- 連邦準備銀行のアトランタ支部長は否定派
- 3月27日に行われた「Hope Global Forum」の年次総会にて、連邦準備銀行のアトランタ支部長「Raphael Bostic」氏は、『仮想通貨は投資に値しない。』と批判しました。
- 連邦準備銀行の見解
- そのほか、連邦準備銀行のミネアポリス支部、シカゴ支部、本部前代表も、仮想通貨に対して”懐疑的な考え”を表明しています。一方、ニューヨーク支部長は、どちらかと言えば肯定的な発言で理解を示しており、本部の現代表は、仮想通貨に中立のスタンスを取っています。
立場上、銀行幹部は厳しい姿勢
連邦準備銀行アトランタ支部、ミネアポリス支部、シカゴ支部の代表に加え、本部の前代表らは、仮想通貨に対して懐疑的な考えを表明しています。
その一方で、ニューヨーク支部長は、仮想通貨に対して理解を示しており、連邦準備銀行本部の現代表は、仮想通貨に中立なスタンスです。
今回、アトランタ連邦準備銀行支部長が、ビットコイン(仮想通貨)に対して「投資に値しない」との見解を述べました。
2017年から連邦準備銀行のアトランタ支部を取り仕切る「Raphael Bostic」氏(以下、Bostic氏)は、3月27日に行われた起業家精神と貧困層への金融促進を推進する「Hope Global Forum」の年次総会にて、メッセージを出しました。
Bostic氏は仮想通貨に対して、以下のように述べました。
「仮想通貨は、投資に値しない。」
「なぜなら、本来の意味での通貨でなく、投機市場に過ぎないからだ。」
「このような市場に対して、必要な資金を投じるのは止めたほうがいい。」
アメリカの巨大な中央銀行である、連邦準備銀行は、ビットコインなど仮想通貨が目指している非中央集権的な金融市場の真逆に位置しています。
いうなれば既存の金融システムの権化のような機関です。
その中心人物たちの発言はこれまでにも高い注目を集めてきました。
連邦準備銀行の代表が、仮想通貨に対して批判的なコメントをするのは、今回のBostic氏が初めてではありません。
2017年12月には、ミネアポリス連邦準備銀行の代表「Neel Kashkari」氏(以下、Kashkari氏)が、以下のように述べています。
「私は、(仮想通貨について、ぬいぐるみの人気シリーズである)”ビーニーベイビーズ”のようなものだと捉えている。」
「仮にその価値が1,000倍になって、1つ10,000ドル(約104万円)の価格が付いたとして、ビーニーベイビーズの本質的な価値はどこにあるのだろうか。」
「ただし、ブロックチェーン技術自体は、ビットコインよりも興味深いものと言える。」
連邦準備銀行のシカゴ支部の代表は、「仮想通貨の投資家たちは、その匿名性の高さから鑑みるに、世界中の”サメ”と一緒に泳いでいるようなものである。」と、ジョーク交じりに述べています。
冷静な見解も
その一方で、連邦準備銀行・ニューヨーク支部の報告書では、仮想通貨に対して、どちらかと言えば肯定的に捉えています。
報告書では、以下のような言及がありました。
「仮想通貨は、トラストレスな状況における支払い問題の解決策となり得る。」
「ただし、アメリカなどの先進国でのニーズは、あまり見込まれないだろう。」
連邦準備銀行の前代表「Janet Yellen」氏は、辞任前の記者会見で、ビットコインが「投機性の高い資産」であり、「支払いシステムにおける役割は、限定的である。」と主張しました。
なお、元財務長官「Jerome Powell」氏は、過去に次のようなコメントを残しています。
「ビットコインに対する反感は、特に持ち合わせていない。」
「私たちは、代替通貨に対して(中立のスタンスであり)反対も支持もしていない。」
今後の動向は
基本的にアメリカの連邦準備制度は、仮想通貨に対して肯定的ではないとは言え、仮想通貨に関しては極端に否定的な態度をとっているわけではありません。
基幹技術であるブロックチェーンの有用性と市場規模の小ささを考えた際に、政府機関が発言をすることの影響力の大きさ、そしてそもそも市場規模自体が小さいことによる仮想通貨がもたらす一般市場への影響の小ささを考えてのことだったと考えられます。
しかしながら、今回のアトランタ支部長Bostic氏による「仮想通貨は投資に値しない」発言は、明確に反対意見を表明したことになり、これまでの流れとは大きく乖離しています。
ただし、Bostic氏の姿勢にあるような「仮想通貨に対する強硬姿勢」は、必ずしも組織全体の公式見解と一致するものではありません。
現時点でフラットな立場を堅持し、かつブロックチェーン技術に有用性を見出している「Jerome Powell」氏が、連邦準備制度の議長を務めていることは不幸中の幸いと言えるでしょう。
世界各国による規制強化の影響も
その一方で、現時点で世界各国では仮想通貨に対する規制が高まっているのも事実です。
例えばアメリカは、以前はどちらかといえば「連邦準備制度」以外も動向を見守っている傾向が強く見られました。
しかし、2018年2月6日にはアメリカ証券取引委員会の委員長「Jay Clayton」氏が、『州レベルでの仮想通貨規制をアメリカ国内で統一する』という構想を掲げていることが明らかになっています。
また、ドイツやフランスなどは一貫して強硬的な姿勢を崩していません。2018年3月21日に行われた「G20で」も本格的な案がまとまったわけではないとは言え、いかに適切な観点で国際的に規制していくかが大きな議題の一つとして挙げられていました。
確かに規制は、現在の仮想通貨の実情を考えたうえで投資家の保護、基幹技術であるブロックチェーンの有用性を証明するためには必要不可欠です。
その一方で、過度な規制は、市場規模の拡大や技術革新の妨げにもなる可能性があります。
こうした中で、政府中枢機関でもあり世界経済に多大な影響力を持つアメリカ「連邦準備制度」の在り方は、注目してみていく必要があるでしょう。