利益が多いときは年内に損切りすべき?年末の納税売りの効果
確定した利益がある程度存在する状態で、年末に保有している株や外貨、仮想通貨(暗号資産)を売却して日本円に変え、納税に備える「納税売り」という風潮が一部にはあるとされていますが、ただ単純にすべてを売却するだけでは何もメリットが無く、かえってデメリットが生じてしまいます。
確定申告と税金のことを考えると、「含み損を確定させて、実現利益(=所得)をゼロに近づける」というのが年末におけるベストな状態になります。実現利益が小さくなれば、それだけ支払う税金も少なくなり、金額次第では確定申告も不要になります。
このように利益を小さくするために損切りする手法を「損益圧縮」といい、高い節税効果が期待できます。年末までにある程度売却して整理したいという場合には、含み益や含み損を気にせずにすべて売り払うのではなく、現在の実現利益の額を上手く相殺できるように調整することを心がけてください。
では、損益圧縮を目的とした仮想通貨の納税売りのメリット・デメリットを詳しくみていきましょう。
納税売りのメリット
先にも述べた通り、実現利益を小さくすることを目的とした納税売りは節税につながります。もし売却した仮想通貨を翌年も保有したいという場合は、売却してすぐに買い戻すことで、実現利益は小さいままで、保有している数はほぼ変わらないという状況にすることが可能です。
ほかにも、すでに動きが無い通貨の整理ができる丁度良いタイミングになることもメリットのひとつでしょう。多少損をして売ってでも別の通貨に買い替えたい通貨があったり、完全に赤字となっているが塩漬けとなっているものがあったりするのであれば、これを機に年末までのうちに損切りして整理してしまいましょう。
納税売りのデメリット
すでにある利益を含み損を確定させて相殺していく場合には、大きなデメリットはありません。しかし、利益を大きく上回るほどに損切りしてしまうと、仮想通貨取引で生じた損失は翌年に持ち越すことができないため、もったいない状況となってしまいます。
すべての含み損を確定させるのではなく、あくまで利益と丁度相殺される程度まで確定し、それでも残る含み損は翌年に確定させた利益の状況を見て相殺していくというように、持ち越すことも考えると良いでしょう。
納税売りするときの注意点
納税売りをするときの注意点として、まず正確な損益を算出しておくことをおすすめします。仮想通貨取引で生じた所得は「移動平均法」と「総平均法」の2種類の計算方法どちらかを用いる必要があり、計算方法によって最終的な損益は同じになるものの、年度ごとの所得額は変わります。
ここで算出した損益に対して、年末に含み益・含み損をどれだけ確定させるかを判断することになるため、なるべく正しい確定損益を計算する必要があります。
実際どれだけの節税効果がある?納税売りのケーススタディ
例として次のシチュエーションで考えてみましょう。
12月末までで全体で200万円の利益がある。しかし、2月に100万円で購入して放置していたAコインが年末時点で30万円になっていることに気づいた。ここでAコインをすべて売却して「損出し」した場合、全体の利益額はいくらになる?
このとき、最終的な利益は「130万円」となり、仮に他の所得・経費等が無いとすると、この金額が所得として課税対象になります。
税金計算をシンプルにするための全額円転はあり?
確定申告の際の利益の計算をシンプルにしたいという理由で、年末に保有している仮想通貨をすべて売却して円に変える方がSNSを中心によく見受けられます。
確かに、すべての仮想通貨を売却することで利益の計算はシンプルになります。しかし、今年のような上げ相場だと売却時にすべての仮想通貨で利益が確定し、結果的に支払う税金が大幅に増える可能性が高いでしょう。
年末までの売却は利益と損失のバランスを考えて
年末までに含み益だけを確定させてしまうと、それだけ所得も増え、かえって支払う税金が高くなってしまいます。
そのため、年内に売却して問題ないのは「実現させた利益と同じ程度の赤字分」となり、それを超えてしまう含み損と含み益については翌年に持ち越した方が良いと考えられます。含み損・含み益の状態であれば、税金もかかりません。
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