「ビットコイン(BTC)はなぜ今、伝統金融の投資対象になり始めたのか。それは価格が上がったからではなく、『資産』としての条件を満たし始めたからだ」
東北証券の前チーフエコノミストである付鵬(フ・ポン)氏は、2025年にWeb3コンプライアンス化の先駆けとして注目を集める香港メインボード上場企業・新火集団(Bitfire Group)に入社し、チーフエコノミストに就任した。
2026年5月の訪日に際し、CoinPostは付鵬氏への独占インタビューの機会を得た。アジアのコンプライアンス準拠型フィンテック領域に深く根ざす新火集団の代表として、ビットコインの「資産化プロセス」、日本市場における長期サイクル、そして伝統的金融と暗号資産の融合トレンドについて語った。
英・レディング大学ISMA/ICMA学院(国際証券投資・銀行学)卒。英レーマン・ブラザーズ投資銀行、ロンドン金融街ソロモン国際投資グループなどを経て、2020年に東北証券首席エコノミストに就任。
2025年4月30日に同職を退任後、香港証券取引所上場の新火集団(旧・火幣テクノロジー)の首席エコノミストに就任。中国中央電視台経済専門コメンテーターを務めた経歴を持ち、抖音(TikTok中国版)フォロワー100万人超。
「資産」の三段階
信仰が先で、資産が後です。これは人類の歴史上どんな資産でも同じです。
第一段階は「布道と信仰」です。宗教のように、まず価値観を広める人が現れます。第二段階は「コンセンサス形成」です。一部の人間が認めるところから、より多くの人間が認めるようになります。第三段階がようやく「真の資産への脱皮」です。
ラフィット(Lafite)の赤ワインもそうです。最初はただの瓶入りのワインに過ぎませんでした。価値の伝承、希少性、歴史の重みといったストーリーが積み重なって初めて、「ロマネ・コンティは良いワインだ、値打ちがある」というコンセンサスが生まれます。コンセンサスのない資産は金融化できません。小さな圏内のコンセンサスでも足りません。
うちの子供が秋葉原や渋谷で買う「推しグッズ」、缶バッジ、アクリルスタンド、ブラインドボックスなどは、あのコミュニティの中では立派な共識が成立しています。SNSで「Bメーカーのこれを持っているが、Cメーカーのものと交換したい」という投稿が飛び交っています。これは本質的に物々交換であり、コンセンサスが自然に価格を形成しています。
だが、真の資産とはまだ遠いです。真の資産は「時間価値」すなわちキャッシュフローを生まなければなりません。
真の資産とは本質的に「無息収益」または「時間価値」を提供できなければなりません。多くの資産は初期段階でそれに近い機能を果たしますが、最終的にはキャッシュフロー収益を生み出せるかどうかが問われます。
資産化の転換点
最初の転換点は、取引所がビットコイン先物を上場した瞬間です。
これは米国の金融監督システムがビットコインに対して行った最初の「法的な位置づけ」です。2017〜18年以前のビットコインは、まだコンセンサスを育て、価値を布道する段階にありました。サトシ・ナカモトが希少性を設計してはいましたが、収益の源泉はボラティリティのみでした。
資本が求めるのはボラティリティではなく、長い旅路とその間に生まれるキャッシュフローです。バフェットの投資を「良い株を買って売らない」と解釈する人は多いですが、それは大きな誤解です。良い株とはコストを薄められるものです。5円で買ったものが10年でコストゼロになれば、その後の価格変動は関係ありません。
ビットコインがこの点で黄金に似ている理由は、黄金レンタル(lease rate)という仕組みにあります。中央銀行の保有する金はそこにありますが、引き渡し証書が融資ツールとして機能し、賃借が生まれます。これがキャッシュフローです。
無期限先物の本質を見れば分かります。個人投資家はボラティリティを取引し、そのためには流動性の供給者が必要になります。大口はビットコインを保有しながら流動性を提供し、ファンディングレート(資金調達コスト)として年率15%前後の収益を受け取ります。
東京の中核エリアの物件とまったく同じ構造です。数百戸しかありません。多く握るほど収租能力が最も強くなります。株式も同じです。最も原始的な株式を握っている者が、配当を受け取り続けます。他の者はデリバティブでボラティリティを取引しますが、あちらが受け取っているのは利息です。
ビットコインは数が限られていて増産できません。だから早期に大量保有した人間は、「賃貸収入」を永続的に受け取り続ける立場になります。あなたたちがデリバティブでボラティリティを追いかけている間、あちらは利子を取り続けています。
ビットコインの転換点はここにあります。初期のストーリーテリング、布道、価値観の形成から、広範な普及、共識の形成、法的承認を経て、最終的に資産クラスへと移行しました。これが我々伝統金融の従事者が今になって突然注目し始めた根本的な理由です。
日本市場の長期サイクル
日本の観察は2012年から始まっています。当時、ソロス・ファンドのCIO(最高投資責任者)(後に米財務長官となるベッセント氏)が香港から東京に移り、ロンドンの老舗ヘッジファンドも安倍政権発足前から東京に入っていました。バフェットも2011年の福島原発事故後に調査に来ています。
なぜか。日本の「失われた30年」が招いた生産関係のミスマッチが、高齢化が一定の閾値を超えたことで転換点を迎えつつあったからです。
2012年の安倍政権による制度改革、いわゆる「三本の矢」が制度面での深度ある改革を行いました。円安、資本流入、資産価格上昇、若年者雇用改善。そしてインフレ圧力、賃金上昇、労働力不足、利上げ、この過程に10年かかっています。
今、AIと半導体が米国から日本に浸透し始め、TSMCの熊本・北海道進出が示すように、新たな生産力が日本の若年世代の成長を加速させています。
為替と資産サイクルについて言えば、日本の第一段階(円安・資産上昇・資本流入・生産関係改善)はほぼ完了しています。第二段階は円の緩やかな上昇と、核心資産の継続的な上昇の並走です。
かつての上海と同じ軌跡です。人民元の先行下落、外資流入、不動産上昇、その後に人民元高・不動産高の第二波が来ました。地元の人間に購買力が生まれたからです。
今後10年で円相場は現在の160円台から150円台へ、最終的には110円前後まで段階的に円高が進むとみています。多くの人は円高で東京の資産が下落すると心配しますが、そうはなりません。生産関係が追いついている限り、為替高・資産高が同時に起きます。これが最も旨味のある局面です。
だから正しい取引は、今は米ドルで東京の資産(たとえば物件)を買い、家賃でコストを薄め続けることです。円高の第二波が来た時に、資産を米ドルに戻せば増えています。ブラックストーンが東京の中核エリアの物件を買い漁っているのは、20〜30年スパンでこの論理を実行しているからです。
伝統金融と仮想通貨の橋渡し
仮想通貨の関係者はそれほど多くありません。主に伝統的な金融機関と資産管理会社です。
私たちがやろうとしているのは、前の時代のFICC(固定収益・外国為替・コモディティ)の経験をそこへ持ち込み、クリプトを加えることです。そのチャネルを通じて仮想通貨を深く理解し、今度は伝統金融機関に逆向きに売っていきます。将来のJPモルガンも仮想通貨に精通した人材を必要とします。伝統金融は必ずしも仮想通貨を理解していませんし、仮想通貨に詳しい人間は必ずしも伝統金融を理解していません。両方分かる人間が橋渡し役になれます。
新火集団の方向性は正しいと思います。日本の金融庁に登録されたコンプライアンス取引プラットフォームとして、BitTradeチームの成長戦略も非常にローカライズされており、地に足のついたものです。長期にわたって日本の仮想通貨業界の健全な発展に貢献し続けています。
日本市場には独自の特性があります。日本は米国と中国の間に位置し、保守的でありながらも開放的であり、一歩一歩着実に進んでいく必要があります。
第一に、将来的にビットコインが決済・両替の合法的な手段として認められれば、取引所は最良の両替チャネルになります。
第二に、伝統的資産取引所と仮想通貨取引所は最終的に融合します。あちらでも仮想通貨が取引でき、こちらでもトークン化された伝統的資産が取引できます。最終的には効率とコストの競争になります。これこそが、新火集団およびBitTradeがアジア太平洋地域のコンプライアンスインフラに継続的に大規模投資を行っている理由です。
ブロックチェーンとトークン化のメリットは、低コストと高効率にあります。将来的には、一つのウォレットの中で、債券、外国為替、コモディティ、仮想通貨、株式のすべての取引が極めて低いコストで完結できるようになります。これが必ずたどり着く最終形です。新火集団の内部を見ていると、Web3インフラの開発にもいっそう力を入れて投資していることがわかります。
日本には独特の「ファンダム経済」があり、非常に興味深いと思います。地下アイドルをトークン化できないか、という話です。おじさんたちが投げ銭でトークンを贈るのではなく、アイドルグループの収益をそのまま配当として分配します。つまり、アイドルグループを株式化するようなイメージです。ポケモンカードやグッズ、缶バッジなども、コミュニティ内でしっかりとした共通認識が形成されています。日本においては非常に可能性のある方向性だと思います。
若者がアニメ・漫画の世界を楽しみながら、関連銘柄の株を買います。遊びながら投資する、それが本来あるべき姿ではないでしょうか。
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