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仮想通貨が金融商品になると税金はどうなる?|Aerial Partners寄稿 資金決済法から金商法に移行する可能性

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

税理士が解説

現在、暗号資産(仮想通貨)の利益から得た所得は「雑所得」として分類され、累進課税の対象となっています。

しかし今後、仮想通貨が資金決済法ではなく金商法(金融商品取引法)の対象となり、金融商品として扱われるようになった場合、税制が大きく変わることが考えられます。具体的には、以下のような変化やメリットが期待できます。

  • 申告分離課税が適用され、税率が下がる可能性がある
  • 他の投資による所得と相殺できるようになる
  • 赤字を繰り越せるようになる可能性がある

申告分離課税が適用され、税率が下がる可能性がある

現在、仮想通貨取引で得た利益は「雑所得」に分類され、他の所得と合算した所得金額に対して税率をかける「総合課税」の対象です。しかし仮想通貨が金融商品になれば、株式や投資信託と同様に「申告分離課税」が適用され、税率が下がる可能性があります。

2024年9月30日、ブルームバーグが金融庁関係者からの匿名情報として「金融庁が仮想通貨(暗号資産)規制の見直しに着手する方針だ」と報じました。

仮に、仮想通貨が現行の資金決済法から金融商品取引法(以下、金商法)の対象になるとしたら、仮想通貨が正式に「金融商品」として認知されることになります。

仮想通貨が金融商品になると税金はどうなる?

現在、仮想通貨の利益から得た所得は「雑所得」として分類され、累進課税の対象となっています。

しかし今後、仮想通貨が金商法の対象となり、金融商品として扱われるようになった場合、税制が大きく変わることが考えられます。具体的には、以下のような変化やメリットが期待できます。

  • 申告分離課税が適用され、税率が下がる可能性がある
  • 他の投資による所得と相殺できるようになる
  • 赤字を繰り越せるようになる可能性がある

申告分離課税が適用され、税率が下がる可能性がある

現在、仮想通貨取引で得た利益は「雑所得」に分類され、他の所得と合算した所得金額に対して税率をかける「総合課税」の対象です。しかし仮想通貨が金融商品になれば、株式や投資信託と同様に「申告分離課税」が適用され、税率が下がる可能性があります。

総合課税では、所得が多くなるほど税率も高くなる「累進課税」が適用されているため、所得が多いと最大で45%もの税率が課されることがあります。ここに住民税が加わると税率は最大55%にもなり、高所得層の税負担は重いと言えます。

一方、株式投資や投資信託は「申告分離課税」の対象となっており、税率は一律20.315%で、所得がどれほど多くなっても税率は変わりません。この制度が仮想通貨にも適用されれば、高所得者にとって大幅な税負担の軽減が期待できるでしょう。

他の投資による所得と相殺できるようになる

現在の税制度では、仮想通貨で得た利益を株式やFXなどの損益と相殺することができません。総合課税で損益通算ができるのは、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4つの所得に限られているためです。

しかし、金融商品として認定されれば、仮想通貨の損益を他の投資の所得と相殺できるようになることが考えられます。

たとえば、仮想通貨で1,000万円の利益が出た年に、株式投資で500万円の損失を被った場合、仮想通貨の利益1,000万円から株式の損失500万円を差し引き、500万円分だけが課税対象となります。結果として、税負担を大幅に軽減できるでしょう。

さまざまな金融資産に分散投資を行う際に、税制面でも有利な環境を作りやすくなります。

赤字を繰り越せるようになる可能性がある

仮想通貨で損失を出した場合、現行の「雑所得」扱いでは、その損失を翌年以降に繰り越すことができません。しかし仮想通貨が金融商品として扱われるようになれば、株式投資や投資信託と同じように損失を繰り越せるようになる可能性があります。

たとえば、今年仮想通貨で300万円の損失が出たとしましょう。その翌年に500万円の利益が出た場合、損失の繰り越しができれば、前年度の300万円の損失を差し引いた200万円分だけが課税対象になります。

さらに、最長3年間の繰り越しが認められたとしたら、仮に翌年以降の利益ですべての損失を相殺できなくても、3年にわたって損失分を相殺し税負担を減らすことが可能です。

赤字の繰り越しが認められれば、一時的に大きな損失を被った場合でもリスクが軽減され、税制面での柔軟性が高まります。投資家にとって大きなメリットとなるでしょう。

日本国内におけるビットコインETF実現への影響

現在、日本では決済用通貨の扱いである仮想通貨ですが、仮想通貨が金融商品になることで、ビットコインやイーサリアムなどに関する仮想通貨ETF(上場投資信託)が承認されるかもしれません。

ETFは、証券取引所に上場している投資信託のことであり、特定の指数に連動する特徴をもちます。仮想通貨ETFにおいては、特定の仮想通貨の価格に連動するため、たとえばビットコインETFの場合、ビットコインの価格に連動してETFの基準価額が変動します。

ビットコインなどの仮想通貨への投資は、暗号資産取引所を通じて行われていますが、仮想通貨ETFが承認されれば、証券市場を通じてビットコインへの投資が可能です。

米国の証券取引委員会(SEC)では2024年1月以降、ビットコインやイーサリアムの現物ETFが承認されるようになり、そのたびに投資家からの注目を集めています。日本でも承認の期待が高まっているものの、まだ国内での取り扱いは認められていません。

まとめ

今後、仮想通貨規制が変更されて仮想通貨が金商法の対象となり、金融商品として扱われるようになったら、税制面で大きな変更が考えられます。具体的には、株式投資やFXと同じように申告分離課税が適用されたり、他の金融商品の所得と損失を相殺できるようになったりする可能性があるでしょう。

また、米国と同じように、ビットコインなどの仮想通貨ETFが承認される日が到来するかもしれません。仮想通貨規制の見直しに関する金融庁からの言及はまだありませんが、今後の動向に注目です。

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寄稿者:藤村 大生

公認会計士・税理士

株式会社Aerial partners ビジネス開発部長

監査法人でデューデリジェンス、原価計算導入コンサルなどの業務を中心に従事。 また、証券会社の監査チームの主査として、分別管理に関する検証業務も行う。暗号資産事業者に対する経理支援を行っており、暗号資産会計・税務の知見に明るい。

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