- 盗難品・有価証券・現金の受領の罪で起訴
- ChatGPTに資金の使い道で相談も
1.5億円相当を押収
FBI捜査官パトリック・スティーブン・ヤローチ氏は7月29日、FBIのシステムで入手した情報を利用して敵対的な国のものとされる暗号資産(仮想通貨)ウォレットから複数回にわたり資金を盗んだことを自白した。複数メディアが報じた。
ヤローチ氏は、ボストンの国家安全保障捜査班に勤務していた際、最高機密情報へのアクセス権限を与えられ、米国が敵対国とみなす国の人物を捜査していた。しかし、当局がその捜査対象者による仮想通貨利用を阻止できないことに苛立ちを覚えていたと供述している。
その後ヤローチ氏は2024年末から2025年初めに、FBIのシステムを用いて敵対国関連の仮想通貨ウォレットの鍵(シードフレーズ)を入手し、そこから自分のウォレットへ資金を移動させ始めた。なお、NBCニュースは関係筋の情報として敵対的国家とはロシアだったと伝えている。
送金は約10〜12回に渡って行われた。合計額は、他の個人資産と混ざっており本人も正確な額を把握していないが、100万ドル(約1.6億円)未満と認識しているという。ヤローチ氏は、こうしたことを良心の呵責から自発的に同僚に報告したとされる。
残高はクラーケンの口座やSui(スイ)ブロックチェーン上のレンディングプロトコル「Suilend」などに分散しており、FBIが最終的に押収し米政府管理ウォレットへ移転した額は約925,426ドル(約1.5億円)となった。
FBIによると、ヤローチ氏は盗んだ資金を一度も使用しなかったと述べている。一方で、ヤローチ氏は生成AIのChatGPTに対して、100万ドルを使って他国で人生をやり直す方法を繰り返し尋ねていた。
ChatGPTは、リタイア後の移住先としてポルトガルを推奨していたとされる。FBIによると、ヤローチ氏とその妻子が9月にポルトガルへ渡航するための航空券が予約されており、同国での納税者番号取得を指示する内容を含む、ポルトガルの弁護士2名への委任状も存在した。
FBIの対処
ヤローチ氏は7月31日、FBIを解雇され逮捕されている。また、盗難品・有価証券・現金の州間輸送、および盗難品・有価証券・現金の受領の罪で起訴された。
FBIの広報担当者は次のようにコメントしている。
当該人物はその後、当局を解雇された。我々は職員に対し最高水準の倫理規範を求めており、FBIにおいてこのような行為は容認されない。現在、事態を受けて徹底的な調査を行っているが、進行中の案件であるため、これ以上のコメントは控える。
FBIは2022年に仮想資産専門ユニットを設立するなど、仮想通貨関連の捜査能力を強化しているところだ。ブロックチェーン分析、仮想通貨押収トレーニングなども実施している。一方で今回の事例は内部不正を防ぐ対策の必要性も浮き彫りにした。
関連記事:仮想通貨犯罪で年間1.8兆円の被害 AI詐欺の現状も=FBI統計
FBIの2025年インターネット犯罪レポートによると、米国で仮想通貨関連犯罪の被害額が1.8兆円に到達した。AI生成の偽動画・音声を悪用した投資詐欺も報告されている。
機密情報を利用した最近の不正行為の事例としては、現役の米陸軍兵士が予測市場「ポリマーケット」でインサイダー取引を行ったことがある。
この兵士は、ベネズエラのニコラス・マドゥロ前大統領の拘束を目的とした作戦の情報を悪用し、予測市場で2026年1月末までのマドゥロ氏退陣を問う賭けに参加。これにより40万4,000ドル(約6,400万円)を超える利益を得ていた。
関連記事:ベネズエラ大統領拘束作戦に関係するインサイダー取引、CFTCが米兵提訴 予測市場で不当利益
米商品先物取引委員会(CFTC)は23日、機密情報を悪用して予測市場「ポリマーケット」でインサイダー取引を行ったとして、現役の米陸軍兵士を提訴した。ベネズエラ大統領の拘束作戦に関する非公開情報を利用し、40万ドル以上の利益を得た疑いが持たれている。



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