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株式投資初心者でもわかるPER(株価収益率)とは|株価の割安・割高指標を解説

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株式投資の戦略を練る際に必要となるのが、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などの「株価指標」についての理解です。株価指標の活用は、株式投資を本格的に始めるにあたって避けては通れません。

そこで本記事では、株価の割高・割安を判断する代表的な株価指標の一つである「PER」について詳しく解説します。PERの概要から、よく比較対象となる指標であるPBRとの違い、PERから判断できる情報などをご紹介。これから株式投資を始めるにあたって、PERをどのように活用すればいいか、その際に注意すべき点などもあわせて参考にしてください。

目次
  1. PERは株価が割安か割高か判断できる指標
  2. PERの株式投資への活用方法
  3. PERの数値に影響を及ぼす要素
  4. PERを判断軸に株式投資する際の注意点
  5. PERを株式投資の判断軸に

1.PERは株価が割安か割高か判断できる指標

初めに、PERの概要についてご紹介しましょう。

1-1. PERの基本と計算式

PERは「Price Earnings Ratio」の略語で、日本語では「株価収益率」の意味。特定の株式銘柄について、ある時点での株価が割安か割高かを判断する指標として活用されています。

PERを算出する計算式は「株価÷EPS(1株当たりの純利益)」。例えば、ある企業の株価が1口5,000円・EPSが500円なら、PERは「10倍」であると表現します。

続いては、PERの数値が意味する内容について、より詳しく見ていきましょう。

1-2.PERの数値が表すもの

PERの数値を判断する際、一つの目安となるのが「15倍」という数字です。一般的に、上場企業のPERは15倍が適正価格とされており、15倍未満の場合は割安、15倍以上の場合は割高だと考えられています。

もちろん、この数字はあくまで目安であり、実際に価格が適正かどうかを正確に判断する材料としては不十分です。そこで、日本の経済成長・後退に起因する市場環境の変化、対象企業の過去PER・予想PERの比較、競合他社のPERとの比較などを行い、株価について多角的に分析する事が大切でしょう。

また、PERは株価が割安か割高かを判断するだけでなく「投資金額を何年後に回収できるか」という計算にも活用できます。

例えば、ある企業の株価が10万円で1株当たりの当期純利益(EPS)が1万円の場合、PERは10倍です。その時点で同企業の株式へ投資した場合、投資した金額は10年で回収できるという計算結果が出ます。

ただし、この計算は投資時点の株価・EPSから単純計算した結果にすぎません。株価と純利益が10年後まで横ばいのまま変わらない事はまず考えられないため、あくまで投資計画の参考程度に、おおよその回収期間を把握する目的で活用しましょう。

1-3.PERと「PBR」との違い

PERとよく比較される株価指標に、PBR(株価純資産倍率)があります。PBRもPERと同じく株価が割安か割高かを判断できる指標ですが、いくつかの点で異なるため、混同しないよう注意しましょう。

まず挙げられるのが、PERが企業の純利益を基に算出されるのに対し、PBRは純資産を基に算出される点です。

PBRの計算式は「株価÷BPS(1株当たりの純資産)」。

例えば、株価が1,000円でBPSが500円の場合、PBRは2倍となります。なお、目安としてPBRは1倍以上で割高、1倍未満で割安と考えられています。

また、両者は参照に適した投資スタイルも異なります。PERは、短期間に変動することが多い純利益を基準に株価が割安か割高かを表す指標であるため、長期投資よりも短期投資の株価分析に適しているといえます。一方でPBRは、変動の少ない純資産を基準にしているため、投資期間が10年以上にわたる長期投資において有効な指標です。

PERとPBRはいずれも株式投資において重要な指標です。投資期間の長短によって使い分けるといいでしょう。

2.PERの株式投資への活用方法

ここまでPERの概要やPBRとの違いを見てきました。

ここでは、実際にPERを株式投資にどのように活用するかを見ていきましょう。PERは株式投資において「バリュー投資の判断材料とする」「企業価値を把握する」という活用方法があります。

2-1.バリュー投資の判断材料とする

先述したように、PERは株価が割安なのか割高なのかを把握する指標。そのため、「バリュー投資(割安株投資)」の銘柄を選定する際に活用されることが多いです。

バリュー投資とは、本来の価値よりも低く見積もられている割安な銘柄へ投資する手法です。

PERが15倍以下であるか、競合他社のPERや同社の過去のPERと見比べて、バリュー投資に最適な割安株を探しましょう。

ただし、自動車産業・金融業界・石油工業などは他業種に比べて一般的にPERが低く、食品・精密機器・小売業ではPERが高くなる傾向がある点には注意しましょう。

2-2.企業価値を把握する

また、PERを活用し、対象企業の相対的な企業価値の高さを測ることもできます。その際には、類似する企業と比較つつ企業価値を算定する「類似企業比較法(マルチプル法)」と呼ばれる手法が用いられます。

類似企業比較法は、対象企業に類似する複数の企業につき平均的な企業価値を算定し、それをもとに対象企業の企業価値を推し量る方法です。

こういった企業価値の数値は一般にM&A(企業の合併・買収)の可否を判断する情報として用いられることが多いですが、株式投資の銘柄選定の際には企業の将来価値を測る目的で活用できます。

3.PERの数値に影響を及ぼす要素

PERは「株価÷1株当たりの純利益(EPS)」で算出される指標です。それぞれの変化に伴い、PERがどのように推移するのか見ていきましょう。

3-1.株価

PERの計算式からもわかる通り、株価の上昇はPERの上昇要因となります。

なお、株価の変動要因としては以下のような要素が挙げられます。

  • 企業業績の変化
  • 景気・金利の変化
  • 為替の変化

このように、株価に影響を与える要因はさまざまです。注目している企業が分類されるセクターの動向、国内全体の経済情勢なども把握し、PERの予想に役立ててましょう。

3-2.EPS(1株当たり純利益)

EPSは「当期純利益÷発行済株式数」で算出される指標です。EPSが大きくなればPERは下がり、反対に小さくなればPERは大きくなります。

EPSが変動する要因は、以下の通りです。

  • 当期純利益の増減
  • 自社株買い
  • 株式併合

企業の当期純利益が増減すれば、それに伴いEPSも増減します。企業業績がどのように推移しているか、決算書を見ながら確認しましょう。純利益の減少が設備投資や新規事業投資に起因するケースは、一時的にEPSが減少するものの、軌道に乗った後にEPSが回復する事もあります。

また、自社株買い・株式併合によって市場に出回る発行済株式数は減少すると、EPSの増加要因となります。

4.PERを判断軸に株式投資する際の注意点

PERは株式投資、特にバリュー投資の銘柄選定において重要な指標となりますが、活用する際にはいくつかの注意点があります。

  1. 株価が元に戻らない可能性もある
  2. 単純に数値を見比べるだけでは不十分
  3. 同業界の企業同士で比較する
  4. PERを使った投資判断に不向きな株もある

上記4点について、詳しく見ていきましょう。

4-1.株価が元に戻らない可能性もある

類似の企業などと比較し、PERの数値が低ければ「割安株」と言えますが、これはあくまで現時点での株価の状態を表しているにすぎません。

現状のPERが低く割安に思えても、将来的に業績が悪化しPERがさらに下がるようであれば、投資対象として適切ではないでしょう。

銘柄選定の際には、PERの数値が割安を示している事に加え、企業の財務状況、市場や国内経済など関連するファクターの先行きをある程度勘案したうえで判断を行うことが重要です。

4-2.PERの数値をふまえて総合判断する

株式投資を始めるにあたり、PERを指標とすることは重要です。しかし本記事で何度か触れているように、PERの数値だけでは割安・割高を判断する材料として十分ではありません。

また一方で、PERが高いからといって投資対象に値しないかというと、そうとは限りません。

そのため、投資する銘柄は業界の平均や景気状況、株価推移も踏まえて総合的に判断する必要があります。

PERは、銘柄選定における大まかな基準を設定するために活用するのが良いでしょう。例えば「PERが20倍以上の銘柄は選択肢から外す」「PERが15倍以下の銘柄を中心にリサーチする」といった基準を設定することで、効率的に有望な銘柄を探せます。

4-3.同業界の企業同士で比較する

ただし、PERは企業の業種によって平均数値に差がある点には注意しましょう。これは、業種によって利益率や原価率が異なることが主な要因です。

そのため、PERを比較して株価の適正性を測りたい場合は同一業種の企業同士で比較を行うことが肝要です。

以下に、プライム市場の主な業種のPER数値(2023年2月時点)を業種別にご紹介します。

PERは以下の表のとおりです。

種別 平均PER
水産・農林業 11.1
建設業 10.6
食品業 18.2
海運業 2.2
電気機器 17.5
輸送用機器 14.0
精密機器 17.3
銀行業 9.0

上表のように海運業や銀行業のPERは低く、一方で精密機器や食品業では高くなる傾向が確認できます。PERを株式投資の判断基準とするなら、同業他社で比べるように留意しましょう。

4-4.PERを使った投資判断に不向きな銘柄もある

PERを指標とし「割安だから購入する」という投資判断には不向きな銘柄もあります。「グロース株(成長株)」や「景気敏感株」などです。

4-4-1.グロース株(成長株)

「グロース株(成長株)」とは高い成長率が期待され、将来的に大きなキャピタルゲインが期待できる株式銘柄を意味します。

2020~2022年の期間におけるグロース株の代表的な例は、米テスラ社の株式でしょう。

こういったグロース株投資では、銘柄選定の指標としてPERは適していません。なぜなら、グロース株は高い成長性・将来に対する投資家からの期待が高いため、PERの数値は市場平均よりも高い水準を記録する傾向にあるからです。

逆に、これまでグロース株として扱われていた銘柄のPERが下落傾向にある場合、業績の低迷や投資家からの期待が減少している兆候の可能性があります。

4-4-2.景気敏感株

また「景気敏感株」に関しても、PERは指標として最適とは言い難いでしょう。

景気敏感株とは、景気や経済の動向により、業績が大きく変動する銘柄です。例えば半導体・化学・不動産・鉄鋼・海運業などの銘柄が該当します。

これらの銘柄の株価は、業界の景気が良いときはピークに達した後に下落、反対に景気が悪いときは底打ちした後に徐々に回復するサイクルを繰り返すのが特徴です。。こういった特殊性により、「業績自体は良いが、後に来る景気後退への懸念がが株価にも反映されてPERが下がる」「景気悪化の影響を受けて純利益が大きく減り、株価は底値にもかかわらずPERが上がる」といった現象が発生しえます。

PERのみを参考に割安・割高を判断すると、投資判断を誤る原因となるため注意してください。

5.PERを株式投資の判断軸に

株式投資を始めるなら、ただ単に銘柄を選択するのではなく、株式指標に基づいて判断することが非常に大切です。いくつかの株式指標がありますが、本記事で紹介したPERは株価が割安か割高か判断する指標として古くから活用されています。

グロース株や景気敏感株など、PERを使った投資判断に適さないケースもありますが、バリュー投資や企業価値を判断する際はぜひ活用しましょう。

本記事の内容を参考に、PERの活用方法や注意点を押さえた上で「企業の株価が割安か割高か」「企業価値は高いのか」といった判断に役立ててみてください。

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