TOP 新着一覧 チャート 資産運用
CoinPostで今最も読まれています

「米雇用統計」とは|金融市場への影響と取引への活かし方を解説

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

市場に大きな変動を与える米雇用統計。米雇用統計は各国の経済指標に比べると重要度が高く、注目される指標です。

FX取引でも、米雇用統計の発表後に大きく為替が変動するため、理解しておく必要があります。本記事では、米雇用統計の概要と注目される項目、発表直後に取引する際の注意点を見ていきましょう。

目次
  1. 米雇用統計は前月の雇用情勢・失業率などの統計データ
  2. 米雇用統計で注目される4項目
  3. 米雇用統計に影響を与える市場3項目
  4. 米雇用統計の発表前後の市場の動き
  5. 米雇用統計前後に取引する際の注意点3つ
  6. 米雇用統計は重要指標の1つ|上手に利用して取引に活用

1.米雇用統計は前月の雇用情勢・失業率などの統計データ

ここからは、米雇用統計について解説します。

1-1.米雇用統計の概要

米雇用統計とは、米国の雇用者数や失業者数の雇用情勢を表した重要な指標の1つです。アメリカ合衆国労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics:BLS)から原則、毎月第1金曜に発表されます。米雇用統計が発表される時間は、以下の通りです。

  • 夏時間:日本時間21:30
  • 冬時間:日本時間22:30

夏時間と冬時間によって発表時間が異なるため、現地時間を確認しておきましょう。

1-2.なぜ米雇用統計は注目を集めるか

米雇用統計が注目を集める理由は、それが米国経済の将来性を判断する指標として極めて重視されているからです。まず、米国国内の個人消費は同国GDPの約7割を占めています。そのため、国民による個人消費の増減は米国経済において非常に重要な要素と言えるでしょう。そして個人消費の増減、すなわち国民の経済事情は雇用情勢に大きく依存しています。

また、米国のGDPは世界全体のGDPのうち約2割を占めており、米ドルは世界経済の原動力である石油の取引に用いられ、かつ世界で最も貿易の決済に使用されています。このように米国経済は現代世界経済の屋台骨とも言え、その影響力の大きさも注目される一因です。

加えて、米国中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board:FRB)が政策金利を決定する際に、雇用統計を参照していると言われています。まず、一般的にFRBは景気が良好だと政策金利の引き上げ、景気悪化がみられると政策金利の引き下げを行う傾向です。政策金利によって、為替市場を含めた多くの市場が影響を受けるため、米雇用統計は投資家からも注目を集めます。

1-3.ADP雇用統計と米雇用統計との違い

ADP雇用統計とは、アメリカの大手給与計算代行サービス会社であるオートマティック・データ・プロセッシング社(Automatic Data Processing:ADP)によって米雇用統計発表日の2営業日前に公表される民間の雇用統計データです。

なお、ADP雇用統計はADP社が保有している顧客データによる統計であり、米雇用統計はサンプルデータが異なるため結果が一致するとは限らない点に注意しましょう。

ただし、ADP雇用統計と米国雇用統計が一致する場合は相場が小さく動き、大きく乖離している場合には相場が大きく動く傾向があるとされており、相場の動きを予測するために両統計の差を確認する投資家も存在します。

2.米雇用統計で注目される4項目

ここからは、米雇用統計で注目される4項目を解説します。

2-1.非農業部門における雇用者数(Non-FarmPayrolls)

非農業部門における雇用者数とは、その名の通り農業部門以外の産業で、民間企業や政府に雇用されている人数の増減をまとめたもので、特に重視される指標の一つです。

基本的に前月比でどの程度の増減があったかが重視され、雇用者数が増加すれば、個人消費の拡大に期待できます。民間企業・公共機関が提供する給与支払い帳簿から集計され、失業率よりも早く雇用動向を反映するとされています。特に、雇用情勢を知る指標として「製造業」の雇用者数が注目される傾向です。

2-2.平均時給(Average Hourly Earnings)

平均時給は、農業部門以外での産業における1時間あたりの平均時給と、その増減を表したものです。時給を確認すると人件費の推移が分かり、景気を判断する材料となります。平均時給が上がると個人消費の拡大につながると言われています。

2-3.失業率(Unemployment Rate)

米雇用統計において失業率は、米国の失業者数を労働人口で割って、増減と割合を求めた数値を指します。失業者数は16歳以上の働く意思を持つ人、労働人口は「就業者数」と「失業者数」を合計した数です。なお、集計から過去4週間以内に求職活動を行わなかった人は「失業者」には該当しません。

失業率が下がれば個人消費は増加し、失業率が上がれば個人消費は減少する傾向があるため、景気の動向を確認できます。

2-4.その他の外部要因

米雇用統計の発表日には、米国の金融政策に関する発言や、米国の政治情勢に関するニュースなどが同時に発表されるケースがあります。これらの外部要因についても、相場に影響を与えるため注意を払わなければなりません。

3.米雇用統計に影響を与える市場3項目

続いては、米雇用統計に影響を与える市場3項目を解説します。

3-1.外国為替

円や米ドルなど異なる通貨を交換する外国為替市場では、雇用統計の発表により米国通貨である米ドルの価格が変動します。

基本的に雇用統計が改善されると、政策金利の引き上げに伴い市場金利も上がり、高金利のドルが買われやすくなるためドル高になる傾向です。一方で雇用統計が悪化して政策金利が引き下げられると、ドルを手放す投資家が増加してドル安相場を招くことがあります。

特に価格変動に影響を与えるのが、雇用統計の「非農業部門雇用者数」。この指標は事前予想と結果が大きく乖離することも少なくなく、その乖離が大きいほど大きな相場変動を招く傾向にあります。逆に予想通りの結果であった場合、相場変動への影響が少ない場合が多いです。

なお、FX取引におけるドル円ペアも、米雇用統計発表直後に大きく変動することが多い関係から、発表日は取引高が増加する傾向にあります。

3-2.株式

米雇用統計は、投資家同士で発行済みの株式を売買する流通市場の株式に影響します。

例えば、雇用者数が多い・失業率が低いなど、米雇用統計の内容が事前予想よりも良い状態なら一般的に株価の上昇要因となる傾向です。一方、予想より雇用統計の内容が悪い場合は株価の下落要因となる可能性があります。

こういった傾向が生まれるのは、雇用統計が米国における景気動向を表していることが主な要因です。景気が良ければ消費が増え、企業は売り上げを伸ばして業績を向上させやすいため株価が上昇し易くなります。一方で景気の悪化は消費の減少を招き、それが企業価値の低下と株価の下落要因となる、という仕組みです。

3-3.金利

この場合、金利は各国の中央銀行が景気や物価の安定を目的として設定する「短期金利」を指します。

米雇用統計が改善され景気が加熱していると判断されると、政策金利は引き上げられるケースが多い一方で、雇用統計が悪化して景気が悪いと判断されると、政策金利は引き下げられる傾向です。なお、政策金利の引き上げは「金融引き締め」、引き下げは「金融緩和」と呼ばれます。

4.米雇用統計の発表前後の市場の動き

ここからは、米雇用統計の発表前後の特徴的な市場の動きを解説します。

4-1.発表前:穏やかな動きをする傾向

米雇用統計の発表前は、投資家が状況をうかがって売買を控え、市場は穏やかな動きをする傾向にあります。投資家の中には取引を抑え、保有しているポジションを決済して現金化する人も少なくありません。

4-2.発表直後:相場が乱高下する傾向

発表直後は、短期間で相場が乱高下することが珍しくありません。特に、事前の予想値と統計の発表内容に大きな乖離があった場合、値動きが激しくなります。値動きの激しさによって注文の約定に時間がかかり、取引が成立しないケースもあるでしょう。

また、予想値と統計結果が乖離していなくても、売買注文を控えていた投資家が動き出し、普段の値動きより激しい動きになる可能性も考えられます。

4-3.発表後:通常に比べると変動が激しくなる傾向

発表からしばらく経っても市場の調整が続くため、通常時に比べると値動きが大きくなります。相場の状況によっては、日付が変わっても価格変動リスクが通常と異なる場合も多いので、取引時は入念に相場をチェックしましょう。

5.米雇用統計前後に取引する際の注意点3つ

ここからは、米雇用統計直後に取引する際の注意点を解説します。

5-1.取引時は十分なリスク管理を

発表直後のように乱高下する相場では、リスク管理をしましょう。大きな利益を手に入れられる反面、大きな損失を抱えることも珍しくありません。自分の予想していた内容と雇用統計が大きく異なることもあるでしょう。発表直後は無理に取引をせず、損切りのラインを決めておくことをおすすめします。

5-2.市場の動きとの整合性がないケースに注意

市場の動きと米雇用統計に、必ず整合性があるとは限りません。たとえば、前月に米雇用統計が悪化し株価が下落していたとして、今月も悪化したにもかかわらず株価が上昇する可能性も考えられます。米雇用統計の結果はあくまで傾向であり、その他の外部要因やテクニカル分析をもとに、自分の目で相場の動きを追うことが大切です。

5-3.保有ポジションをあらかじめ把握

米雇用統計の発表前に、必ず保有ポジションを把握しましょう。発表後に相場の乱高化によって、ロスカットされる可能性があります。リスク管理のため、発表に備えて保有ポジションを保持・決済するか考えましょう。

6.米雇用統計は重要指標の1つ|上手に利用して取引に活用

本記事では、米雇用統計や発表後に取引する際の注意点を解説しました。米雇用統計によって政策金利が変動し、外国為替や株式の値動きに影響を与えます。発表前後には大きな為替の変動があるため、リスク管理を徹底することが大切です。米雇用統計の動きをうまく活用すると、取引の判断ミスを減らせるでしょう。

CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
11/22 金曜日
20:30
XRPのETF承認はどうなる?市場価格への影響を分析
トランプ次期政権下でのXRP現物ETF承認の可能性を詳しく解説。SEC委員長交代や規制緩和への期待、市場への影響を専門家の見解とともに分析。ビットコイン、イーサリアムに続く承認タイミングと価格への影響を予測します。2025年のXRP市場展望を徹底解説。
15:00
仮想通貨XDC(XDC Network)の買い方と将来性は?
ハイブリッド型ブロックチェーンを採用する仮想通貨XDCの特徴や将来性を解説。SBIとの提携や買い方、リスクについても詳しく紹介します。
13:50
米SEC敗訴、連邦地裁がディーラー規則は無効と判断 「仮想通貨業界全体にとっての勝利」
米連邦地裁がSECのディーラー規則を無効と判断し、SECの敗訴が確定した。原告の米ブロックチェーン協会CEOは、この判決は仮想通貨業界全体の勝利であると表現。ディーラー規則は分散型金融に重大な影響を与える可能性が危惧されていた。
13:10
トレードの機会損失を最小限に、メタマスクがイーサリアムガス代込みスワップを新たに導入
仮想通貨イーサリアムの主要ウォレットMetaMaskは新機能「Gas Station」の導入を発表した。ガス代不足によってスワップが中断されることを防ぐものである。
11:26
チャールズ・シュワブ次期CEO、規制緩和で仮想通貨現物取引への参入示唆
米大手ブローカー、チャールズ・シュワブの次期CEOが、規制環境の変化があれば仮想通貨現物取引へ参入すると述べた。トランプ新政権に期待する格好だ。
10:10
仮想通貨擬人化BCG「コインムスメ」、板野友美がアンバサダー就任
タレントの板野友美氏がWeb3ゲーム「コインムスメ」のアンバサダーに就任。板野氏プロデュースのアイドルグループとのコラボユニットも結成する。
09:55
Suiブロックチェーン、稼働停止の原因や対策を公表
約2.5時間稼働を停止していた仮想通貨SUIのブロックチェーンが復旧。その後、原因や今後の対策を公表している。
08:20
マイクロストラテジー、ビットコイン追加購入のための30億ドル調達を完了
米マイクロストラテジーは21日に仮想通貨ビットコイン追加購入のための、2029年満期の無利息転換社債の募集を完了したと報告した。
07:50
金融庁、仮想通貨仲介業の新設を検討
仮想通貨のイノベーションと利用者保護の両立に向けて、金融庁が仲介業の新設を検討。この会議ではステーブルコインも議題に上がった。
06:45
トランプ氏のメディア企業、「TruthFi」仮想通貨決済サービスの商標出願
トランプ次期大統領が保有するトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループは今週、デジタル資産取引やその他決済処理サービスのプラットフォーム「Truthfi」の商標出願を行った。
06:25
SECがソラナ現物ETFの審査開始、2025年承認へ期待高まる
米証券取引委員会はソラナ現物ETFの上場申請に関する審査を開始したようだ。SOLは本日8%上昇している。
06:08
トランプ次期政権の仮想通貨諮問委員会、ビットコイン準備金設立の可能性=報道
トランプ次期大統領が提案した仮想通貨諮問委員会は、米国のビットコイン準備金を設置する可能性があると報じられた。
05:45
ソラナが史上最高値更新、XRPも急騰、ゲンスラーSEC委員長の退任確定を受け
仮想通貨のソラナやXRPなど、SECが規制の標的としている銘柄は22日、ゲンスラーSEC委員長の退任が確定したことを受けて大幅に上昇した。
11/21 木曜日
17:00
BitwiseがソラナETF準備開始 デラウェアで信託登録完了
暗号資産運用大手Bitwiseが、ソラナ(SOL)ETF組成に向けデラウェア州で信託登録を完了した。VanEck、21Sharesに続く参入となる。
16:59
バイナンス、5種類の仮想通貨取引ペアを11月22日に取扱い中止
大手取引所バイナンスが、THETA/ETHやRARE/BRLなど5種類の仮想通貨取引ペアの取扱い中止を発表。11月22日12時より取引停止へ。各トークンは他の取引ペアで継続取引可能で、価格への影響も限定的。スポット取引ボットサービスも同時終了。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア
イベント情報
一覧
2024/12/01 09:30 ~ 20:00
東京 墨田区文花1丁目18−13
重要指標
一覧
新着指標
一覧