- 米国会が仮想通貨へ注目
- 7月19日、米国会下院の農業委員会と金融業務委員会は、仮想通貨に関する公聴会をそれぞれ開催。有識者の一人は「技術革新と経済的利益を海外流出させぬよう、ブロックチェーン技術育成のための適切な規制は不可欠」と訴えた。
農業委員会の公聴会要旨
米下院の農業委員会は、「仮想通貨:デジタル時代で新たなアセットの管理」というトピックについて、学者や法律家、エンジニアや起業家など、仮想通貨業界の有識者を招き、公聴会を開きました。
農業委員会委員長は先日、2016年に「ロシア諜報員12名がBTCを資金源とし、大統領選への政治的干渉を働いた」とする疑いで起訴されたことを受け、違法行為に使われる資金を現金より容易に追跡できる特性を有するパブリック分散型台帳について、BTCを通じた犯罪行為は捜査に好都合だと強調していました。
今回の公聴会では、法的規制も討論の一環となりました。
公聴会に招待された、元JPモルガンのブロックチェーン開発部部長を務めたAmber Baldet氏は、まだ黎明期にあるブロックチェーン技術をインターネットのインフラに見立て、次のように述べました。
さらに、米国の名門大学MITのGary Gensler名誉講師は、「適切な規制は、技術革新と経済的利益を海外へ逃がさずに、国内でブロックチェーン技術を育成するためには必要不可欠であり、出来るだけ早急に立法する」ように勧めました。
懸念について
革新的な新技術と市場育成に歓迎の意を表明する一方で、ICOスキャムや詐欺的ICOに関して、議員たちは懸念を示しています。
CFTC(米商品先物取引委員会)の管理官を務めるDaniel Gorfine氏も、「約80%のICOがすでに失敗に追い込まれ、悪徳商法を働く者が後を絶たない」と懸念を示しつつ、「CFTCは、投資家と規制当局に対して、新興技術やスキャムの見極め方などを理解してもらうことにフォーカスしている。」と、前進していることを表明しました。
K.マイケル・コンナウェイ会長は、公聴会の後、以下のように強調しています。
仮想通貨などのデジタル資産は、新たな商業領域として大きな可能性を秘めているが、セキュリティ(有価証券)トークンの議論など難しい課題もある。
委員会は、消費者、開発者、投資家にとって、より安全かつ効率的で、透明なデジタル資産市場を促進するために、コミュニティと連携していきたい。これからも適切な規制を行うため、必要な議論を進めていく。
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金融業務委員会の公聴会要旨
農業委員会の公聴会と同じ日に、金融業務委員会は、大学の教授や学者を主とした有識者を集め、「お金の未来:デジタルカレンシー」という公聴会を行いました。
主な討論内容は、以下の通りです。
- 新興技術である仮想通貨に見られるメリット
- 仮想通貨を実際の「お金」と見做せる範囲と、国内外における実際用途
- 各国の中央銀行が独自通貨の発行を目論む中、米国会が問題に取り掛かる必要性
- 将来的に金融政策における裁量自由度が高まった場合の検証内容
仮想通貨の購入とマイニング禁止への言及も
同公聴会で、仮想通貨否定派のBrad Sherman議員は、脱税手段や米国が課す経済制裁を回避するのに利用されるとの理由を挙げ、「仮想通貨の購入とマイニングを禁止すべき」と主張しました。
この発言に対し、有名な保守系シンクタンクであるヘリテージ財団のディレクターを務めるNorbert Michel氏は、「犯罪者が仮想通貨を使用することを理由に禁止するという理屈であれば、世の中に存在する大半の物に対して、使用や売買を禁止してしまうことになりかねない。」と反論しました。
さらに、カリフォルニア大学の経済教授は、「近年見られる現金決済の減少と電子決済の需要面において、連邦準備制度による媒体としての仮想通貨の発行が考えられることから、当面は仮想通貨技術がもたらすセキュリティ問題等の解決を優先するべきではないか。」だと提唱しました。
金融業務委員会の公聴会も、農業委員会のと同様に概ねポジティブな雰囲気を漂わせており、仮想通貨における金融政策の変化や既存の中央集権的金融体制との共存に関する討論は、これからも進展が期待できると言えるでしょう。
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