ビットコインの中期的な適正価格は
米金融大手JPモルガンは、顧客向けのレポートの中で、ビットコイン(BTC)の中期的な適正価格を算出した。
この適正価格は、あくまでビットコインとゴールド(金)のボラティリティ(価格変動性)を比較して算出したものだ。JPモルガンは、ビットコインの中期的な適正価格は、2万4,000ドル(約263万円)から3万6,000ドル(約394万円)であると試算している。
このレポートは5月28日付で作成されており、一般公開はされていない。仮想通貨に特化されたレポートではなく、株や債券に関するデータなども掲載されている。
JPモルガンは機関投資家の仮想通貨市場参入を妨げる大きな要因は、ボラティリティで、特にゴールドと比較した価格変動の大きさは重要な要素だと指摘。上述した適正価格は、この考えが基になっている。
もう1つ算出の基になっているのは、民間が投資目的で保有しているゴールドの量から、JPモルガンが理論的に算出したビットコインの長期的なターゲット価格。ビットコインとゴールドのボラティリティが同水準になり、この両資産が投資家のポートフォリオに同じ割合で組み込まれるようになったと仮定した場合、ビットコインの価格は長期的に14万5,000ドル(約1,590万円)になると試算している。
以下は両資産のボラティリティを比較したグラフ。縦軸の数値はビットコインのボラティリティをゴールドのボラティリティで割ったものだ。青線が3カ月、黒線が6カ月の期間で算出している。レポート作成時、ビットコインのボラティリティはゴールドのおよそ6倍だ。
JPモルガンはこの数値が年末までに、現在の6倍から4倍ぐらいまで下がると予想。昨年の夏のような2倍水準までは下がらないと見ている。4倍であれば、ボラティリティが同レベルの時の14万5,000ドルに比べ、ビットコインは4分の1の価格になるという見方により、約3万6,000ドル。6倍であれば6分の1になるので、約2万4,000ドルになるという試算だ。
本記事執筆時点のビットコインの価格は3万7,000ドル(約405万円)。最近のボラティリティの差が6倍ということであれば、適正価格は2万4,000ドルであるため、JPモルガンの試算は、まだビットコインの価格が中期的に下落することも示唆している。
機関投資家マネーの動き
今回のレポートでは、ボラティリティだけでなく、機関投資家マネーの流れにも触れている。
以下は青線がビットコインファンド、黒線がゴールドの上場投資信託(ETF)へ流入した資金の蓄積を表したグラフ。どちらも機関投資家が利用する傾向の強い金融商品だ。最近のビットコイン価格の暴落を受け、ビットコインファンドの資金量は減少、ゴールドETFの方は増加に転じていることが分かる。
以前ビットコインの価格が上昇していた時は、逆にゴールドETFからビットコインファンドへ資金が流れていると見られていた。
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JPモルガンは、これらのデータを引用して機関投資家が押し目買いをする意欲は弱いとし、「過去数週間の値動きは、機関投資家マネーが仮想通貨市場に流入することの妨げになるだろう」と指摘している。