ビットコインなど暗号資産(仮想通貨)から投資をはじめた人が、伝統的な金融商品への投資を始めるなら、保守的・積極的どちらの運用もできる「株式」が適しているでしょう。
実際、株式投資を始めることは、仮想通貨投資家にとって様々なメリットがあります。
「老後2000万円問題」などに端を発し、改めて投資の必要性に注目が集まっていますが、全く投資経験がない初心者が株式投資を始めるのは簡単ではありません。一方、仮想通貨投資家は、そういった非投資家と比べて容易に株式投資へ参入できます。
本記事では、仮想通貨市場と株式市場を比較したメリット・デメリットを詳しく解説。仮想通貨投資家の視点から、これから株式投資を始めるにあたって必要な情報を網羅して紹介します。
1. ビットコイン投資家が株を始めると有利な理由
まず、仮想通貨の投資家が株を始めると有利な理由からご紹介します。
1-1. 資金力と投資経験
まず第一に挙げられるのは、過去の仮想通貨投資によって培った「資金力」と「投資経験」があることでしょう。この2つは、非投資家が投資を始めるにあたって特に大きなハードルとなっているためです。
まず、当然ながら資金的に余裕のある人でなければ、投資に資金を回すことは難しいもの。また、日本証券業協会『平成30年度 証券投資に関する全国調査(個人調査)』における「証券投資が必要だと思わない理由」という質問に対する回答をみると、主に投資に関する知識不足が影響していることが分かります。
この点仮想通貨投資家であれば、過去の投資によって得た資金によって初めからある程度アクティブな株式投資が可能。そして、これまでに儲けた・損をした投資経験があり、相場を読む感覚や損切りのタイミングも弁えています。
これは、非投資家に比べると大きなアドバンテージと言えるでしょう。
1-2. チャート分析に関する基礎知識がある
前述のとおり、投資未経験者が参入にあたって二の足を踏む大きな要因が「知識不足」です。オーダーブック(板取引)の使い方からローソク足の読み方まで、非投資家はこういった基本の基本から学び始めなければなりません。
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この点、仮想通貨の投資経験がある方なら、仮想通貨取引所で数え切れないほどオーダーブックを使用している方も少なくないでしょう。成行・指値・逆指値などの注文方法にも馴染みがあります。加えて、ローソク足に関する基礎知識も身についているはずです。
また、日常的な情報収集に慣れていない非投資家にとってマーケットの動向を追い続けることは大変な作業。しかし仮想通貨の投資家であれば、すでに機能している情報収集の習慣を株式市場向けにカスタマイズすれば事足ります。
1-3. 市場を横断して投資機会を狙えるようになる
2022年11月上旬時点の仮想通貨市場は、米国株式市場など伝統金融市場同様に長らく弱気相場から抜け出せていない状態です。
仮想通貨市場ではビットコインとアルトコイン全般の値動きの相関性が高く、ひとたび下落トレンドが訪れると市場における投資機会が一斉に減少する傾向があります。
そのような仮想通貨市場が厳しいシーズンでも、株の個別銘柄にはチャンスがあることは少なくありません。また、その逆も然りです。
さらに株式市場の銘柄はセクターごとに個別の価格変動要因に影響を受け、全く異なる値動きを見せます。そのため、株式市場全体が落ち込んでいる期間でも投資チャンスのある銘柄が少なくありません。
例えばIT・テクノロジー関連銘柄は上昇トレンドにのると長期スパンで値上がりしやすく、四半期ごとの決算で成長性が見込まれれば短期間に急伸することもあります。
原油などエネルギー関連銘柄、貴金属や大豆などのコモディティ銘柄は、複雑な世界情勢や政治の動向に大きく影響を受けて変動します。例えばロシアによるウクライナ侵攻により、同国から供給されていたコモディティが大幅な供給減に見舞われた結果、幅広いコモディティの価格が過去最高値を更新しました。
2. 仮想通貨と比較した株投資のメリット
次に、仮想通貨と比較した株投資のメリットについて解説しましょう。
2-1. 株式特有の利益を得られる
株式では値上がり益だけでなく、「配当金」や「株主優待」といった株式特有の形式でインカムゲインを得られます。
配当金とは、会社が株主の持ち株数に応じて分配する現金配当のこと。配当金のある会社では、配当金の有無・増減は当期の会社の利益状況に応じて決まり、支払い回数は年1~2回です。
また、国内企業の場合、株主優待の制度を採用している会社も多くあります。株主優待とは、一定の株数以上を保有する株主に贈答品・サービス券などを年に1~2回贈呈する制度。発行元企業の施設やサービスの利用券や、自社商品の贈答などが一般的です。
このように株式投資では、値上がりを待つ間に、インカムゲインやその会社特有の株主優待によってメリットを得られる点が特徴です。
また、もちろん会社の運営方針や資産の使い方を決める株主総会に参加し、票を投じる権利「議決権」があることも、株投資ならではでしょう。
2-2. 経済理論が通用しやすい
特に、株式市場では投資家の売買行動を理論化して相場の値動きを予測する「ファンダメンタルズ分析」や「テクニカル分析」などの経済理論が通用しやすい点には注目です。
実のところ仮想通貨は、こういった経済理論が通用しにくい金融商品として知られています。歴史が浅く、適正価格を算出する理論も開発中途であり、値動きにおいて投資家心理よりも「資金の流入量」つまり需要と供給が価格に与える影響の方が大きいためです。
この点株式市場では、市場規模も歴史の長さも仮想通貨の比ではなく、四半期ごとに開示される企業業績を元に、株価収益率(PER)などの指標で「割高・割安」を判断しやすくなるなど確立された理論があります。
それゆえ株式投資家の多くは、そういった経済理論に則った行動をとるため、長期的な相場を予測しやすいのです。
2-3. 税制面で有利
さらに株式投資は、仮想通貨と比べて税制面でかなり有利です。
仮想通貨投資による利益は雑所得に該当するため、「最大55%」の累進課税となりますが、株式の利益に対しては分離課税が適用されるため税率は「20.315%」に抑えられます。
しかも株式の場合、取引で出た損失をその他の所得と相殺して全体の所得額を減らしたり、その年の損失を翌年から3年間繰り越し、将来発生する利益と相殺が可能です。
これは、取引で損失が出ても相殺・繰り越しはできず、1年単位で所得が確定して税金がかかる仮想通貨とは大きな違いでしょう。
このほかにも株取引では、日本政府も推奨する「NISA(少額投資非課税制度)」「iDeCo(個人型確定拠出年金)」などの税制優遇措置を活用することで、さらに積極的な節税ができます。
このように株取引は、仮想通貨よりも税制面で有利、かつ融通が利く点もメリットです。
3. 仮想通貨と比較した株投資のデメリット
ここからは、仮想通貨と比較した際の株投資のデメリットについてご紹介しましょう。
3-1. 取引時間に制限がある
まず、株取引最大のデメリットとしては、24時間・365日取引可能な仮想通貨とは異なり、取引時間に制限があることでしょう。
株式の取引は、証券取引所が営業している平日の午前「9時~11時半」と午後「12時半~15時」の時間帯しか実行できず、これ以外の時間帯には注文予約のみ可能です。
特に、昼間は仕事がある一般的な会社員にとって、この時間帯しか取引できないという制限は大きなデメリットとなりえます。
もちろん、時差のある米国など海外の銘柄を取引する場合は、日本時間での早朝や夕方以降でもリアルタイムで取引できるでしょう。ただしこの場合でも、その国の証券取引所の営業時間内でしか取引ができないことには変わりありません。
ただし、取引時間外でもリアルタイムで注文できる仕組みとして「PTS(私設取引システム)」があります。
PTSで売買できるのは現物取引のみで信用取引はできません。ザラ場と比較して出来高(流動性)も少なく、取引銘柄が限られているのが難点ですが、15時以降であってもリアルタイム注文ができるのは非常に便利なシステムです。
3-2. ボラティリティが小さい
また、株式市場は歴史が古く市場規模も大きいため、相対的にボラティリティが小さくなる傾向にあります。それゆえ、基本的にはアルトコインのように数十倍〜数百倍の値上がりは見込めません。
ただし株式市場にも、IPO(新規上場株式)やベンチャー企業が多く上場する新興市場など、比較的ボラティリティの大きな銘柄やセクターがあります。必要に応じて投資を検討すると良いでしょう。
ボラティリティの小ささはデメリットとも言えますが、裏を返すと短期的な急落も起こりにくく、より長期投資に適した商品であることを意味します。
加えて株式市場では、価格が一定範囲を超えて変動することを避ける「値幅制限」という仕組みを採用。価格が一定範囲を超えて高騰した場合は「ストップ高」、一定範囲を超えて下落した場合は「ストップ安」として、取引が強制停止されます。
これにより、爆発的な値上がりは期待できない一方で損失が底抜けに広がることもなく、仮想通貨よりも安全性が高い市場と言えるでしょう。
4. 仮想通貨投資家がはじめる株取引
本記事では仮想通貨投資家向けに、仮想通貨と株投資を徹底比較してご紹介しました。
仮想通貨投資家は、資金力、投資経験、チャート分析に関する下地があるため、非投資家よりも圧倒的に有利に株投資を始められるのです。
また、仮想通貨と比較すると、株投資には税制面含め多くのメリットがあります。取引時間の制限やボラティリティの小ささなどデメリットも存在しますが、総合的には魅力が大きい金融商品と言えるでしょう。
仮想通貨から一歩踏み出し、株投資を始めてみてはいかがでしょうか。
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