確信ある賭け
Web3プロトコルの研究開発を行うDelphi Labsのホセ・マリア・マセド最高経営責任者(CEO)は、イーサリアム基盤のDeFiプロトコル「Ethena」が全暗号資産(仮想通貨)において、最高の収益を生み出すプロジェクトになるだろうと主張した。
マセド氏は、仮想通貨への投資に特化したベンチャーキャピタル「Delphi Ventures」の創設者でもある。同氏は2日に公開された自身のブログで、「Ethenaは、Delphi Venturesとしても個人的にも、このサイクルで最も確信を持って、賭けたものの一つだ」と述べ、その根拠として以下の三点を挙げた。
- sUSDeは仮想通貨の中で、大規模に最も高いドル利回りを提供する
- USDeは2024年にUSDC/USDTに次ぐ最大のステーブルコインとなる
- Ethenaは仮想通貨全体で最高の収益を生み出すプロジェクトとなる
Ethenaは、ETHのステーキングで、利子が分配されるステーブルコイン「USDe」を発行するプラットフォーム。DragonFlyやアーサー・ヘイズ氏個人、バイナンスラボ、OKXベンチャーズなどが出資している。
「合成(シンセティック)ドル」とも呼ばれる EthenaのUSDeトークンは、LidoのstETHなどのETH流動性ステーキング・トークン(LST)を裏付け資産として使用し、デリバティブ取引所で等価のショート(空売り)ETH無期限先物ポジションと組み合わせることで、USDeの1ドルの価値を維持し、投資家に安定した利回りを提供する。
Ethenaのネイティブトークンが急騰
Ethenaのネイティブトークン「ENA」は2日に対象者向けにエアドロップされ、バイナンスやBybit、KuCoinなど複数の取引所に上場。約0.64ドルの価格で取引が開始されたが、日本時間4日午前2時には1.22ドルと2倍に急騰。執筆時現在、1.04ドルで取引されている。
出資者であるBitMEXの元CEO、アーサー・ヘイズ氏は、Ethena Labsのプロジェクトを高く評価しており、ENAの価格は10ドルまで上がるだろうと強気の発言をした。
Congrats @ethena_labs on a successful TGE. If this is what $ENA is worth what the market is puking, imagine how high it will go once we resume up only!$ENA = $10
— Arthur Hayes (@CryptoHayes) April 2, 2024
It’s just math yo … pic.twitter.com/rKGW7ofHzi
Ethenaは2日、USDeの保有者に対し、総供給量の5%に相当する7億5,000万ENAのエアドロップを開始した。Xの投稿によるとすでに72%の即時確定請求分が請求済みだが、30日の請求期間が終了すると、報酬は他のユーザーに再分配されるという。
Arkham Intelligenceのデータによると、中にはエアドロップで約200万ドル(3億円)相当のENAを受領した保有者もいたようだ。
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優れたステーブルコインとして評価
マセド氏は、「ステーブルコインは依然として仮想通貨のキラーアプリの一つだ」と主張。市場はステーブルコインに利回りを求めていることを示してきたが、Ethenaが提供するUSDeは、その要望に応えるのに適した設計になっていると、その仕組みを解説した。
ステーブルコインにはテザー(USDT)やUSDCなどの法定通貨に裏付けられたもの、DAIなど過剰な担保に裏付けられたもの、またRIPのようにアルゴリズムに基づいて発行されるものなどがあるが、それぞれ一長一短であり、分散化、安定性、スケーラビリティと資本効率性のトリレンマ全てに対処できていないと、同氏は指摘した。
一方、USDeは安全性とスケーラビリティの面で優れていると次のように述べた。
私の見解では、USDeはこれまでに作られた中で最もスケーラブルな完全担保型ステーブルコインだ。完全な非中央集権型ではないし、今後もそうなることはないが、それでも得失評価の分布においては、非常に興味深いポイントに位置していると思う。
同氏は、ステーブルコインは「1,000億ドル(15兆円)の好機」であり、利回りの規模でEthenaに対抗することは難しいだろうと付け加えた。
Ethenaの公式サイトによると、USDeは現在、11万8,000人超のユーザーに35.4%の年利を提供している。
USDeの現在の時価総額は約19.77億ドル(2,999億円)。ステーブルコインでは第5位にランクインしている。(CoinGeckoデータ)
リスクへの懸念も
これまで高利回りのステーブルコインは存在していたが長持ちせずに破綻してしまう事例もあった。テラのUSTがその代表例だ。
2020年DeFiブーム時に脚光を浴びた開発者・Fantomの創設者アンドレ・クロニエ氏はSNSで、「今は市場が上向きで、ショートの資金調達率がプラスなので、まだ問題はないだろう。ただ、今後状況が逆転すれば、資金調達率がマイナスになり、ポジションの担保が清算され、裏付けのない資産になってしまう可能性がある」と指摘した。
これに対し、Ethenaのガイ・ヤング創設者は海外メディアCointelegraphの取材でこうした懸念は2022年のテラ崩壊から立ち直り成熟しつつある業界に対する健全な懐疑心だと指摘し、USTのAnchorプロトコルの高利回りは人為的に吊り上げられたものだったが、「ステーキング収益とETH永久先物契約の空売りポジションによって生み出されるUSDeの利回りは公開検証可能だ」と説明したという。
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