- 仮想通貨カード月間利用額が4倍に拡大
- AIエージェント決済が月間1,530万件に急増
「速い・安い」だけでは差別化は図れない
ブロックチェーン分析プラットフォームのDuneは8日、ニュースレター「デジタル資産ブリーフ」で、この1年のオンチェーン決済の成長は「速さや低コスト」ではなく、銀行口座を介さずに決済できる仮想通貨カードや、エージェント決済によってもたらされたと分析した。
Duneは、各国で即時決済網が普及し、「常時稼働・数秒決済・低コスト」が標準となった現在、「速さと安さ」はもはやオンチェーン決済の差別化要因ではないと述べた。
インドのUPIは1日平均7.9億件、ブラジルのPixは約2.5億件を処理しており、消費者は無料で利用できる。米国のRTP(リアルタイム決済)とFedNowは1件あたり最大1,000万ドルの送金に対応し、ユーロ圏のSEPA Instantは10秒以内の資金移動を実現している。J.P. モルガンによれば、即時決済網はすでに70カ国以上で運用されている。
では、オンチェーン決済の真の差別化要因はどこにあるのか。Duneは、「銀行口座を持たずとも決済できる手段」が同市場の成長基盤になっているとの見方を示した。
成長の最大の牽引役となったのが、仮想通貨カードだ。Duneによると、仮想通貨カードの月間利用額は1億2,600万ドルから4億9,200万ドルへと約4倍に拡大した。2026年8月には14万2,510人がこの経路を利用し、Duneが把握している消費者向けステーブルコイン決済額の98%を占めるに至った。

出典:Dune
一方、ShopifyやStripeなどを介したネイティブ・オンチェーン決済(非カード型)は、合計でも850万ドルにとどまっている。(Dune追跡分)
対照的に、最終的に銀行口座へ着金(オフランプ)する決済チャネルは軒並み縮小した。企業がオンチェーン上で請求しステーブルコインで受領する「オンチェーン請求書(インボイス)決済」は概ね半減。加盟店に代わってステーブルコインを回収し法定通貨で払い出す決済代行会社の取引額も約13%減少している。
カード決済が月間3億6,600万ドルの純増を記録した一方、それ以外の決済方法は合計で約7,800万ドルの減少となった。
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AIエージェント決済が急拡大
オンチェーン決済のもう一つの成長領域が、AIエージェントによる決済だ。その件数は1年前の月間3万9,496件から、1,530万件へと急増した。
Duneによると、8月のオンチェーン決済では、1セント未満の取引が全体の70.8%を占め、約1,330万件に達した。金額にすると合計約3万5,000ドルにすぎないが、その99.99%はAIエージェントによる決済だった。
こうした超少額決済は、既存の即時決済システムでは扱いにくい。銀行間決済では、送金ごとに決済情報や送金目的などを含むメッセージを生成する必要があり、1セント未満の取引ではそのコストが決済額を上回ってしまう。加えて、エージェント自身が銀行口座を開設することもできない。
エージェント決済は2025年12月に月間6,960万件、総額890万ドルでピークを記録した。一方、2026年8月時点では1,530万件、総額64万3,721ドルにとどまり、件数・金額ともにピーク時の水準を回復していない。ただし、ピーク後も取引件数の水準自体は切り上がっていると、Duneは指摘する。
なお、8月のエージェント決済1,530万件のうち1,470万件をx402が占めるなど、決済手段だけでなく利用者や受取先にも集中がみられ、今後の普及に向けて課題も残されている。
企業決済では「24時間稼働」の優位性も限定的
企業間決済を見ると、オンチェーン決済の強みである「24時間365日稼働」という特徴が十分に活かされているとは言い難い。
企業向け決済では、金額ベースで週末に処理された割合はわずか約5%にとどまった。取引件数ベースでは21%が週末に実施されていることから、小口決済は週末にも動いているものの、大口の資金移動は週明けまで留保される傾向がうかがえる。
その背景には、企業内部の承認待ちのプロセスがあると考えられる。ブロックチェーンが24時間稼働していても、それを利用する企業側の業務プロセスまで24時間化されているわけではない。
企業決済の取引金額の中央値は約500ドルだった。一部の大口取引に金額が集中しているものの、8月における最大決済額の800万ドルでさえ、既存の即時決済網が設定する1,000万ドルの上限枠の範囲内に収まっている。
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今後の展望
Duneは、各国で普及した即時決済システムがかつてオンチェーン決済の売りだった役割をすでに果たしていると指摘する。処理速度、国内コスト、取引金額のいずれの点においても、オンチェーン決済が優位に立つ余地はないとした。
一方で、銀行ネットワークを介さず利用できる「アクセス面」では、オンチェーン決済が優位性を確立していると評価する。AIエージェントによる超少額決済(マイクロペイメント)のような領域も、オンチェーンだからこそ実現できる強みだと述べた。
Duneがもう一つの成長領域と位置づけるのがクロスボーダー決済(国際送金)だ。各国の即時決済網は国境を越えると相互接続性に制約があるのに対し、ステーブルコインは同一のネットワーク上で国境を跨いで、容易に価値を移転できる。
ただし、送金できることと相手が受け取れることは別問題だ。ウォレットの特定や規制対応、本人確認・資金洗浄対策、現地通貨への換金など、実用化にはなお課題が残るとしている。



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