。

上昇を見込む場合は買いポジション(ロング)、下落を見込む場合は売りポジション(ショート)を取ることで、資産を実際に購入・保有せずに価格変動から損益が発生します。24時間365日取引できるため、株式市場の取引時間に縛られない形でさまざまな資産の値上がり・値下がりから損益を得られます。DeFi・CeFiを問わず現在最も取引量が大きい金融商品のひとつです。

ファンディングレートとは perpには「ファンディングレート」という精算コストが定期的に発生します。価格が現物より上にずれているときはロング保有者がショート保有者に支払い、逆のときは逆方向に支払うことで現物価格とのズレを修正する仕組みです。保有コストとして事前に把握しておく必要があります。

perpの仕組みを押さえたところで、次の問題に移ります。複数のperpポジションを同時に持とうとすると、今度は「資金の管理」が壁になります。

資金を分けずに使う「統合マージン」という設計

サイロ型と統合マージン型の資金管理の違い|Nado

冒頭で触れた「資金の分断」問題を技術的に整理すると、従来のperp DEXがとっていた「サイロ型」の設計に行き着きます。サイロ型では取引ペアごとに独立した証拠金口座を持つため、ビットコインとイーサリアムを同時に取引するには資金をそれぞれに割り当てる必要がありました。資金が分断されるため同じ資金で取れるポジションサイズが実質的に小さくなり、一方に余剰があってももう一方の清算を止めるために使えないという問題が生まれます。

これに対して「統合マージン(ポートフォリオ証拠金)」型は、現物残高・証拠金・perpポジションのリスクを単一のアカウントで一括計算します。複数ポジション間でリスクが相殺されるため、同じポジションサイズを保つのに必要な資金量が減少し、清算リスクが下がります。

Nadoはこの統合マージン設計を採用しており、さらに担保として使える資産の種類を大きく広げています。その目玉が、次に紹介するxStocksです。

xStocks:米国株をそのまま担保に使える仕組み

Nadoが最も押し出す機能が「xStocks」です。テスラ・エヌビディア・アップルなど米国株の値動きに連動するトークンで、これを仮想通貨・株式・FXなど幅広い資産の無期限先物取引の担保として使える、と同社は説明しています。株式そのものではなく、あくまで価格の動きに乗れるデリバティブ(金融派生商品)です。

たとえば「テスラのxStocksを担保に入れたまま、BTCの無期限先物ポジションを取る」という運用が可能になります。米国株式市場は日本時間の深夜や週末に閉場していますが、xStocksは24時間365日取引できるため、時間外でも米国株の値動きへの投資ポジションを維持できます。

なぜ他のDEXにできなかったのか

株価連動トークンをperp担保として使えるようにするには、二つの技術的なハードルがあります。一つは「株価の取得方法」の設計です。株価は市場の取引時間内にしか更新されないため、24時間動くperp取引と組み合わせるには工夫が必要です。

もう一つは「清算ロジック」です。担保の価値が株価に連動して変動するため、仮想通貨だけを担保としていたときより清算の判定が複雑になります。Nadoはこれらの問題を、Inkチェーン上で価格取得と清算判定を一体処理することで解決した、と説明しています。

xStocksの使い方フロー|従来のDEX vs Nado

具体的な使い方で考えると、イメージしやすいかもしれません。たとえばテスラのxStocksを持っているとします。従来のDEXでは、BTCのポジションを取るためにまず株価連動トークンを売却し、USDCなどに換えてから入金し直す必要がありました。

Nadoでは、テスラのxStocksを売らずにそのまま担保として入れ、BTCの無期限先物ポジションを取ることができます。テスラの値上がり益を手放さずに、BTC相場にも同時にポジションを持てる、というわけです。

  • 担保として利用できる xStocksをperp取引の証拠金として入れたまま取引できます。売却してから証拠金に換える手間が不要です。
  • 24時間365日取引できる 米国株式市場の取引時間外(日本時間の夜間・週末)でも、xStocksは取引・保有が可能です。ただし市場閉場中はオラクル(外部の価格情報源)ベースの価格指標が参照されるため、株価との連動は取引時間中より緩やかになります。
  • 仮想通貨・RWAとまたがった統合管理 BTCやETHなどの仮想通貨と、xStocksを同じポートフォリオ証拠金口座で一元管理できます。
xStocksに関する重要事項
xStocksトークンは株主権・議決権・配当請求権を付与するものではありません。あくまで値動きの損益のみを得られるデリバティブ(金融派生商品)です。実際の株式とは異なる金融商品である点に留意が必要です。

Nadoの主な特徴

統合マージンとxStocksに加え、Nadoには以下の特徴があります。

預け入れ資金の自動利回り
アクティブに取引していないときでも、預け入れ資金はMoney Market(資金を自動で貸し出す仕組み)を通じて利回りを生み出します。追加の操作は不要ですが、利回りは市場環境によって変動し、保証されるものではありません。
NLPボールト(取引手数料の分配)
NLPボールト(流動性提供口座)は、自分では取引しないユーザーがUSDT0(USDに連動するステーブルコイン)を預けておける仕組みです。預けた資金は他ユーザーの取引の相手方として機能し、取引のたびに発生する手数料の一部が分配されます。受け取れる収益は取引量によって変動し、利回りは保証されません。
高速処理と自己管理の両立
注文は専用の処理システムで5〜15ミリ秒でマッチングされると同社は述べています。大手中央集権型取引所に近い速度でありながら、資産はブロックチェーン上の自動プログラム(スマートコントラクト)に保管されるため、原則としてNadoが資産にアクセス・凍結することはできない設計です。

主要perp DEXとの比較(先方提供情報にもとづく)

先方の資料では、現在市場シェアを持つ主要なperp DEXとの比較を以下のように整理しています。なお本表はNado提供資料にもとづく比較情報であり、CoinPostが独立に検証したものではありません。

比較項目 主要perp DEX(参考) Nado
xStocks(米国株デリバティブ) 非対応 対応(業界初・同社)
ポートフォリオ証拠金(統合マージン) 市場ごとに独立した証拠金管理 現物・証拠金・perp一元管理
遊休資金の自動利回り 自動運用なし 自動バックグラウンド運用
注文実行速度 高速(DEX水準) 5〜15ms(大手中央集権型取引所に近い水準)
資産の管理方法 自己管理(運営者が預からない) 自己管理(ブロックチェーン上で自動管理)

※ 比較はNado提供資料にもとづく概念的な整理です。競合各社の実際の証拠金設計はより複雑であり、本表は差異を簡略化したものです。最新仕様は各サービスの公式ドキュメントをご参照ください。

速さと安全性を両立する仕組み

Nadoは「速度が求められる処理」と「改ざん不能であることが求められる処理」をレイヤーで分離しています。この設計により、中央集権型取引所並みの注文速度を実現しながら、資産管理はブロックチェーン上に置いて特定の誰かが勝手に操作できない仕組みにする、という両立が可能になっています。

オフチェーン
注文マッチング
オフチェーンシーケンサー(注文のマッチングをブロックチェーン外で処理することで遅延を削減する仕組み)が5〜15ミリ秒で注文を処理します。大手中央集権型取引所に近い応答速度を実現していると同社は説明しています。
オンチェーン(Ink)
リスクエンジン・決済・資産管理
証拠金計算・清算・資産保管はInkブロックチェーン上で処理されます。処理がオンチェーンで透明化されているため、特定の誰かが勝手に操作できない構造です。

UI/UXと対応環境

Nado取引画面|BTCチャート
出典:Nado

インターフェースは既存の中央集権型取引所のユーザーに親しみやすい設計を採用しており、TradingViewチャートをネイティブ統合しています。全ポジション(現物・証拠金・perp)を単一ダッシュボードで管理でき、メールアドレスでのサインインも可能です。現在はブラウザとデスクトップアプリに対応しており、モバイルアプリは開発中としています。

運営体制と背景

Nadoを提供するのはSpira Arc Inc.です。開発にはKrakenの出身メンバーを含むチームが携わっており、KrakenがバックアップするInk Foundationの支援を受けて立ち上がりました。KrakenはNadoの直接の運営者ではありませんが、開発チームの出身母体であり、NadoはKrakenのEthereum Layer 2「Ink」上で稼働しています。

技術基盤にはVertexの取引スタックを採用しています。同社資料によると、2025年にInk Foundationとの統合を経てInkエコシステムに移行したVertexは別のブロックチェーン(Arbitrum)上での累計取引量が1,350億ドルを超え、これはDeFiの無期限先物取引所として長期間にわたり稼働し続けてきた規模感を示す数字です。2年以上にわたりセキュリティインシデントの記録がないとしています。

セキュリティの特徴

自己管理型(非カストディアル)
ユーザー資産はNadoではなくブロックチェーン上の自動プログラム(スマートコントラクト)に保管されるため、原則として運営者が直接資産を操作できない設計です。ただしスマートコントラクトのバグや設計上の権限設定によっては、完全に介入不能とは言い切れない場合もあります。
オンチェーンのリスクエンジン
清算・証拠金健全性の計算はブロックチェーン上で透明に処理されます。サーバー側のブラックボックスで行われるものではありません。
MEV対策
MEV(Maximal Extractable Value)とは、ブロックチェーン上でトランザクションの処理順序を操作することで不当な利益を得る行為です。Nadoでは注文をまとめてからブロックチェーンに送信することで、こうした「先回り取引」を行う自動プログラムによって不利な価格で約定させられるリスクを軽減します。
実績あるコードベース
Vertexの取引スタック上に構築されています。同社資料によると、別のブロックチェーン上で2年以上セキュリティインシデントなしに稼働した実績を持つとしています。

2026〜2027年の展望

直近はxStocksの取扱い銘柄の追加と、日本・韓国・東南アジアのユーザーへの利便性向上を優先課題としています。中期的にはブロックチェーン上の総合金融プラットフォームとして、取引・貸出・不動産や債券などの現実資産(RWA)への投資機会をひとつのサービスにまとめる方針を掲げています。

免責事項・リスク開示

日本の規制状況:Nadoは現時点で日本の金融庁への暗号資産交換業・金融商品取引業の登録を受けていません。本記事はサービスの仕組みを解説する報道目的のコンテンツであり、日本居住者に対する利用推奨・勧誘を意図するものではありません。

無期限先物取引のリスク:perpはレバレッジを伴う高リスクな金融商品です。投資元本を超える損失が発生する可能性があります。ファンディングレートコストが継続して発生し、急激な価格変動時には強制清算が生じることがあります。

xStocksのリスク:xStocksは株主権・議決権・配当請求権を一切付与しないトークン化デリバティブ(ブロックチェーン上の金融派生商品)です。実際の株式への投資とは法的・経済的に異なります。

スマートコントラクトリスク:スマートコントラクト(自動プログラム)のバグやエクスプロイトにより資産が失われるリスクがあります。

本記事は情報提供を目的とするものであり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任と判断において行ってください。

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