- AI普及で仮想通貨需要が拡大すると分析
- AIエージェントの決済に必要な仮想通貨が次なる投資テーマ
AIの進化と投資対象
米資産運用大手フランクリン・テンプルトンは21日、デジタル資産・イノベーション責任者のサンディ・カウル氏による論考「エージェント型AIーブロックチェーンと仮想通貨のキラー・ユースケース」をX上で公開した。
エージェント型AIの普及は、仮想通貨とブロックチェーンをAI投資の新たな成長分野へと押し上げると、カウル氏はみている。
AIの登場は、近年の株式市場において最も巨大な投資トレンドを創出してきた。現在のS&P500は、AI関連の上位10銘柄だけで総時価総額の約40%を占めており、その集中度はドットコム・バブル期以来の高水準にある。
機関投資家は、半導体やデータセンターといったAIインフラ関連株へ積極的に資金を投入している。しかしカウル氏は、こうした従来の株式主導の投資アプローチだけでは、エージェント型AIがもたらす次なる成長機会を十分に取り込めない可能性があると語る。
生成AIが初期のAIツールから飛躍的な進化を遂げたように、エージェント型AIは、我々の日常生活にさらに大きな影響を与えると、カウル氏は予測する。エージェント型AIは、プロンプトに応じて、テキストや画像、コードを生成する生成AIとは異なり、「環境を感知し、計画を立案した上で、複数ステップのタスクを自律的に実行して高次の目標を達成する」自律的なシステムへと進化する。
Capgeminiの予測によれば、2028年までに38%の企業がAIエージェントを「人間のチームメンバー」として活用するという。AIエージェントは今後、タスクの開始・追跡・遂行、そして結果の管理に至るまで、より多くの取引を自律的に担うようになると見込まれており、エージェント型商取引の市場規模は2030年までに、3兆〜5兆ドルに達する公算が大きい。(Nevermined推計)。
このような取引や決済は、今後企業向けソフトウェア内で行われる可能性が高く、2028年までに提供されるソフトウェア製品の33%にエージェント型AIが搭載され、日常的な意思決定の最大15%がAIエージェントによって処理されるようになると予測されている。
こうしたマシン間の自動決済を支えるインフラ整備も急速に進んでいる。ビザやStripeによるマシン間決済プロトコルの構築に加え、コインベース発のオープン規格「x402」には大手決済企業・グーグル・AWSなどWeb2企業と、複数のWeb3企業が参画し、人の介在なしに「ソフトウェアがソフトウェアに支払う」仕組みが整いつつある。
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マシン間決済におけるブロックチェーンの優位性
AIエージェント同士が自律的に決済を行うマシン間(M2M)取引を実現するには、安全で自律的、かつ高スループット(処理能力)を備えた記録保持の仕組みが不可欠となる。
AIエージェントによる典型的な取引(単一のデータ照会や1秒間の計算リソース購入)はわずか0.001ドル程度の超少額決済となる。そのため、2〜3%に加え約0.30ドルの固定手数料が発生する従来のクレジットカード決済は、こうした高頻度・超少額決済には適していない。
カウル氏は、ブロックチェーンおよび仮想通貨インフラこそがAIエージェントの自律的な経済活動を支える決済基盤に最も適していると主張する。その根拠として以下の特徴を挙げた。
- 自律的な契約の生成・履行:AIが生成する単一使用トークンに取引ルール(加盟店制限、支出上限、有効期間)を埋め込み、スマートコントラクトのように自動実行・無効化する。
- 分散型デジタルID:暗号学的に検証可能なAIエージェントIDを使用。エージェントが生成する各トークンに認証情報を含め正当性を確認する。
- 監査可能性:すべての決定・取引を改竄不可能な台帳に記録し、透明性と追跡可能性を確保する。
- 分散型コンピューティング・データアクセス:中央集権型クラウド依存を減らし、GPUネットワークなどの分散リソースを活用。AI運用コストを低減する。
トランザクションの処理速度において、ビットコイン(約7TPS)やイーサリアム(約75TPS)といった主要チェーンに対し、アプトス(最大12,933 TPS)、ソラナ(6,284 TPS)、BNBチェーン(3,252 TPS)などが高いスループットを実現している。
これは、通常時に毎秒1,700〜10,000件を処理するビザと同水準とされるが、両者には本質的な違いがある。ビザは取引情報の記録するのみで、実際の資金決済には1〜3営業日を要するのに対し、ブロックチェーンは記録と決済をほぼ同時に達成する。
こうした特性を踏まえ、カウル氏は、エージェント型AIが消費者向け取引の領域で潜在力を発揮する上で、ブロックチェーンが極めて重要な役割を果たすと指摘する。さらに、今後のエージェント型AIの発展こそが、ブロックチェーンの普及を牽引する「キラー・ユースケース」となる可能性が高いと述べた。
AI普及が仮想通貨需要を押し上げる可能性
カウル氏は、エージェント型AIの普及が仮想通貨市場にも直接的な需要を生み出すと予測する。
AIエージェントがブロックチェーンを利用する場合、ネットワーク手数料(ガス代)の支払いには各チェーンのネイティブトークンが必要となる。例えば、ソラナ上で取引を行うにはSOLを保有する必要があるため、AIエージェントによる取引量が増えれば、ネイティブトークンへの需要も拡大する可能性がある。
さらに、ネットワーク利用料の増加は各ブロックチェーン財団の収益拡大につながる。財団はその資金を開発者向け助成金やバグ報奨金、バリデーターへの報酬として還元できるため、新たなアプリケーションやプロジェクトの開発が進み、エコシステム全体が成長する好循環が生まれると同氏は分析する。
そのほか、AIエージェントが自律的な決済や操作を代行することで、ユーザーに仮想通貨を意識させずに、「Web2並みの利便性」と「Web3独自の所有権」を両立させることも可能になると、同氏は見ている。
今後、AIエージェントの普及によって起きる変化は、ウェブサーバーや静的なウェブサイト(Web1)から、クラウドベースのビジネスやインタラクティブなアプリの普及(Web2)へと移行した流れに似ていると指摘する。かつてクラウドやモバイル企業がインターネットの新たな成長を牽引したように、今後はブロックチェーンと分散型アプリケーション(dApps)が次世代インターネットの基盤になるとの見方を示した。
この変化を、カウル氏は次のように例える。中央集権型企業では株式が企業価値を表すのに対し、分散型ネットワークではネイティブトークンやアルトコインが価値を担う。そのため、分散型エコシステムが生み出す価値を享受するには、当該ネットワークのネイティブトークンや関連する仮想通貨を保有することが重要になると見ている。
特に、エージェント型AIの成長機会を捉えようとする投資家にとっては、こうした仮想通貨がポートフォリオの中核資産の一つとなる可能性が高いと結論付けた。
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