- 現行設計は「貨幣の信頼」の基準を満たさないと警告
- 次世代通貨システムの鍵は「統合台帳」構想
BIS、ステーブルコインの構造的欠陥を正式に認定
国際決済銀行(BIS)は28日に公表した2026年版年次経済報告書のなかで、ステーブルコインの現行設計が「貨幣としての信頼を担保する核心的な要件を満たしていない」と正式に結論づけた。
パブロ・エルナンデス・デ・コスBIS総裁は「デジタルイノベーションを既存の金融インフラに組み込むことで、信頼を損なわずに貨幣と金融システムの未来を形作ることができる」と述べ、各国当局による国際的な連携の必要性を強調した。
報告書の第3章「貨幣への信頼を碇とする:ステーブルコインを超えたイノベーション」は、ステーブルコインが直面する技術的・制度的な問題を体系的に整理している。
BISは特に「一性(singleness)」、すなわちすべての形態の貨幣が中央銀行マネーと等価で交換可能であるという性質の欠如を最大の問題点として挙げた。
パブリック型のパーミッションレスブロックチェーン上で流通する現行のステーブルコインは、元本の完全な償還可能性や異なるブロックチェーン間の相互運用性においても課題を抱えているとした。
関連記事:BISがステーブルコイン国際協調を「不可欠」と訴え、規制分断と途上国ドル化リスクを警告
国際決済銀行のデ・コス総裁が東京で、ステーブルコインの国際規制協調が「極めて重要」だと強調。規制格差による市場分断と途上国への資本流出リスクを具体的に指摘しており、投資家にとって今後の制度設計の行方が焦点となる。
広範普及がもたらすマクロ金融リスク
報告書は、ステーブルコインが広く普及した場合に生じ得るマクロ経済的影響についても詳述している。家計によるステーブルコイン需要の増大は銀行の資金調達を不安定化させ、信用供給の縮小や金融安定へのリスクをもたらす可能性があるとBISは指摘する。
一方で、ステーブルコイン発行体による国債購入の増加は発行国の財政余地を拡大する効果も見込まれるとした。ただし、これらの影響の大きさはステーブルコインの普及規模、設計内容、規制のあり方に大きく依存するとし、現時点では不確実性が高いとの見解を示した。
新興国・途上国における「ドル建てステーブルコインへの高い需要」が引き起こす通貨主権の侵食リスクも警告の対象となった。現在流通するステーブルコインの大半が米ドルにペッグされている構造を踏まえ、マクロ経済の基盤が相対的に脆弱な国々では資本フローの変動が激しくなり、自国の金融政策の有効性が損なわれる可能性があるとBISは述べた。
ステーブルコインによる事実上の「ドル化」を防ぐ手段として、財政・物価・金融安定の各面で健全なマクロ政策の枠組みを維持することが重要だとした。
こうした課題への対応策としてBISが提唱するのが「統合台帳(Unified Ledger)」構想だ。これは、中央銀行マネーを錨(いかり)としつつ、さまざまな形態のトークン化されたマネーを単一のプログラマブルプラットフォーム上に統合する仕組みを指す。
BIS革新ハブが主導する「プロジェクト・アゴラ(Project Agorá)」がその先行モデルで、8つの中央銀行と40超の民間機関が参加し、トークン化された商業銀行預金と中央銀行準備金を統合した決済プラットフォームの試験運用が進んでいる。BISは「技術革新の恩恵を引き出しながら、貨幣への信頼を守るために不可欠な道筋だ」としている。
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