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*本レポートは、暗号資産税金計算ツール「Gtax」を提供するAerial Partnersが、CoinPostに寄稿した記事です。
仮想通貨の確定申告手順を詳しく解説
初めて確定申告をする際は特に、確定申告に対して心理的な負担を感じる方も多いのではないでしょうか。以前は書面を税務署へ持参する、あるいは郵送するのが主流でしたが、近年はオンライン化が進み、パソコン(以下、PC)やスマホからも申請できるようになりました。
そこで本記事では、暗号資産(以下、仮想通貨)に関する確定申告の流れや必要書類、やり方をPC・スマホ別に解説します。これから確定申告される人はぜひ参考にしてください。
仮想通貨の確定申告の流れ
確定申告とは、所得税を計算して申告する手続きのことです。毎年1月1日〜12月31日までの1年間で得た所得額を計算し、納める必要がある所得税の金額を求めて税務署に申告、納税します。
なお「所得」とは、収入のことではなく「収入から経費を差し引いた金額」です。
確定申告は、毎年原則2月16日〜3月15日までが申告期間となっているため、期限内に確定申告書を作成して提出しましょう。スムーズに作成・提出するためには、日頃から帳簿や取引履歴をつけておくことが大切です。
確定申告が必要な人
以下に該当する場合、確定申告が必要です。
- 副業の所得が20万円を超える会社員などの給与所得者
- 給与収入が2,000万円を超える会社員などの給与所得者
- 2か所以上からの給与があり、年末調整をしている給与のほかに、年末調整をしていない給与収入が20万円を超える会社員などの給与所得者
- 所得が48万円(基礎控除額)を超える主婦(夫)、学生、フリーランスなど
- 不動産収入や株取引による譲渡益が48万円を超える人
- 懸賞金などの一時所得が一定以上ある人 など
一般的な会社員の場合、仮想通貨による所得が年間20万円を超えると、確定申告が必要になる可能性があります。
上記のように、給与所得がなく家族の扶養に入っている主婦(主夫)や学生でも、仮想通貨による利益が基礎控除額の48万円を超えたら確定申告が必要です。
申告方法は「青色申告」または「白色申告」
確定申告の書面には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、帳簿のつけ方が異なります。
青色申告 … 複式簿記で記帳を行うもの。事業の赤字を最大3年間繰り越せたり、最大65万円を所得から差し引けたり(青色申告特別控除)と、節税につながるメリットがある。事業所得・不動産所得・山林所得のみ対象
白色申告 … 簡易簿記で記帳を行うもの。事前の申請や手続きが必要なく、簡易的な記帳が認められているため、会計知識がない人でも取り組みやすい
仮想通貨取引での所得は、原則「雑所得」に分類されるため、青色申告はできません。会社員で副業として仮想通貨投資をしているような方は、ほとんどのケースで白色申告になるでしょう。
ただし、一定の利益があり、帳簿もしっかり保存されているケースなどでは、「事業所得」として認められることがあります。仮に仮想通貨取引が「事業所得」と認められた場合には、青色申告の選択が可能です。
青色申告を選択するには「青色申告承認申請書」の提出が必要になるので、対象となる年の3月15日までに管轄の税務署に提出しましょう。オンライン申請も可能です。
所得税の計算方法
所得税の金額は「課税所得×税率-控除額」で計算します。以下の手順で算出しましょう。
【計算する手順】
- 年間の収入を計算する
- 収入から経費を差し引く
- さらに所得控除を差し引く(扶養控除や医療費控除など)
- ③で算出された課税所得に対して決められた税率をかける
- 税率をかけた金額から税額控除を差し引く(寄附金控除や住宅ローン控除など)
税額控除を差し引いたあとの金額が、最終的に納める所得税額です。
所得税の税率は、以下のように決められているため、課税所得額と照らし合わせて記載されている税率をかけてください。
【所得税の速算表】
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参照元:No.2260 所得税の税率|国税庁
仮想通貨で課税されるタイミング
仮想通貨は、保有しているだけでは税金はかかりません。課税の対象となる所得が発生するタイミングとして、以下のようなタイミングが挙げられます。
- 仮想通貨を売却したとき
- 仮想通貨で決済したとき
- 仮想通貨同士を交換したとき
- マイニングなどで仮想通貨を取得したとき
たとえば、「ビットコインを売った」「ビットコインを使って商品やサービスを購入した」「保有しているビットコインで他の仮想通貨を購入した」「マイニングなどの成功報酬としてビットコインを取得した」ときなどに課税対象となる所得が発生します。
仮想通貨の利益の計算式
仮想通貨の利益の計算式は、「売却価格-(取得単価×売却数量)」です。取得単価(仮想通貨1枚あたりの原価)は「移動平均法」または「総平均法」のどちらかを選んで算出します。
移動平均法 … 仮想通貨を購入するたびに平均単価を算出する方法
総平均法 … 1年間の取引を年末などにまとめて1回計算し、平均単価を算出する方法
移動平均法では、購入時点での金額がその都度反映されるため、手間はかかりますが実際の利益を把握しやすいメリットがあります。総平均法は反対に、1回の計算で済むので計算の手間はそれ程かかりません。その代わり、年間の取引をまとめて計算することになるので、そのぶん実際の利益との誤差が生じやすくなる側面があります。
個人の場合、基本的には「総平均法」が適用されています。移動平均法へ変更したい際は、評価方法の届出を提出しましょう。
仮想通貨の利益計算を行う3つの方法
仮想通貨の利益計算には、以下の3つの方法があります。それぞれの特徴を理解し、自分に合った方法を選びましょう。
1. 国税庁の計算書を利用する
国税庁が公表しているエクセルシートを無料で利用できます。ただし、エクセル作業に慣れていない場合や、取引量が多い・複雑な取引を行っている場合は、計算が難しくなることがあります。
2. Gtaxのような税金計算ツールを利用する
無料から数万円で利用でき、専門知識が不要。取引所からダウンロードした取引履歴をアップロードするだけで自動計算が完了します。ステーキングやDeFi(分散型金融)などの最新の取引にも対応しており、初心者から上級者まで幅広く利用可能です。
関連:暗号資産(仮想通貨)の確定申告ツール「Gtax」、2週間無料トライアルを開始
3. 税理士に依頼する
費用は20万円以上かかることが多いものの、利益計算から確定申告書の作成・提出までを任せられます。利益が大きい方や、手間をかけずに確実に申告したい方におすすめです。
仮想通貨の確定申告で必要な書類は?
仮想通貨の確定申告をする際は、以下の書類が必要です。
- 確定申告書
- 源泉徴収票(給与所得者の場合)
- 各種控除を証明する書類(医療費控除の明細書、生命保険料控除証明書など)
- 本人確認書類の写し(郵送の場合は添付する)
確定申告書は、国税庁のホームページからダウンロードできます。源泉徴収票や各種控除の証明書類などは、申告書に記載する際に必要になるため手元に用意しておきましょう。
取引履歴や利益計算の根拠書類は必要?
確定申告書の提出の際は、取引履歴や利益の計算書類の添付は義務付けられていませんが、税務調査が入った際に提示を求められることがあるため、これらの記録を適切に保管しておく必要があります。
仮想通貨の確定申告のやり方
ここからは、国税庁の「確定申告等作成コーナー」から手続きする際の流れを、実際の手続き画面を交えながらスマホ、PCの順で紹介します。
スマホで仮想通貨の確定申告をする手順
まず、スマホのブラウザで「確定申告書等作成コーナー」にアクセスします。新規で申告書を作成する場合は「作成開始」をクリックしましょう。
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次に、作成する申告書を選び、質問に答えていきます。
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すべての質問に答えたあとは、収入金額・所得金額・所得控除の入力に移ります。それぞれ金額を入力していきましょう。
【収入・所得金額】
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先の「申告内容に関する質問」の中で回答した所得への入力ができる画面に切り替わります。このうち、仮想通貨に関する確定申告を行う際は「雑(業務・その他)」を選択していると、上図のように「その他の収入がある方」の欄に雑所得用の入力欄が表示されるので、こちらをタッチしてください。
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雑所得の入力画面に変わったら、種目を「暗号資産」に設定し、必要事項に入力していきます。業務に該当するか否かに関する質問について、事業として仮想通貨投資を行っている場合は「該当する」を選び、そうではない場合は「該当しない」を選択します。
以降必要情報を入力していきますが、「支払者の所在地又は所得の生ずる場所」には自宅の住所を、「支払者の氏名又は名称」には利用している仮想通貨取引所の名称やサービスを入力しますが、複数の取引所やサービスを利用している場合は「仮想通貨取引所等」と入力してください※。
※仮想通貨の損益計算の性質上、取引所ごとに所得額を算出するのが難しい(または不可能)ため、このようにまとめて記入するのが一般的とされています。
【給与所得】
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【所得控除】
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【税額控除】
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続いて、住民税等に関する質問事項が表示されるので、回答していきましょう。回答が終わったら「次へ」をタップします。
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次の画面では、還付金受取方法の選択・納付方法の案内画面が表示されます。還付金がある場合は、口座情報を入力し、受取方法を選択しましょう。納付する場合は、納付方法を選択します。
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続けて、住所・氏名等の入力画面に進み、案内に沿って入力します。
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次の画面でマイナンバーを入力します。
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入力が完了したら送信画面へ進みます。送信前の申告内容が確認できるので、誤りがないか確認しましょう。
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「次へ」進んでいくと、送信前の最終確認の案内が表示されます。「送信を実行する」をタップしましょう。正常に送信が完了すると次のように「送信完了」の表示が出るので、「閉じる」をタップして終了します。
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より詳細な解説を見たい場合は、国税庁の資料も参考にしてみてください。
引用:国税庁「確定申告書等作成コーナー ご利用ガイド スマホ版」
PCで仮想通貨の確定申告をする手順
PCから確定申告を行う手順も紹介しましょう。
まず「確定申告書等作成コーナー」へアクセスし、「申告書等を作成する」の項目内にある、「作成開始」をクリックします。
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次の画面では、税務署への提出方法を選択します。
- マイナンバーカードを利用してe-Tax送信する方法
- ID・パスワード方式を利用してe-Tax送信する方法
「ID・パスワード」は、税務署から発行される「ID・パスワード方式の届出完了通知」に記載されています。
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次に、申告書を選択します。
- 給与収入がある方で、医療費控除や寄付金控除などを受ける場合は赤色
- 事業所得や不動産所得があり、青色申告決算書を作成する場合は青色
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続いてマイナポータルと連携するか否かを選択します。なお、マイナポータル連携の選択は、マイナンバーを利用したe-Tax送信のみ利用可能です。「ID・パスワード方式」では利用できないので注意してください。
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ここまでの事前準備が完了したら、e-Taxへログインします。ログインすると、e-Taxへ登録されている情報が表示されるので、確認しましょう。
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次の画面に進むと、今度は申告内容に関する質問事項が表示されます。「はい」または「いいえ」で回答しましょう。
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次へ進んで、各種金額を入力していきます。
【収入金額・所得金額】
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PCの場合もスマホと同様に、雑所得の種目を選択し、各種入力していきます。
【所得控除】
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【税額控除】
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税額控除まで入力すると、納付する金額が自動集計されるため、内容に誤りがないか確認しましょう。住民税等の入力が必要な場合は「住民税・事業税に関する事項」をクリックして入力します。
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入力が完了したら次に進みましょう。計算の結果、還付される金額がある場合は還付金受取方法を選択します。納付する金額がある場合は、納付方法に関する案内が表示されます。
【還付金がある場合】
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【納付額がある場合】
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続いて、「住所・氏名の入力」と「マイナンバーの入力」を行います。
【住所・氏名】
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【マイナンバー】
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次に進むと、送信前の申告内容確認画面に移ります。誤りがないか確認し、次へ進みましょう。
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次の画面では、「税理士等に関する入力」や「登記情報に関する入力」といった特記事項があるか問われます。特記事項がない場合は「いいえ」を選択して次へ進みます。
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申告書送信画面です。「送信を実行する」をクリックし、正常に送信が完了すると、「正常に送信が完了しました」と表示されるため、「閉じる」をクリックして終了しましょう。
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より詳細な解説は国税庁の資料に掲載されているので、あわせてご覧ください。
引用:国税庁 確定申告書等作成コーナー ご利用ガイド パソコン版
まとめ
仮想通貨による所得が一定以上ある場合、その年度の確定申告が必要になります。まずは、自分が確定申告者に該当するかどうか、確認してみましょう。
確定申告の期間は原則、毎年2月16日~3月15日までと決められています(土日をまたぐ際は後ろ倒し)。とはいえ、申告するには所得額の計算が必須であり、損益計算から申告手続きまでを1日で終わらせるのは容易ではありません。
スムーズに申告を行うには、「日頃から記帳をしておく」「経費の領収書を保存しておく」といった事前準備が大切です。仮想通貨を行う際は、仮想通貨取引所にて「取引履歴」や「年間取引報告書」をダウンロードしておき、今後の確定申告に備えておきましょう。
確定申告特集
【確定申告特集1】知っておきたい仮想通貨にかかる税金を税理士が解説
【確定申告特集2】課税の対象となる利益はいつ発生する?損益発生のタイミングについて
【確定申告特集3】仮想通貨の損益計算 移動平均法・総平均法について解説