「ドル円」はスプレッドの低さやテクニカル指標が効きやすく、初心者から始めやすいペアとして知られています。世界の共通通貨である米ドルと同じく世界トップクラスの経済規模をもつ日本円の通貨ペアであり、その流動性の高さで知られています。2019年時点では1日における外国為替市場全体の13.2%を占め、マーケットで2番目に取引されている通貨ペアとして記録されました。
本記事では、FX取引でドル円を取引するために覚えておきたい為替相場や価格変動要因、情報収集について解説します。ドル円を投資する際に必要な知識、投資タイミングの判断要因について知っておきましょう。
- 目次
1.ドル円とは、貿易や海外旅行への影響も大きい
初めに、ドル円の基本についてご紹介しましょう。
1-1. ドル円とは米ドルと円の交換レート
まず「ドル円」とは、米ドルと日本円という2つの通貨の交換レートを意味します。
ただし「ドル円」と「円ドル」は同じ意味ではなく、どちらの通貨を基準として変換レートを考えるか、という点に違いがあります。
1ドルが130円と仮定すると、ドル円はドルを基準に計算するため「1ドルは130円に交換できる」と考えますが、円ドルは円を基準とするため「1円は約0.007円に交換できる」と考えます。
条約で決められているわけではありませんが、FXの世界ではドル円で取引や計算するのが一般的です。FX取引をこれから始める場合は、経済ニュースなどをドル円で見ることをおすすめします。
1-2.ドル円レート変動の影響
続いては、ドル円レート変動のメリット・デメリットを表でまとめましょう。なお、「円安・ドル高」とはドルと比較して日本円の価値が低い状態、「円高・ドル安」とはドルと比較して円の価値が高くなっている状態を意味します。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
円安・ドル高 | 輸出事業を営む企業の売上上昇、業績への好影響。
インバウンド需要の増加。 |
海外から国内へ輸入する製品やサービスの価格上昇、海外旅行が割高になる等。
エネルギー価格の上昇。 |
円高・ドル安 | 海外の製品やサービスの価格低下、海外旅行が割安になる等。
エネルギー価格の低下。 |
輸出事業を営む企業の円レートでの売上げ減少。
インバウンド需要の減少。 |
日本は自動車や電子製品などの製造業が盛んであり、国内産業の多くが輸出に依存しています。また、原油や天然ガスなどエネルギー資源をほとんど生産できず、食料生産量も十分ではないため、経済に必要な資源や物資の多くを輸入に頼っている状態です。
このように国内経済が外貨、特に米ドルに結びついていることから、円高・円安は国内経済に大きな影響を与える要因となっています。
1-3. 2009年に「円高・株安」が進行した背景
2022~2023年時点では円安が進行していますが、過去には大幅な円高を招いた事例もあります。例えば2009年の民主党政権発足時に急激な「円高・株安」が進行しました。
当時の民主党政権の誕生によって、新政権が主導する「日本の変化」への期待感が高まり、米ドルのみならずユーロ・英ポンド・豪ドル等多くの主要通貨で円買いの動きがあったためとされています。
その際、急激な円高の影響を受け、株式市場は下落を記録しました。要因として、円高が進んだことで自動車・電化製品など輸出関連株の売却が相次いだことが挙げられます。
以下が、当時のドル円のチャートです。2008年頃から2012年頃にかけて、急激に円高が進行したことが見て取れます。
2. ドル円の為替相場とは|概要と変動要因を解説
次に、ドル円を取引する際に理解しておくべき基本、為替変動とその変動要因について解説しましょう。
2-1. 為替変動とは
金など共通の価値基準を持たない現代の通貨の価値は相対的であり、主に需要や供給によって変動します。例えば外貨を円に交換する需要が、円から外貨に交換する需要よりも高ければ、円高になるという構造です。
2-2. 為替相場の変動要因
為替相場の変動要因は、中長期的要因と短期要因に分かれます。それぞれの変動要因を期間ごとに分けて解説しましょう。
中長期的要因としては「政策金利」と「貿易収支」が挙げられます。政策金利が上昇した国の通貨の価値は上昇、下落した国の通貨は下落する傾向があり、これは低金利通貨を売って高金利通貨を買う需要が増えるためです。
また、その国の貿易収支が黒字になると、通貨高となる傾向があります。輸出入の支払いには米ドルが用いられる事が多いため、日本が米国から製品などの輸入を受ける場合、輸入業者は日本円を売って米ドルを買い、その米ドルで支払いを行うため米ドルの需要が増えます。こういった構造から、輸出が増えて貿易収支が増加することが通貨高を招くのです。
続いては、短期的要因について紹介します。短期的要因としては、「中央銀行の為替介入」や「地域紛争」が挙げられるでしょう。
為替介入とは、自国の通貨価値が過剰に上昇・下落することを回避し、為替相場を安定させることを目的として各国の中央銀行が行う通貨売買です。また地域紛争などが起こると、世界情勢への不安感から為替が大きく変動することも少なくありません。
3. ドル円でFX投資を始めるメリット
FX取引を始めるのであれば、ドル円から始めてみてはいかがでしょうか。続いては、ドル円でFX投資を始めるメリットを紹介します。
3-1. スプレッドが低いため、初心者が始めやすい
スプレッドとは、日本円とドルを売買する際の買値と売値の差を指します。スプレッドの仕組みを実際の取引に見立てて解説しましょう。
ドル円で取引した時に、以下のような売値・買値と仮定し、スプレッドの値を計算してみましょう。
売値:107.653
買値:107.987
この場合のスプレッドは、107.987(買値)-107.653(売値)=0.334
0.3銭が取引にかかるスプレッドとなり、トレーダーが負担します。
通貨のペアやFX会社によってスプレッドは異なり、取引量が多い通貨はスプレッドが小さくなる傾向があります。特に人気があるドル円は、FX会社がスプレッドの狭小に力を入れてきたため、比較的狭いスプレッドで取引しやすいのが魅力です。
3-2. 流動性が高い
前述した通りドル円はFX市場でも特に取引量が多いため、流動性が高いというメリットもあります。
FX市場において流動性の高さは市場参加者の多さ、つまり売買の相手方を見つけやすいかどうかを意味します。ドル円のように流動性の高い通貨ペアでは、取引の相手方をスムーズに発見でき、希望する値段での購入・売却が比較的容易となるのです。
3-3. 情報収集が容易
また、ドル円は他の通貨ペアと比較して情報収集が容易と言えるでしょう。米国は日本と政治・経済や文化的に関係が深く、米国の動向はニュースでも頻繁に取り上げられています。そのため、取引にあたって日本語で情報収集する場合でも、情報が得やすい点がメリットです。
4. ドル円の主な価格変動要因
ドル円への投資を検討する場合、一般的な価格変動要因を抑えて、ドル円特有の価格変動要因を理解する必要があります。
4-1. 景気
ドル円の価格が変動する一つ目の要因は「景気」でしょう。たとえば米国が好景気であれば、経済の将来性に対する投資需要が増え、ドル買いが進む傾向にあります。
ここで、米国の景気判断するための指標として「雇用統計」が広く活用されています。日本国内の契機を判断する指標としては、内閣府が発表する「景気動向指数」が一般的でしょう。
2023年時点の動向としては、Appleなどの主要IT企業4社GAFAが大規模なレイオフ(一時解雇)を進めるなど、米国経済の鈍化・停滞が予想されています。
4-2. 政策金利
ドル円の値動きを予想するには、政策金利の動向を確認する必要があります。
基本的な単語として、景気の過熱を抑えるために金利を引き上げることを「金融引き締め」、景気活性化のために金利を引き下げることを「金融緩和」と呼びます。どちらも、主な目的は経済を安定させることです。
2022年以降の動向としては、世界がインフレのために利上げしているにもかかわらず、日本は金融緩和を続けました。その結果、金利が高いドルやユーロを買うために日本円が売られたことが、記録的な円安の要因になったとされています。2022年3月に始まり、1ドル150円に迫った円安・ドル高を受け、同年9月22日に政府・日銀は24年ぶりの円買い為替介入を実施しました。
2023年4月9日には第32代日銀総裁として植田和男氏が就任。なお、4月10日に開かれた就任後初の会見で、同氏は大規模金融緩和策を継続する方針を表明しています。
4-3. 世界各国の情勢
さらにドル円の価格は、世界各国の情勢を受けて変動します。高度にグローバル化されている影響から、ドル円の価格には米国・日本以外の国の動向にも大きく影響を受けている点に留意しましょう。
例えば2022年2月に始まったロシア・ウクライナ間の戦争が起こった際には、有事に強いとされるドルを買う動きがあり、それに伴って日本円がドルに比して下落しました。
5. ドル円の情報を収集する3種類の方法
FX取引で成果を上げるためには、為替変動要因となる情報を的確に収集する必要があります。そこで最後に、ドル円の情報を収集する3種類の方法を解説しましょう。
5-1. FX情報サイト
まず、FX情報を発信しているニュースサイト・アプリを確認しましょう。こういったサイトは数多く存在しますので、まずは信用性が高い情報を迅速に提供している情報源を見つけることが大切です。世界の金融市場や経済、為替の流れをつかめるようにもなります。
5-2. TwitterなどSNS
FXに強いトレーダーや、FX情報サイトが運営するSNSアカウントから情報収集する方法です。リアルタイムで発信している運営者も多いため、時事性の高い最新情報をいち早く得られる点が魅力です。
なお、問題なく英語が理解できる場合は、英語での情報収集がお勧め。日本語への翻訳を待つことなく、米国を含む世界各国の情報にアクセスが可能となります。
6. 「ドル円」から始めるFX取引
ドル円は、日本人にとってなじみ深く情報収集も比較的容易なため、FX初心者でも取引できる通貨ペアとして知られています。他にも、スプレッドが狭い・流動性が高いなどのメリットも。
FX取引を始める際は、本記事で解説した政策金利や中央銀行の為替介入などの変動要因を念頭に、ニュースサイトやSNSからの情報を追いましょう。まずは第一歩として、ドル円の取引を初めてはいかがでしょうか。
関連:「SBI FXトレード」が仮想通貨投資家にもおすすめできる理由