- 金融庁の人事異動とその影響
- 一部のメディアから史上最強と評されるほど、金融庁長官として異例の3期目を務めている「森」氏。 この夏、新しい長官人事が発表される事が予想される中、森長官の4期目はあるのか、森長官は仮想通貨に対してどのようなスタンスなのか、あるいは人事交代が仮想通貨業界にどのような影響を及ぼすのか、今回CoinPost編集部にて考察しました。
- 金融庁とは
- 金融機関を検査・監督していた金融監督庁と、金融制度の企画・立案を担っていた旧大蔵省の金融企画局を統合し、2000年7月に発足した行政機関のこと。日本の仮想通貨業界を監督する立場でもあり、仮想通貨取引所に対する認可登録の権限を持つほか、業務改善命令などの行政処分を下すなど、利用者保護を第一に業界の健全な発展を目指している。
森体制の4期目続投はあるか
金融庁長官は2期までが通例でしたが、森長官は、麻生太郎財務大臣や菅義偉官房長官からの信頼が厚く、異例の3期目続投で現在に至っています。
銀行、証券、保険など金融分野を監督している他、「許認可の権限」を持つ事から、財務省を凌ぐ現在の最強官庁との呼び声も高いです。
そのため、時の権力者のように語られる事が多いのですが、森長官が大事にしているのは「消費者保護」と「消費者の利益」であり、投資家の利益を大事にされている方で、手数料の獲得を第一とする証券業界の投資信託販売姿勢に対して厳しく批判をしたり、貯蓄から投資へのシフトが進まない現状に対して意見を述べるなど、利用者目線での対応も多く見受けられます。
異例の3期目となっている森体制。その体制が、仮想通貨業界にどのように影響しているのでしょうか。
仮想通貨業界への対応、そして現在
森長官は、規制監督の長でありながらも、「フィンテック」という新しい金融の流れには、ある程度肯定的立場だと考えられます。
昨年開催されたある講演においても、ブロックチェーン技術に対して自身の仮説を述べております。
仮想通貨産業についても、当初は”産業の育成”を第一に掲げており、上記で述べたような証券会社に対する発言やその他の金融機関と異なり、非常に柔軟な対応を示しました。
しかし、2018年1月26日に発生した、日本最大手の取引所である「コインチェック」社の580億円相当のNEM流出事件を受けて、状況は一変します。
同社の資金流出事件が社会問題となり、金融庁の監督責任や利用者保護の観点からも規制を進めざるを得ず、仮想通貨交換事業登録業者、みなし業者に対する緊急の立ち入り検査、及び業務改善命令(業務停止命令)などの重い行政処分を立て続けに実施。
この件で、登録業者をはじめとする交換事業者の管理体制の不備やセキュリティ対策の甘さなどが指摘・糾弾され、メディア等でも多くの厳しい論調が続き、結果的に仮想通貨事業に対しての対応が後手に回ったとして、金融庁にも批判の矛先が向かう形となりました。
他にも、スルガ銀行によるシェアハウス向けの不正融資問題等を受けて、金融庁の森体制は苦境に立たされていると言えるでしょう。
森長官の4期目はあり得るのか(今後について)
上記のような状況や、今まで金融庁長官を4期務めた方はいないことから(3期を務めた方は、他に2人いる)、今夏で森金融庁長官の勇退が見込まれており、メディア等では次の金融庁長官人事について様々な憶測が流れております。
仮想通貨業界の方々は、規制監督庁である金融庁に対して、嫌悪感をもたれる方も少なくないと思われますが、森長官は仮想通貨産業の発展に肯定的な姿勢も見せ、貢献した人物と評する事もできるため、森長官の交代は仮想通貨業界にとって一つの転換期となる可能性が高いと考えられます。
現在の世論は、ハッキング事件などを受けて仮想通貨に対して批判的な論調が台頭しているほか、金融庁の研究会等でもやはり厳しい意見を中心に議論が交わされており、ブロックチェーン産業の急発展や国際的なルール整備が前向きに進む一方で、日本の仮想通貨業界には逆風が吹いていると言えるでしょう。
新しい長官での体制下では、金融庁の方針が変わり、規制強化にますます傾倒する可能性も否めません。
この夏、金融庁長官の人事が仮想通貨業界に一定以上の影響を及ぼす可能性を鑑みつつ、新たに就任された方が「仮想通貨に対する発言などから、どのようなスタンスを見せる」のか、(規制強化が仮想通貨業界の健全な発展に寄与することを願いつつ)しっかりとチェックしていく必要があると思われます。
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