- Nikkei Fintech ConferenceにCoinPost編集部も参加
- 今最も注目を集めるFintech界の著名人が集まり7月2日講演が行なわれました。今回はその中でもCoinbase社の発表内容をまとめさせていただきました。
- 米最大級仮想通貨取引所Coinbaseが日本市場に参入する背景
- Coinbaseのグローバルビジネスディベロップメント、ディレクターであるSam Rosenblum氏が講演、日本支社ジェネラルマネージャーである北澤直氏がモデレーターとしてそれぞれの見解を語りました。
- 確実に慎重に日本市場へも展開していく
- 顧客を第一に考え、金融庁の方針を理解しそれに沿って安心し信頼できるプラットフォーム形成を行っていくと述べました。
- Coinbaseとは
- 30カ国以上でフィアット建ての仮想通貨取引を提供するアメリカの最大手取引所。2018年4月には、Earn.comの買収に際し、自社の企業価値をおよそ「8,500億円」と算定するなどして話題になった。
Nikkei Fintech Conferenceへ7月2日参加してきました。
今回のテーマは「共存から共栄へ」とされていました。
昨今のオープンイノベーションを進展させる動きの一例として、今年改正銀行法が施行され、下記の三点の変更がありました。
- 電子送金サービスの登録制
- 銀行代理業等等に係る規制緩和
- 電子決済等代行業と銀行代理業との関係等を明確化
この改正により今まで問題視させてきたFintech企業と金融機関との垣根が少しづつ消えていく動きが見え始めています。
これによりオープンイノベーションによる企業間の協力連携が取りやすくなり、さらなる技術革新が期待されるでしょう。
今回のカンファレンスでは金融庁、大手銀行の方々が登壇し今後のFintech発展について語りました。
中でも注目は仮想通貨交換業の登録を年内にも金融庁に申請する米大手仮想通貨交換所Coinbase社の登壇です。
今回はCoinbaseの講演内容をまとめさせていただきます。
Coinbase日本進出背景
Coinbaseは創業6年目にして企業価値が10億ドル(約1100億円)あると言われ、ユニコーン企業とも呼ばれています。
また、ウォレット利用者数は2000万人と言われております。6月には三菱UFJと連携し日本進出というニュースもあり、資産サービスのお金のデザインで最高執行責任者を務めた北澤直氏がCoinbase日本支社ジェネラルマネージャーとして就任しました。
日本でも多くの仮想通貨取引所が存在しますが、ハッキングやセキュリティー面そして金融庁からの度重なる業務改善命令などが危惧されています。
一方、セキュリティー面が強みであり、長年の営業実績がある米最大級仮想通貨企業が日本に進出するということは日本仮想通貨、ブロックチェーン業界をさらに大きくするきっかけとなり、取引所間でもシェアの取り合いが生まれてくるのではないでしょうか。
講演内容:Coinbaseが推進するプラットフォーム戦略
Nikkei Fintech の講演では日本進出ニュースが出てから初めてCoinbase社が日本支社設立の背景を語る場となりました。
Coinbaseのグローバルビジネスディベロップメント、ディレクターであるSam Rosenblum氏が講演、日本支社ジェネラルマネージャーである北澤直氏がモデレーターとしてそれぞれの見解を語りました。
まずはこの6年間のCoinbase事業を振り返る場面では、
10年ごとに新しいコンピューターモデルが出ています。今までなかったアプリケーションが出てきており、 コンピューターのメインとなるものから、分散型のコンピューティングが生まれ、そしてそれがモバイルコンピューティングとなり、モバイル型へ分散されて、今のビットコインがあります。
とRosenblum氏は述べました。
そして、このブロックチェーン、ビットコインは新しいコンピューティングモデルであると語り、特に「ビザンチン将軍問題」対策を行える点はとても優れていると話します。
- ビザンチン将軍問題とは
- 内部で連絡しあうチーム内で、特定人物が悪意を持つ、などの理由で偽情報を出回らせる可能性がある場合、全体が正しい合意及び判断を行うことが出来なくなるのでは、とする問題。
また、マーケットシェアもビットコインに集中していた市場が、今では1000以上の新しいトークンが増え、アルトコインがマーケットシェアを一定割合獲得し、この分野の成長が著しいことを語りました。
Rosenblum氏は、マーケットの変動について触れながらも、現状のBTC価格を含めポジティブに仮想通貨及びブロックチェーン市場を捉えていました。
Coinbase事業
またRosenblum氏は、Coinbaseのミッションを語りました。
- ミッション:オープンファイナンシャルシステムを世界中で作り出す
- 戦略:最も信頼の置け、使いやすいプラットフォームを作りだす
Rosenblum氏はが強調していた点は、コンピューティングの新しいモデルを、使いやすく安心出来るプラットフォームとして提供するというものです。
日本での活動も世界でのオープンファイナンシャルを達成する一つの動きと言えるでしょう。
また使いやすさの重要性について、このようにコメントをしました。
仮想通貨を初めて買うことは怖いことでしょう。銀行のサービスを使うこととは違います。
また、銀行サービスを携帯でまだ使ったことがない人も多いのが現状です。
こうした背景を考え、できるだけ使いやすく安全なものを作っていくことが、我々Coinbaseが成し遂げたいことです。
こちらの発言からもわかるように、使いやすさと安全性、信頼の獲得が今後仮想通貨取引所が取り組むべき課題としています。
また、Coinbaseは下記の図の企業と提携をしており、日本企業では三菱UFJフィナンシャルグループ社と提携をしております。
CoinPost編集部も、Q&Aセッションにて、三菱UFJフィナンシャルグループ社と連携して日本市場の開拓という背景について、また、今後の連携内容について質問致しました。
その質問に対し、北澤氏は以下のように語りました。
3年前からCoinbaseは日本の市場を見に来ており、2016年に三菱UFJ社より出資を受け良い関係を築いています。
具体的なことは決まっていませんが、何か一緒にできることはないかという話はしています。
詳細は決まっていないそうですが、日本で事業を拡大していく中で、「何か一緒にできることはないか」との言葉通り、Coinbase社と三菱UFJ社がさらに密接に連携していくことも期待されます。
複数の事業を展開するCoinbase
6年間事業を続けており、証券よりも多くの利益をあげているCoinbase社ですが、4つの事業を展開しており、それぞれのニーズにあうものを提供しています。
- 消費者向け:仮想通貨取引所、仲介業
- プライム・プロ :機関投資家向けサービス
- カストディー :顧客の仮想通貨を保管サービス
- アセットマネージメント:インデックスファンド
現在では、33ヶ国にてCoinbaseで取引を行うことが可能で、サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨーク、海外ではロンドン、そして日本へオフィスも展開し、目覚ましい勢いでグローバル企業と成長しております。
Coinbaseの日本での活動
日本で金融庁のライセンス取得に向け、Coinbaseは準備万全で向かっていると強気の発言もしておりました。
現状日本でのスタッフは多く派遣していないとRosenblum氏は語りましたが、ライセンス取得次第多くの人員雇用を行う予定だそうです。
Q&Aの時間では、日本進出に向けての意思をRosenblum氏は語りました。
今回も日本に来れて嬉しいです。いつも明確なのは規制について日本は進んでいるということです。金融庁も良く議論をしていると思います。
初期に注目された(Mtgox、coincheckなど)事件はネガティブな影響もありましたが、今後の成長は楽しみです。
日本以上に規制がはっきりしているところはありません。確実に慎重に進行していきたいです。
また、特に印象的だった点はRosenblum氏はがシリコンバレーと今の仮想通貨事業について比較し語ったことでした。
シリコンバレーは速さが大事かもしれないですが、Coinbaseは逆です。安全で安心出来るサービスを届けるために、顧客のことを第一に考えるということです。
つまり、速さだけ追求してはいけないのです。エコシステムが立ち上がると顧客の資産を請け負うということです。
Rosenblum氏は「早急である必要はあるが焦ってはいけない」と述べ慎重に規制当局の方針に沿って進んでいき、理解していくということを示しました。
また、最後に、グローバル企業として、日本では早くサービスを提供していきたいことを述べながらも、アメリカを含め優秀な人材とともに、多方面で慎重に事業を進めていきたいと締め、講演を終えました。
まとめ
今回、Coinbaseが日本にオフィスを構えるという背景として、日本の成長余地と規制について強調し述べていました。
海外よりも投資家の売買の頻度が高い上に金融庁が規制を整えようとしている日本市場の特徴が、Coinbaseを日本でオープンすると決断した大きな点ではないでしょうか。
Coinbaseも参入する日本仮想通貨市場、厳しい規制が日本のテクノロジー発展の妨げにもなっているという意見がありますが、こうした海外ユニコーン企業の参入が今の日本の現状をよりポジティブな方向へと押し上げるきっかけにもなるのではないでしょうか。