日経平均株価とは、日本経済や株式市場の動向を示す重要な指標です。この指数は、東京証券取引所プライム市場に上場している225銘柄を選定し、その平均株価をもとに計算します。投資信託や先物取引などの金融商品に広く活用されており、日本経済や株式市場に興味のある方々にとってはおさえておくべき指標と言えるでしょう。
本記事では、日経平均株価の概要や計算方法、銘柄の選び方、そして投資方法について詳しく解説していますので、株式投資に必要な日本の経済状況の読み方を学べます。
- 目次
1.日経平均株価とは
日経平均株価、日経225や日経平均とも呼ばれるこの指数は、日本の株式市場における代表的な指標のひとつです。株式市場全体のトレンドや経済状況を示す重要な尺度とされています。
1-1.日経平均株価は代表225銘柄の平均株価指数
日経平均株価は、日本経済新聞社が東京証券取引所プライム市場に上場している約2,000銘柄から選んだ代表的な225銘柄の平均株価をもとに算出する指数です。
この225銘柄は、さまざまな業界やセクターから選ばれ、市場での流動性が高い銘柄がバランスよく含まれています。なお、仮想通貨関連の企業も225銘柄に含まれています。
この指数は投資信託や先物取引などで広く利用されており、日本の経済と株式市場に興味を持つ方々にとって、必須の情報源と言えるでしょう。
1-2.日経平均株価の計算方法
日経平均株価を計算する上での考え方は、「225銘柄の株価の合計÷225=日経平均株価」です。しかし、実際は各構成銘柄の株価に「株価換算係数」を乗じたものを採用株価とし、それらの合計を「除数」で割って求めます。具体的には、以下の式で計算されます。
日経平均株価=構成銘柄の採用株価合計÷除数
単純に225で割った場合、株式併合や分割、銘柄入れ替えがおこなわれたときに日経平均株価に大きな影響を与える可能性があります。この計算方法は、米国のダウ工業株30種平均と同じであるため、ダウ式と呼ばれることがあります。
1-2-1.株価換算係数
株価換算係数とは、新たに採用する銘柄の株価が日経平均に与える影響を調整するための係数です。具体的には、以下の式で計算されます。
基準日時点で、採用する銘柄の株価が日経平均を構成する225銘柄の株価合計の1%を超えている場合は、0.1~0.9(0.1刻み)の値が設定されます。なお、新規に採用する銘柄の株価換算係数は原則1です。具体的には、以下の式で計算されます。
株価換算係数=日経平均構成銘柄の採用株価合計×1%÷新規採用銘柄の株価
※株価は基準日時点、小数点以下第2位以下切り捨て
例えば、500円/株のA銘柄の代わりに、10,000円/株のB銘柄を選ぶと、株価の差が9,500円あり日経平均株価への影響が大きくなります。このような理由から、以前は値がさ株(株価水準の高い銘柄)が採用されにくい傾向がありました。
今後は株価換算係数を用いた「採用株価」が計算に使われるため、値がさ株の採用されやすくなります。
1-2-2.除数の修正
除数の修正とは、採用株価の合計を割る分母にあたる数字です。当初は225銘柄の株価の合計を225で割って平均株価を計算していました。しかし、選定されている銘柄が株式併合や分割をおこなうと、市況の変化がなくても株価水準が変わってしまいます。
例えば、A銘柄が株式分割を行った場合、A銘柄の株価は単純に分割比率に従って下がります。1,000円/株のA銘柄に、1株を2株にする株式分割があったとしましょう。株式分割前、採用株価1,000円だったA銘柄の採用株価は500円に下がります。
これでは、市況に関係のない影響を日経平均株価に与えるため、採用株価の合計を除数で割ることになりました。なお、2024年2月8日時点の除数は「30.02932509」です。
2.日経平均株価225銘柄の選定基準
日経平均株価の構成銘柄は、東京証券取引所プライム市場に上場している銘柄から選ばれます。選ばれる225銘柄は、セクター(業種)間のバランスを考慮しつつ、市場での流動性が高い銘柄が中心に選ばれます。構成銘柄の入れ替えは年2回(4月、10月)おこなわれ、2023年8月末時点のセクター別ウェートと銘柄数は以下のとおりです。
セクター別ウェート・銘柄数
業種 | 具体例 | ウェート | 銘柄数 |
---|---|---|---|
技術 | 医薬品、電気機器、自動車、精密機器、通信 | 49.14% | 61 |
消費 | 水産、食品、サービス | 23.76% | 36 |
素材 | 鉱業、繊維、化学、鉄鋼、商社 | 12.83% | 52 |
資本財・その他 | 建設、機械、造船、不動産 | 9.27% | 35 |
金融 | 銀行、証券、保険 | 2.59% | 20 |
出典:セクター別ウェート・銘柄数|⽇経平均株価⽉次ファクトシート
※2024年1月末時点
市場流動性は過去5年間の売買代金などをもとに評価され、高い取引金額を示すほど、市場流動性が高いとされます。セクターのバランスは、36の業種を「技術」「消費」「素材」「資本財・その他」「金融」「運輸・公共」の6つに分類し、全体のバランスを調整しながら選ばれます。また、銘柄が上場廃止された場合などは臨時入れ替えがおこなわれます。
3.日経平均株価が変動する要因
日経平均株価の変動は、各銘柄の株価に起因しています。株価変動の主な要因は以下のとおりです。
企業の決算情報 | 企業の利益や売上高などの決算情報は、株式の売買に大きな影響を与える。 |
---|---|
国内外の政治や経済関連の動向 | 日本国内外での政治的な出来事や経済的な動向、例えば日銀の発表や米大統領選挙、金融不安などが株価に影響を及ぼす。 |
自然災害 | 自然災害が発生すると、復興に必要な商品やサービスを提供する企業の株価が上昇することがある。 |
金利 | 一般的に、金利が上昇すると株価は低下し、金利が低下すると株価は上昇する傾向がある。 |
為替レート | 為替レートの変動が、輸入と輸出に影響を与える。円安の場合、輸出企業に利益をもたらし、円高の場合は輸入コストが下がるが、輸出には逆効果。 |
日経平均株価の変動は単一の要因だけでなく、多種多様な要素が絡み合って形成されます。
4.日経平均株価から判断する日本の経済
日経平均株価は、日本の経済の動向を判断する際の重要な指標です。
一般的に日経平均株価が上昇している時は、企業の業績が好調であり、経済全体が活発化していることを示します。逆に、下落している時は、企業の業績が低迷し、経済の将来に不透明感が広がっている可能性が高くなります。
また、日経平均株価に含まれる銘柄の多くは、海外からの材料輸入と国外への製品輸出を行っている企業です。そのため、円の為替レートが経済に与える影響も重要です。
円安の場合、輸出が促進され、企業の収益が向上します。一方、円高の場合、輸出企業にとってはコストが下がりますが、輸出製品の価格競争力が低下します。
要するに、日経平均株価の上昇は株主の利益を増加させ、株式市場への投資を促進し、企業価値の向上に寄与します。これが経済活性化につながり、従業員の給与や賞与にも好影響を与えるでしょう。
ただし、日経平均株価は一つの指標に過ぎません。経済全体を総合的に評価するためには、失業率やGDP成長率など、ほかの経済指標も考慮する必要があります。
5.日経平均株価に連動した投資
日経平均株価に連動した投資には、「ETF」や「CFD」「ノックアウト・オプション」などがあります。なお、これらの投資は申告分離課税に該当し、所得税は15%です(復興特別所得税除く)。一方、仮想通貨は総合課税の対象のため、給与所得などの課税所得と合算した所得金額に応じて累進課税5〜45%がかかります。
5-1.ETFは特定の指数に連動する運用商品
ETF(上場投資信託)とは、日経平均株価など特定の指数と同じ値動きをするように設計された金融商品です。
日経平均株価に連動するように225銘柄が構成されているため、個別銘柄の選択やリスク管理の手間を省けます。つまり、ETFを購入することで日経平均株価の採用銘柄に分散投資できるということです。
5-2.CFDは差金のみを決済する取引方法
CFD(Contract for Difference)とは、差金決済取引のことを指します。この取引方法では、投資家は実際に株式や商品を所有せず、その価格変動に対して差金のみを決済します。
CFDはレバレッジ機能を備えており、少額でも大きな利益を狙う取引が可能な点も特徴です。また、「買い」だけでなく「売り」からもエントリーできるため、下げ相場でも利益が狙えます。日経平均株価に連動するCFDに投資することで、個別に銘柄を選ばずに手軽に分散投資できることが魅力と言えるでしょう。
5-3.ノックアウト・オプションは最大損失額を決められる
ノックアウト・オプションとは、最大損失額(ストップロス)を事前に設定し、株価指数や外国為替の売買差益を狙う金融商品です。ノックアウト価格(損切りライン)をあらかじめ設定し、相場に反して動き、ノックアウト価格に到達すると、その価格で必ず取引が成立します。
最大損失額を決めてから取引できるため、リスク管理が容易で、資金効率の高いトレードが可能です。なお、ノックアウト・オプションは証拠金ではなく、オプション料の支払いが必要になります。オプション料は、ノックアウト価格の水準に応じて変動します。
6.TOPIXや世界の代表的な指数
日経平均株価以外に、世界的に有名な指数がいくつかあります。日本のTOPIXや世界の代表的な指数をご紹介します。
6-1.TOPIX
TOPIX(東証株価指数)とは、東京証券取引所プライム市場に上場するすべての銘柄を対象に算出する株価指数のことです。
各銘柄の時価総額をもとに計算され、日本の株式市場全体の動向や経済状況の推移を広範に捉えられます。TOPIXの方が対象銘柄が多いため、日経平均株価と比べて価格変動が緩やかですが、この2つの指数は基本的に同じ値動きになるといえます。
6-2.ニューヨーク・ダウ
ニューヨーク・ダウ(ダウ工業株30種平均)とは、アメリカの株価指数のひとつです。ニューヨーク証券取引所やナスダック(NASDAQ)市場に上場している代表的な30銘柄を選んで構成され、その価格変動を反映した指数となっています。
6-3ナスダック総合指数
ナスダック総合指数とは、アメリカの電子株式市場であるナスダックに上場している全銘柄を対象とした株価指数です。ナスダック市場は、主にITやハイテク産業が中心となっています。
6-4.S&P500
S&P500(S&P500種株価指数)とは、ニューヨーク証券取引所やナスダック市場に上場している代表的な500銘柄を対象にした株価指数です。スタンダード&プアーズ(S&P)が定めており、世界でもっとも有名な株価指数のひとつです。
6-5.FTSE100
FTSE100(FTSE100種総合株価指数)とは、イギリスのロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100銘柄をもとに算出される株価指数です。日経平均株価やニューヨーク・ダウと異なり、時価総額加重平均で算出します。
6-6.MSCI
MSCI(MSCIワールド・インデックス)とは、日本を除く先進国株式市場の動向を反映する株価指数です。22の先進国に上場する大・中型株の銘柄で構成され、グローバルに分散投資する際のベンチマークとして広く用いられています。
6-7.DAX
DAX(ドイツ株価指数)とは、ドイツのフランクフルト証券取引所に上場している主要40銘柄の株価指数です。ドイツ経済の動向を示す代表的な指標であり、国際的にも注目を浴びています。
7.日経平均株価は株式市場の動向を示す重要な指標
本記事は日経平均株価の概要や計算方法、選定基準、そして投資方法などについて解説しました。
日経平均株価は、日本の株式市場や経済状況の動向を示す重要な指数です。セクター間の構成比率を考慮しながら、市場流動性の高い225銘柄が選ばれ、各銘柄の株価変動によって指数が形成されます。
株式投資をするときは日経平均株価やほかの有名な指数を参考にし、市場全体の動向を把握することが重要と言えるでしょう。