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日本のRWAトークン化の最前線、市場の特徴や展望は?|WebX2025

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

RWAトークン化市場

大型Web3カンファレンス「WebX」では、「日本デジタル資産の未来を握るのは株式?VCファンド?MMF?」をテーマとしたディスカッションが開催された。

登壇したのは以下のメンバーである。

  • 齊藤達哉氏:株式会社Progmatの代表取締役 Founder and CEO
  • 小林英至氏:Securitize Japan株式会社のカントリーヘッド、ジャパン
  • 司会 神本侑季氏:N.Avenue株式会社(CoinDesk JAPAN) 代表取締役社長

「WebX」は国内最大手のWeb3メディア「CoinPost」を運営する株式会社CoinPostが企画し、一般社団法人WebX実行委員会が主催するWeb3カンファレンスで、今年は8月25日と26日に「ザ・プリンスパークタワー東京」で開催された。

日本市場の特徴

今回のディスカッションでは、まず神本氏が日本の市場感や特徴について尋ねた。

齊藤氏は、これはよく聞かれる質問だと前置きし、日本は独自の発展経路をたどっていると指摘。まずは、日本では「セキュリティトークン」よりも「トークン化有価証券」という名称の方が馴染みやすいとの見方を示した。

市場の特徴として、日本では法律の構造的に証券会社による販売が主流になっていると指摘。そして、証券会社の顧客にニーズがあるという点で、不動産のトークン化が主流になっていることが1つの特徴だとした。

また、Securitizeが開拓してきた「自己募集」が行われていることも特徴であると指摘。証券会社を介さなくても販売できる形式が自己募集であるとし、そのメインの商品は社債だとした。社債にはマーケティングに利用できるという側面があると話している。

そして、現在は、これら2つが日本のトークン化市場における主流だと説明した。

この点については小林氏も同意した。自己募集は投資家と発行体を直接つなぐことができ、仲介者を減らすことができる点がブロックチェーンを使ってトークン化する意義であるとも説明している。

また、マーケティング目的でトークン化の技術を活用できる点にも同意し、これは世界的に見ても日本がかなり進んでいると指摘。「デジタルエンゲージメントプログラム」のような活用の仕方は日本らしい特徴で、成長余地があるとの見方を示した。

トークン化案件の特徴

続いて神本氏は、日本の市場をより理解するために既存のトークン化案件の特徴を聞いた。

この質問に対し、齊藤氏は2つのパターンがあるとし、1つは自己募集でのマーケティング活用であると指摘。そして、もう1つは証券会社を介すことで、機関投資家だけでなく、大量の個人投資家に販売できているという特徴を挙げた。

個人投資家がこれまでアクセスしづらかった資産への投資機会を提供することは、日本は早くに実行できているので誇っていいことだと齊藤氏は語っている。そして、誇っていいトークン化事例として、不動産の評価額が600億円超のWホテルの案件が完売したことを挙げた。

また、保有する口数が多い人がホテルのレストランの良い席を予約できる権利などを柔軟に付与できることも、ブロックチェーンでトークン化するメリットだとしている。

小林氏も、トークンの購入に「おまけ」が付き、顧客との距離を縮めることができる案件が多いと説明。有価証券の特典については、丸井の案件でポイントが付くなどの優遇を行ったり、JR西日本の案件で投資家に、車両基地の見学会に招待してもらえる権利を与えた事例を挙げた。他にも映画『宝島』のセキュリティー・トークン活用事例にも言及している。

その上で、単なるファイナンスだけでなく、マーケティングやカスタマーエンゲージメントという要素は需要が高いと語った。

日本のトークン化市場の今後

神本氏は今回のディスカッションの最後に、米国市場のトレンドなどをもとに、日本市場の今後について質問した。

齊藤氏は、海外で成長してきているトークン化したMMF(マネー・マーケット・ファンド)を取り上げ、日本では同じスキームだとやりづらいという課題を指摘した。

これには、券面(紙)が必要になるなど日本の法制度が影響してくると説明。トークン化の利点である譲渡の容易性や投資家の利便性が損なわれると語った。

一方、日本は法改正には時間がかかることは税制の議論を見ても明らかだと指摘。そのため、MMFのトークン化については実務的に問題がないように、スキームをどう作るかが大事になると述べた。

小林氏は、日本も含めトークン化MMFは市場で取引されるようになるとの見方を示した。一方、米ドル建ての場合は今後は金利が低下することが予想されるため、投資妙味が減少すると指摘している。

その上で米国では、その代替先として「プライベート・クレジット・ファンド」の成長が期待されていると説明。そして、いずれは日本でも取引できるようにしたいと語った。

また、仮想通貨などの法改正について、米国が政治主導で積極的に進めているやり方をすごいと感じたと説明。自身も含めた利用者が技術などの利便性を訴え、環境構築を政治家や規制当局に訴えていく姿勢も大事だと思うと語った。

▼登壇者概要

齊藤達哉氏(株式会社Progmatの代表取締役 Founder and CEO)

2010年、三菱UFJ信託銀行に入社。連続社内起業家として専門組織の企画推進から、デジタルアセット基盤「Progmat」や「デジタルアセット共創コンソーシアム」等を立ち上げる。

2022年、複数の金融機関や取引所、ソフトウェア企業の出資による、デジタルアセット基盤事業の独立会社化を発表。三菱UFJ信託銀行を希望退職し、2023年10月創業よりProgmat代表就任。

小林英至氏(Securitize Japan株式会社のカントリーヘッド, ジャパン)

米ブラウン大学・数理経済学学位、シカゴ大学・MBA取得後、メリル・リンチ・キャピタル・マーケッツのニューヨーク本社・投資銀行部門新卒入社。ゴールドマン・サックスを含め、約4年間のウォールストリートで勤務した。

Securitize入社は2020年2月。2022年8月に、一般社団法人日本セキュリティトークン協会理事に就任した。

神本侑季氏(N.Avenue株式会社の代表取締役社長)

2018年、ヤフー傘下でWeb3情報サービスを運営するN.Avenue株式会社を設立し代表取締役社長に就任。その後同社資本を独立させ、世界最大のWeb3メディアCoinDeskの公式日本版や国内最大の法人会員制Web3ビジネスコミュニティN.Avenue clubを運営している。

また、一般社団法人ブロックチェーン推進協会(BCCC)の理事、Japan Blockchain Weekのアドバイザーも務める。

▼WebXとは

WebXとは、日本最大の暗号資産・Web3専門メディア「CoinPost(コインポスト)」が主催・運営する、アジア最大級のWeb3・ブロックチェーンの国際カンファレンスです。

このイベントは、暗号資産、ブロックチェーン、NFT、AI、DeFi、ゲーム、メタバースなどのWeb3関連プロジェクトや企業が集結。起業家・投資家・開発者・政府関係者・メディアなどが一堂に会し、次世代インターネットの最新動向について情報交換・ネットワーキングを行うイベントです。

数千名規模の来場者と100名以上の著名スピーカーが参加し、展示ブース、ステージプログラムなどを通じて、業界最前線、グローバル規模の交流とビジネス創出が行われます。

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