WebX完全ガイド
TOP 新着一覧 取引所 WebX
CoinPostで今最も読まれています

Rapid7、88万件超の電話番号検証から始まる仮想通貨詐欺「Operation ASTERIX」の全容を公開  攻撃ツール開発にAIを活用、偽ウォレットでリカバリーフレーズを窃取

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事のポイント
  • 偽Trezorが本物を強制終了し模倣
  • AIが脱獄プロンプトも生成

入念に設計された多段階攻撃

米サイバーセキュリティ企業Rapid7は17日、暗号資産(仮想通貨)ユーザーを狙った大規模な詐欺キャンペーン「Operation ASTERIX(アステリックス作戦)」の詳細を公開した。

名前の由来は、攻撃側のサーバーから発見されたオープンソースの電話通信プラットフォーム「Asterisk」だ。

Rapid7は偶然、設定ミスによって外部に公開されていたWebディレクトリを発見した。そこには約88万5,000件の電話番号データ、アカウント検証ツール、詳細情報を付加したターゲットデータ、フィッシング用パネル、自動音声発信スクリプト、偽のウォレットアプリ、盗んだデータを外部に送信するコードなどが含まれていた。

攻撃者はAsteriskを利用して音声を使った詐欺(ビッシング/Vishing)インフラを自動化し、フィッシングメールや偽のウォレットアプリと電話による攻撃を連携させていた。加えて、攻撃者はこの詐欺スキームの開発全般にわたり、AIコーディングアシスタントを活用していた。

発見時点で、詐欺インフラの多くが稼働中もしくは開発中であったため、Rapid7は関連プロバイダーや当局に速やかに通知するとともに、スキームで使用されたツールや開発プロセスを記録した。さらに、Appleのセキュリティチームを含む関係組織に調査結果を開示し、対応に向けて連携した。

復元されたファイルから、攻撃者が仮想通貨を実際に利用しているユーザーに対象を絞り、ソーシャルエンジニアリングを仕掛けるように設計された多段階の攻撃計画が判明した。

Operation ASTERIXの最大の特徴は、無作為に電話をかけるのではなく、「仮想通貨を持っている可能性が高い人」だけを精密に狙った点にある。複数の段階を経て仮想通貨ユーザーを選別し、信頼を構築してからリカバリーフレーズを狙う仕組みが作られていた。

攻撃の流れ

出典:Rapid7

攻撃の流れは以下のように整理できる。

  1. 大量の電話番号を収集
  2. アカウント確認ツールで仮想通貨取引所の利用者を特定
  3. 対象者を絞り込み
  4. 偽のサポート案件・認証コードを使ったフィッシング
  5. その情報を利用して電話で接触(ビッシング)
  6. 被害者の信頼を高める
  7. 偽ウォレットアプリをインストールさせる
  8. リカバリーフレーズを入力させて資産を窃取

関連記事:ヒューマニティプロトコル、約57億円流出 フィッシングで秘密鍵窃取と調査報告

生体認証型IDプロジェクトのヒューマニティプロトコルが6月8日に受けた$H流出事案について、セキュリティ企業Quantstampが独立調査の結果を公表。Bithumbを装ったフィッシングメールで役員端末を掌握し秘密鍵を窃取、北朝鮮系の手口と一致すると指摘した。

具体的な手口

攻撃者のサーバーには、地域や入手元ごとに複数のファイルに整理された約88万5,000件の電話番号が保存されていた。最大規模のリストはドイツの携帯番号31万6,002件、次いでポーランドの10万3,000件超のリストがあり、加えて香港やブルガリアのリスト、英国・米国・カナダのフィンテック関連リスト、ハードウェアウォレット「Ledger」関連のリストなどが含まれていた。

攻撃者はCrypto.comやKrakenのアカウント検証ツールを利用し、これらの電話番号が仮想通貨サービスのアカウントと紐付いているかを確認した。特定された電話番号には、氏名やメールアドレス、地理情報などの詳細な個人情報が付加され、、標的への接触に使う「見込み顧客(リード)」のリストへと整理された。

この絞りこみと情報の付加は、詐欺スキームにおいて大変重要な意味を持つ。攻撃者は無作為に電話をかけるのではなく、仮想通貨アカウントの存在を確認したうえで、個人情報まで紐付けた対象者に連絡していた。

攻撃者は次に、Crypto.comやバイナンスなどのサービスを装った偽のサポートメールを送った。メールにはケース番号や認証コードが記載されており、一連のやり取りが正規のサポート対応の一環であるように演出されていた。

その上で、標的の詳細な情報を把握した状態で電話をかけ、先に送ったメールの内容を引用することで、正規のカスタマーサポート担当者であるかのように装い、ユーザーからの信頼を得ようとしていたと考えられる。最終的には偽アプリのインストールや、「アカウントを保護するため」といった名目で、ウォレットのリカバリーフレーズを入力させるよう誘導していた。

精巧な偽ウォレット

Rapid7の調査では、Trezor Suite、Ledger Live、Exodusを装った偽ウォレットアプリがmacOSとWindows向けに確認された。

3つの偽アプリはいずれも仮想通貨ウォレットの認証情報などの窃取を目的としていたが、ユーザーに正規のウォレットソフトを操作していると思わせるため、それぞれ異なる方法で正規アプリを装っていた。

中でも、偽のTrezor Suiteは巧妙に設計されていた。本物のTrezor Suiteの起動を監視し、検知すると強制終了させた上で、自身の偽画面を前面に出す仕組みを備えていた。そのため、ユーザーからは「自分が起動したアプリが開いた」ようにしか見えない。

さらに、「12・18・24語など複数パターンのシードフレーズとパスフレーズの入力を受け付け、一度送信すると偽のエラーを表示して再入力を促す仕組みも確認された。これには、入力されたリカバリーフレーズの正確性を高める狙いがあったとみられる。

関連記事:アップルのApp Storeに偽のレジャーアプリ、950万ドルの盗難被害が発生

アップルのApp Storeに掲載された偽の「Ledger Live」アプリにより、約950万ドルの仮想通貨が盗難被害。ZachXBTによる調査で、50人以上の被害者や大規模なマネーロンダリングの実態が判明。

AIが開発工程に深く組み込まれる

Rapid7が今回の調査で強調しているのは、Operation ASTERIXの手口そのものの新規性ではなく、AIが犯罪インフラの開発工程に深く組み込まれていた実態だ。

AIはコードの作成や修正だけでなく、ビルド時の問題解決、アプリのパッケージ化、マルウェアの難読化、フィッシング基盤の改変など幅広い用途で利用されていた。さらに、Claude Codeが難読化やマルウェアのビルド支援を拒否すると、攻撃者はKimi(moonshot-ai/kimi-k2.7-code)に切り替え、安全対策を回避するための独自の「jailbreak(脱獄)」プロンプトまで作成していたという。

Rapid7は、AIコーディングアシスタントが悪意ある開発環境で広く利用されるようになれば、こうした脱獄の試みも例外的なものではなく、マルウェア開発の通常の工程になる可能性があると予測している。

Google Newsでフォロー
CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
08/20 木曜日
14:33
アーサー・ヘイズ氏、AI経済圏向け新トークンFLOP構想発表
元BitMEX創業者のアーサー・ヘイズ氏が、AIエージェント向け分散型コンピュート網「Flopネットワーク」の構想をブログで発表した。プレセールを行わず自己資金で運営し、テストネット参加者へ供給量の一部を配布する計画を明らかにした。
14:15
Rapid7、88万件超の電話番号検証から始まる仮想通貨詐欺の全容を公開 
米サイバーセキュリティ企業Rapid7が、電話番号88.5万件を悪用した仮想通貨詐欺キャンペーン「Operation ASTERIX」の全容を公開した。ターゲットを精密に絞り、巧妙なフィッシングメールや電話で信頼させ、偽ウォレットアプリでリカバリーフレーズを窃取するスキームが、AIを広範に活用して構築されていた。
13:15
ビットコイン・トレジャリー企業H100、上半期決算 BTC含み損40億円超計上
スウェーデンのビットコイン・トレジャリー企業H100が2026年上半期決算を発表。2社買収でBTC保有量は欧州上場企業2位に浮上した一方、BTC含み損主因で42億円の損失を計上した。
11:23
ビットコイン急伸、仮想通貨関連株も全面高
この記事のポイント ストラテジー等米クリプト株4銘柄が軒並み急伸 1時間で10億ドル超の空売りが強制決済 米クリプト株が軒並み急伸 米国株式市場で19日、ビットコイン(BTC)…
11:15
米投資銀キャンター、予測市場取引サービスを機関投資家に提供へ
投資銀行のキャンター・フィッツジェラルドは、機関投資家の顧客向けに予測市場取引サービスを開始すると発表。まずはカルシに対応後、サービス拡大を予定する。
10:53
ビットコイン6万9000ドル台へ急伸、10カ月ぶり200日移動平均線上抜け 国債買い戻し倍増が起点
暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインが日足で約10カ月ぶりに200日移動平均線を上抜けた。米財務省による国債買い戻し倍増が起点で、約14億ドルのショートが清算された。トランプ大統領の発言も追い風に。
10:30
米国債利回り低下などの条件なければ弱気相場継続の可能性=グラスノード見解
グラスノードが週次仮想通貨市場レポートで、ビットコイン価格を分析。米10年債利回りの低下など複数条件が整うまで反発は一時的なものになるとの見解を示した。
10:15
ガレゴ米上院議員、クラリティー法案の成立に自信示すも倫理条項で膠着
米ガレゴ上院議員は19日にクラリティー法は成立可能と述べたが、トランプ大統領の仮想通貨事業に絡む倫理条項の協議は難航しており、上院は9月15日の手続き投票を予定している。仮想通貨市場の規制明確化を待つ投資家にとって節目となる。
09:54
FalconX、エセナUSDe活用し10億ドル融資枠を組成
FalconXとエセナが特別目的会社を通じ10億ドル規模の担保付き与信枠を組成したと発表した。USDeを裏付ける資産を機関投資家向け信用に振り向け、両社の既存の協業関係をさらに一段と拡大する狙いがある。
09:35
ビットコイン急騰、米国の金利介入が大規模ショート清算を誘発|仮想NISHI
仮想通貨ビットコインは8月20日未明に急騰した。主な背景は、米財務省が超長期国債の買い入れ消却を従来計画の少なくとも2倍に増額する方針を突如発表したことである。
08:45
仮想通貨投資家の3つの誤解、ビットワイズ幹部が指摘
ビットワイズの最高投資責任者は、自身が認識している仮想通貨投資家の3つの誤解を共有。業界の変化の速さと認識が追いつく速さの差にチャンスがあると主張した。
07:55
バイナンス、バンコクでブロックチェーンウィークのアジア版開催予定
バイナンスは、タイ・バンコクで11月に『ブロックチェーンウィーク』のアジア版を開催すると発表した。現地では合法的に仮想通貨を扱うバイナンスTHが運営を支え、投資家はアジア市場での事業展開を注視できる。
07:05
HSBCとスタンダードチャータード、初のトークン化預金取引を実施
HSBCとスタンダードチャータードが、SWIFTのブロックチェーン基盤の台帳を通じてトークン化預金による初の銀行間クロスボーダー取引を実施し、24時間対応の国際決済の実用化に向けた動きが進んでいる。
06:40
グレースケール、ジーキャッシュ現物ETFへ申請 DCGが20万ZEC取得検討
グレースケールが米SECに仮想通貨ジーキャッシュ信託の現物ETF転換を申請した。親会社DCG系列企業が20万ZECのジーキャッシュ取得を検討していることも判明した。
06:15
米OCC長官、新設銀行免許申請の仮想通貨関連比率が約6割に急増
米OCC長官は20日、仮想通貨関連の新設銀行免許申請が全体の6割超に達したことを明らかにし、ジーニアス法に基づくステーブルコイン規則を11月までに最終化する方針を示した。
今から始める仮想通貨特集
通貨データ
重要指標
一覧
新着指標
一覧