2万ドル水準で揉み合うビットコイン、DeFiの預入総額はピーク時の3分の1水準に
仮想通貨市況
21日の暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインは前日比+2.7%の275万円(20,407ドル)と続伸した。
目下慎重論が根強いのは、世界各国の物価高を伴うインフレ指数が好転し、FRB(米連邦準備制度)による金融引き締め断行の姿勢が緩和されない限り、金融相場の大局は変わらないとする見解が背景にあるためだ。
アナリストのBenjamin Cowen氏は、米国のインフレ率、及び株式市場とビットコインとの相関関係に注目する一人。
1970年代の相場を参照しても、歴史的に米主要株指数の「S&P 500」は、インフレがピークに達して逆転するまで底を打たない。その点において、相関係数の高まるビットコイン(BTC)も、同様の値動きをする可能性が高いと指摘した。
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一方、足元では売りの過熱水準が続いており、19日から20日にかけてショートカバーを伴う反発につながった。ビットコインは18日、2万ドルの節目を割り込み急落したが、その際の実現損失は歴史上最大にまで膨らんだ。
そのような状況にある中、ProSharesはビットコイン先物のインバース型ETF(上場投資信託)をローンチした。
米国初の事例でニューヨーク証券取引所に上場する。インバースは「逆の」という意味合いを持ち、S&Pシカゴマーカンタイル取引所(CME)のBTC先物指数のインデックス連動に負の倍数をかけて算出される。
つまり、相場が下落するほどより多くの利益を得ることができるよう設計された金融商品だ。インバース型ETFは、株式市場でも弱気相場に重宝される。
マイナー情勢
マイナー(採掘業者)も保有BTCの売り超過に転じるなど厳しい情勢を示唆している。昨今のビットコイン価格の大幅下落のほか、インフレによる電気代の値上がりもマイナー収益を圧迫している可能性がある。
NYDIGのデータによれば、マイナーは22年1〜4月平均の4倍水準となる4411BTCを22年5月に売却した。
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ただし、直近のネットポジションデータでは売りが一巡し、買い集め期間に突入したことを示唆するシグナルも見られるようだ。
DeFi市場
DeFiプロトコルへの預け入れ総額を示す「Total Value Locked(TVL)」は1年以上ぶりに1,000億ドルを下回り、730億ドル水準に達している。昨年のピーク時には2500億ドル水準にあったことから70%近く減少したことになる。
プロトコル別に見ると、1位のMakerDAO(MKR)が前月比-20.2%となったほか、2位のAAVEが-42.7%、3位のCurveが-43.5%、4位のLidoが-43.2%といずれも資金流出が加速した。
株式市場を含む金融相場全体のリスクオフに加え、テラ(LUNA)ショックやCelsius Network(セルシウス)の臨時的な出金停止措置、仮想通貨業界の大手ヘッジファンドThree Arrows Capital(3AC)の債務超過懸念などが幅広く波及した格好で、予断を許さない展開が続く。
一方、Etherscanブロックエクスプローラーのデータによれば、セルシウスは1,000万ドル相当のステーブルコインDAIをCompoundFinanceに返済した。最大手取引所FTXのサム・バンクマン・フリードCEOが、救済策など市場への介入を示唆したことも投資家心理を幾分改善させた可能性がある。
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FTXはLiquid Globalがハッキング被害に遭った際に巨額の融資を行い、その後買収してFTX JAPANをローンチした経緯がある。
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