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イーサリアムのステーキングは高利回り?株式配当と比較したリスク・リターンを独自考察

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高利回り・高リスクのETHステーキング

暗号資産(仮想通貨)イーサリアム(ETH)では現在、コンセンサスアルゴリズムをPoW(Proof of Work)からPoS(Proof of Stake)に移行するための検証作業が進められている。

PoSでは、一定量のトークンをステークさせる(掛け金を拠出する)ことでトランザクションの検証を行う。承認のために高度な処理能力を有する専用のマシンを必要としないため、一定のETHを保有している個人がトランザクション承認によって利益を獲得することが期待されている。

PoS移行後のステーキング報酬については、年間数%の利回りが得られるような報酬設計が提案されている。これによって、ETH保有者は株式の配当(優待)のようなインカムゲインを得ることができるようになる。

しかしながら、ETHステーキングには特有リスクも存在する。そこでこの記事では、ETHステーキングの利回りとリスクを確認し、株式のそれと比較する。

ETHステーキングの利回り

現在提案されているETHステーキングの報酬設計では、ユーザーは最低32ETH(1ETH=25,000円換算で80万円相当)をロックアップすることでステーキングに参加できる。ステーキングされているETHの総量やオンラインでトランザクションを処理しているユーザーの割合に応じて変化する。

暗号資産データ分析会社のArcane Researchの調査によると、6月時点で32ETH以上を保有するETHウォレットの数は、約12万に上る。

さらに、ConsenSysが5月に実施した調査では、約66%のETH保有者がPoS実装後にステーキングをする予定だと回答している。

これらのデータからステーキングされるETHの総量を概算し、これを今年4月にリリースされたETHステーキングの計算機に代入してETHステーキング報酬を算出すると、以下のようになった。

  
ステーク量 ETH報酬(日本円表記)累積リターン(%)
0 32.00 (¥817,199)
1 35.01 (¥894,321) 3.0199 (¥77,122) 9.44%
2 38.32 (¥978,721) 3.3049 (¥84,400) 19.77%
3 41.94 (¥1,071,085) 3.6168 (¥92,365) 31.07%
4 45.89 (¥1,172,167) 3.9581 (¥101,082) 43.44%
5 50.23 (¥1,282,788) 4.3317 (¥110,621) 56.97%

(ステーキングされているETH総量=32ETH×120,000×66%=2,560,000ETH、ETH価格=¥25537.48で計算)

ETHステーキングのリスク

現在提案されているETHのステーキング報酬の下では、年間9.4%と株式配当利回りに比べて高い利回りが得られる計算だ。しかしながら、ETHステーキングの際には、特有のリスクも考慮する必要がある。

ETH価格変動

ETHステーキングのリスクの大半は、ETHの価格変動だ。

ETH価格が現時点の水準で推移した場合、初期投資額の32ETHを回収するのには約10年かかる。これに対して、ETH価格が3月の年初来安値の水準(約8550円)まで下落すると、その回収期間は約30年に増加することになる。一方、2018年1月の史上最高値の水準まで価格が高騰すれば、2年足らずで投資分を回収できる。

ステーキング参加者の増加

現在提案されているステーキング制度では、ステーキング参加者数に応じてその報酬が変化する。

暗号資産データ分析会社のArcane Researchの調査によると、ステーキングに必要な最低額である32ETH以上を保有するウォレット数は近年、年率13%のペースで増加している。

32ETH以上を保有する潜在的なステーキングノードが増加すれば、期待されるステーキング利回りは悪化することになる。

もしETHステーキングが実装されるまでに潜在的なステーキングノードがさらに13%増加した場合、期待されるステーキング利回りは現在の9.44%から8.3%まで低下する。

ただし、ステーキング参加者数の増加は、ETH価格の変動に比べると、影響力が小さいリスク要因だ。ステーキング参加者数が現在仮定している水準よりも50%増加した場合であっても、ステーキング利回りは年率6.3%となる。

株式とETHステーキングのリスク・リターン

現在提案されているステーキング報酬に基づいて計算すると、ETHステーキングの利回りは、高配当株の配当利回りを大きく上回っている。

例えば、(1489)日経高配当株50ETFの6月時点の配当利回りは、約4.7%とETHステーキング利回りの半分の水準にすぎない。

一方で、ETHステーキングには特有のリスクが存在する。

第一に、ETHステーキングの収益性はETHの価格変動に大きく依存している。過去3年間のETH価格は最安値から最高値まで約17倍の開きがあり、これによって初期投資額の回収期間に2〜30年という非常に大きな幅ができる。それに対して、(1489)日経高配当株50ETFの基準価格は最安値水準から最高値水準まで約1.8倍と変動幅が小さい。

また、ステーキング参加者数の増加という特有のリスクも存在する。近年の傾向が続くならば、ETHのステーキング参加者数は年間約13%増加し、ステーキング報酬が約10%減少すると予想される。それに対して、(1489)日経高配当株50ETFの配当額は、過去3年間で年率5%ほど増加している。

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