TOP 新着一覧 チャート 資産運用
CoinPostで今最も読まれています

今すぐできる仮想通貨の税金対策、覚えておきたい損益圧縮による節税効果|Aerial Partners寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
※このページには広告・PRが含まれます

仮想通貨の所得にかかる税負担は、住民税を含めると最大55%もの高い税率が適用される可能性があり、重いと言わざるを得ません。大きな利益を出している投資家ほど「なんとか節税したい!」と考えるでしょう。

そんなときに税金対策として取り組んでいただきたいのが「損益圧縮」です。

この記事では、仮想通貨取引で赤字が出た際に知っておきたいポイントや、損益圧縮の仕組みについて解説します。

仮想通貨取引で赤字が出たらどうすればいい?

仮想通貨取引で赤字が出た際、他の所得の状況と合わせて確認しましょう。他の雑所得がある場合は、損失と相殺できる可能性があります。順を追って説明します。

仮想通貨取引だけで損失が出ているなら確定申告は不要

まず、仮想通貨取引だけで損失が出ているようなら、確定申告は確定申告は必要ありません。また、仮想通貨からの所得が少額な場合も、確定申告の対象外となります。

【確定申告が原則不要なケース】

  • 年末時点で仮想通貨取引の損失が出ており、所得がマイナスである
  • 仮想通貨による所得(利益-経費)が20万円以下である

ただし、以下のケースでは、仮想通貨の所得が20万円以下でも確定申告が必要になる可能性があります。

【確定申告が必要になる可能性があるケース】

  • 事業所得や不動産所得など、他の所得がある場合
  • 医療費控除を受ける場合
  • ふるさと納税で寄付をした場合
  • 年金や副業など他の雑所得がある場合

上記に該当するものがある場合、雑所得の欄に仮想通貨の所得額を記載しておきましょう。なお、仮想通貨によって損失が出ている場合、記載する必要はありません。

他の雑所得がある場合は仮想通貨の損失と相殺できる

仮想通貨で損失が出ているとき、仮想通貨と同じ「総合課税の雑所得」に分類される所得があるなら、相殺することができます。これを「損益通算」といいます。

たとえば、会社員などの給与所得者がアフィリエイトや原稿執筆などで副収入を得ている場合、仮想通貨と同様、雑所得の総合課税に当たるので、副業収入から仮想通貨の損失を差し引くことができます。

また「ビットコインの損失をイーサリアムの利益で差し引く」など、仮想通貨同士の相殺も可能です。

一方、給与所得や事業所得は雑所得ではないため、仮想通貨の損失を相殺することはできません。そして株式投資や投資信託、FXなども「申告分離課税」に当たるので、こちらも相殺できない点にご注意ください。

損失は翌年に繰り越せない

株式投資などでは、確定申告時に損失を計上しておけば、最長3年間の繰り越しが認められています。しかし仮想通貨の場合は、損失を翌年に繰り越せません。雑所得では、損失の繰り越し控除が認められていないからです。

もし、仮想通貨取引にかかる損失を繰り越すような対策が必要であれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

赤字が出た時にこそ活用したい「損益圧縮」の仕組み

「損益圧縮」とは、仮想通貨の損失や利益を調整して、最終的に課税される所得を少なくする方法です。赤字の時に活用すれば、翌年以降の税負担を軽減でき、強力な節税対策になります。

翌年以降の税負担を軽減できる

全体の実現損益が赤字のとき、含み益のある仮想通貨を売却して利益を確定させると、その年の損失と相殺されるため、結果としてその年に課税されることはありません。

しかし、含み益を翌年以降に持ち越すと、翌年にその利益が課税対象となります。赤字の年に利益を確定しておけば、翌年以降に利益が出ても課税される額を少なく抑えることができ、将来の税負担を減らすことができます。

高い税率で課税されるリスクを減らせる

雑所得は所得が高くなるほど税率が高くなる「累進課税」を採用しているため、なるべく所得が集中するのを避けるのが大事です。

赤字が出ている年に損益圧縮を行っておくと、翌年に大きな所得額を計上しても高い税率で課税されるリスクを低減できます。もちろん損失がある年には税金がかかりません。そして翌年以降も過度に税率が高くなることを防ぎ、税負担を軽くできる可能性が高まります。

損益圧縮の流れ

年末が近づいてきたら、次のような流れで損益圧縮を行うとよいでしょう。

    1. 現在の利益・損失状況を確認する
    2. 含み損や含み益を見極める
    3. 利益が出ている場合は、損失を確定させて圧縮する
    4. 赤字が出ている場合は、利益を確定させて相殺する
    5. 全体の損益を見直し、確定申告時に実現損益として申告する

1.現在の利益・損失状況を確認する

まず、仮想通貨の取引全体で現在どのくらいの利益や損失が出ているのかを確認しましょう。なお損益には次の2種類があります。

  • 実現損益 … 確定した仮想通貨の利益や損失
  • 含み損益 … まだ売却していない仮想通貨の、今の市場価格と購入価格の差

実現損益はすでに確定していますが、含み損益は未確定のため、当年に相殺するか翌年に持ち越すかを検討できます。

2.含み損や含み益を見極める

次に、含み損や含み益の金額や現時点での価格などを確認しましょう。

  • 含み損 … 価値が下がっているが、まだ売却していない通貨
  • 含み益 … 価値が上がっているが、まだ売却していない通貨

複数の仮想通貨を持っている場合や、同じ仮想通貨を複数の取引所で保有している場合などは、それぞれの損益を損益計算ツールなどに書き出しておくと、損益圧縮を検討しやすくなります。

3.利益が出ている場合は、損失を確定させて圧縮する

全体の実現損益がプラス、つまり利益が出ている場合は、含み損のある仮想通貨を売却して損失を確定させます。

これにより利益が減り、最終的に課税対象となる所得が少なくなって、支払う税額も軽減されるのです。

    【例】

  • 全体で500万円の利益がある状態で、含み損のある仮想通貨Aを売却(1通貨あたり100万円で購入したものを現在価格40万円で売却)
  • 300万円の損失が確定
  • 全体の利益が500万円から200万円へ圧縮

4.赤字が出ている場合は、利益を確定させて相殺する

反対に、全体の実現損益がマイナス(赤字)である場合、含み益がある仮想通貨を売却して利益を確定させます。損失と利益が相殺され、赤字の年に確定した利益分には税金がかからなくなります。

そして翌年以降に利益が出た場合も、高い税率で課税されるリスクを軽減できます。

    【例】

  • 全体で100万円の損失がある状態で、含み益のある仮想通貨Bを売却(1通貨あたり20万円で購入したものを現在価格50万円で売却)
  • 150万円の利益が確定
  • 全体の損失100万円と、150万円の利益が相殺
  • 100万円の赤字から50万円の黒字に転換

5.全体の損益を見直し、確定申告時に実現損益として申告する

損益圧縮によって全体でどのくらい利益が減ったのか、あるいは損失と利益がどのように相殺されたかを確認し、税額の見込みを立てましょう。最後にその年の損益をまとめ、確定申告時に実現損益を申告し、必要額を納税します。

含み損や含み益をうまく売却して利益や損失を調整し、最終的な納税額を減らしましょう。

仮想通貨の損益圧縮による注意点

節税対策になる損益圧縮ですが、以下の点に注意が必要です。

  • 損益計算は「移動平均法」で行うようにする
  • 仮想通貨を売却したらすぐに買い戻す
  • 含み損益と実現損益が同じ方向の場合は損益圧縮できない
  • 実際の取引と利益計算が合わないことがある

仮想通貨の損益計算方法には、移動平均法と総平均法の2種類があります。総平均法はすべての購入価格を平均化するため、個別の取引ごとの損益がわかりにくく、損益圧縮がうまくいかないことがあります。

一方、移動平均法では、購入ごとに平均購入価格が更新されるため、利益や損失を正確に把握でき、損益圧縮がしやすいメリットがあります。よって、この場合の損益計算は、移動平均法を使いましょう。

また、売却した仮想通貨をすぐに「買い戻す」ことで、保有数量は変わらず、実現損益を圧縮できます。すぐに買い戻すのを忘れないようにしてください。

ただし、実現損益と含み損益がどちらもプラス、またはどちらもマイナスの場合は、利益や損失が増えるだけで損益圧縮はできません。

それから、仮想通貨取引を頻繁に行っている場合は特に、どの取引がどの利益や損失に結びついているかを正確に把握することが難しくなり、実際の取引と利益計算が合わない場合があります。取引履歴の管理が難しく、申告時にミスを避けるためにも、正確な記録を残すことが重要です。

まとめ

損益圧縮は有効な節税対策のひとつです。とはいえ、損益圧縮をする前に、まず正確な損益計算をすることが重要になります。年末を迎える前に取引をすべて洗い出し、損益の状況を把握することから始めるとよいでしょう。

損益の計算は自分でも行えますが、手計算ではどうしても計算ミスが起こりがちです。また、取引数が多い方ほど、その労力は計り知れません。自動計算ツール「Gtax」などをうまく活用し、手間なく正確に確定申告を行いましょう。

関連:ビットコインの買い方|初心者が知るべき投資メリット、リスク、最適な取引所選び

関連:おすすめ国内仮想通貨取引所 投資家のクチコミ比較ランキング

仮想通貨の損益計算サービス「Gtax」の詳細はこちら

https://crypto-city.net

寄稿者:藤村 大生

公認会計士・税理士

株式会社Aerial partners ビジネス開発部長

監査法人でデューデリジェンス、原価計算導入コンサルなどの業務を中心に従事。 また、証券会社の監査チームの主査として、分別管理に関する検証業務も行う。暗号資産事業者に対する経理支援を行っており、暗号資産会計・税務の知見に明るい。

本記事は企業の出資による記事広告やアフィリエイト広告を含みます。CoinPostは掲載内容や製品の品質や性能を保証するものではありません。サービス利用やお問い合わせは、直接サービス提供会社へご連絡ください。CoinPostは、本記事の内容やそれを参考にした行動による損害や損失について、直接的・間接的な責任を負いません。ユーザーの皆さまが本稿に関連した行動をとる際には、ご自身で調査し、自己責任で行ってください。

CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
11/14 木曜日
16:00
バイナンス幹部が語る10億人ユーザー獲得のための戦略とは【独自取材 後編】
大手取引所バイナンスのRohit Wad最高技術責任者が、CoinPostの取材に応じ、同社のAIソリューションについて説明した。また、ユーザー10億人のプラットフォームとなるための成長戦略についても語った。
15:44
仮想通貨とAIエージェントの接点|自律ファンドからAIアイドル、ミームコインまでーBinance Research
バイナンス・リサーチは、「仮想通貨における AI エージェントの未来を探る」と題した新たなレポートを公開。市場で急速に注目を集めている「AI X 仮想通貨」領域の進展と将来性について解説した。
11:00
BTCはマイナー売りに警戒必要も10万ドルが視野に
仮想通貨の分析を行うCryptoQuantは、ビットコインのマイナー売りに注意を払う必要があるとの見方を示した。一方、相場にポジティブな材料を複数挙げている。
10:54
仮想通貨否定のウォーレン議員、上院銀行委員会の民主党リーダーに
仮想通貨に批判的なウォーレン上院議員が次期議会より銀行委員会の民主党リーダーに。規制強化へ向けて働きかける可能性がある。
09:13
SECなどに規制策定停止を要請、トランプ氏勝利で米下院議員が書簡
米共和党ヒル下院議員がSECなど連邦金融規制当局に規制策定の一時停止を求める書簡を送付した。トランプ氏の大統領就任を見据えた動きだ。
08:30
復元フレーズのバックアップを推奨、Phantomウォレット iOSアップデート問題めぐり
仮想通貨ウォレットアプリPhantomの開発元が14日、一部のiOSユーザーでアプリのリセット問題が発生していると公表した。この問題は、アプリの最新アップデート後に一部のユーザーが自動的にログアウトされ、ウォレットへのアクセスができなくなるというものだ。
07:55
「BTC上昇は50万ドル超えるまでは初期段階」Bitwise幹部
仮想通貨ビットコインの価格上昇は50万ドル超えるまでは初期段階であるとBitwise幹部が主張。価値の保存手段としてゴールドと比較し、その根拠を説明している。
06:55
コインベース、ミームコインPEPEとWIFを新規上場 価格急騰
仮想通貨取引所コインベースは14日に新たに、PEPEとWIFの新規上場を実施した。価格が高騰した。
06:20
米ロビンフッド、ソラナやXRPを再上場 PEPEは新規上場
米仮想通貨・株式投資プラットフォーム「ロビンフッド」はソラナやXRPなど、一度上場廃止とした銘柄の再上場を実施。トランプ氏の次期政権による業界規制緩和を見込んだ動きとされる。
06:05
米FBI、予測市場ポリマーケットCEOの自宅を強制捜査か=報道
米連邦捜査局(FBI)が13日、仮想通貨利用の分散型予測市場プラットフォーム「Polymarket」のCEO、シェイン・コプラン氏の自宅を訪問し、スマートフォンなどの電子機器を押収したと報じられた。
05:50
続伸するビットコイン、一時93000ドル突破 米消費者物価指数を好感
仮想通貨ビットコインは昨夜発表の10月米消費者物価指数(CPI)が好感され上昇を続けていた。10月のデータでは、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数が先月に続き堅調な伸びとなったが、総合指数とともに市場予想に一致する結果となった。
11/13 水曜日
16:41
今すぐできる仮想通貨の税金対策、覚えておきたい損益圧縮による節税効果|Aerial Partners寄稿
暗号資産(仮想通貨)の損益計算サービス「Gtax」を提供する株式会社Aerial Partners所属の税理士が、覚えておきたい損益圧縮による節税効果に関してわかりやすく解説。国内最大手暗号資産(仮想通貨)メディアCoinPostに寄稿しました。
16:00
バイナンス幹部が語る10億人ユーザー獲得のための戦略とは【独自取材 前編】
バイナンス・ブロックチェーンウィーク2024での独自取材を基に、最高マーケティング責任者のRachel Conlan氏が語る10億人ユーザー獲得戦略と日本市場への展望を詳説する。
13:55
SBI VCトレードの預かり資産2000億円突破、仮想通貨高騰で需要拡大
国内の主要暗号資産取引所SBI VCトレードは、預かり総資産が2,000億円を突破したことを発表した。ビットコイン(BTC)やアルトコインの高騰が後押ししており、需要が急拡大した。
13:55
イーロン・マスク氏『DOGE省』ロゴ公開、ドージコイン前週比75%超高騰
トランプ次期政権で新設される政府効率化省のトップに就任するイーロン・マスク氏が、ドージコインと同じ柴犬をモチーフにしたロゴを公開。仮想通貨DOGEが急騰する中、省庁改革への期待が高まる。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
イベント情報
一覧
2024/12/01 09:30 ~ 20:00
東京 墨田区文花1丁目18−13
重要指標
一覧
新着指標
一覧