分散型台帳技術を高く評価
香港証券先物委員会(SFC)のJulia Leung最高経営責任者は5日、「ビットコインは明らかに代替資産としての持続力を示している」と述べた。
香港グリニッジ経済フォーラムで行ったスピーチでLeung氏は、分散型台帳技術(DLT)は現実資産(RWA)を「効率的かつ安全に振替するために急速に発展する基盤技術」として、グローバル金融で多くの有益な用途があると評価。一方、DLTの金融市場におけるユースケースである暗号資産(仮想通貨)に本質的な価値があるかについて、ほとんどの中央銀行家や経済学者が否定していると述べた。
Leung氏は、この見解に反対するものではないが、本質的な価値の議論は続くだろうと次のように述べた。
15 年経った今、ビットコインは好不況のサイクルを何度も乗り越え、代替資産としての持続力を明確に示してきたことは事実だ。
さらに、同氏はビットコインの基盤となる技術のDLTには、RWAの流通、清算、決済、保管における効率性を高め、コストを削減する可能性があると、DLTの有用性を強調した。
RWAのトークン化
Leung氏は、RWAのトークン化は、より広範な金融包摂、分割化、保管、所有のすべてをブロックチェーン上で実現する可能性があると指摘し、以下のような具体的なメリットを挙げた。
- 金融包摂:RWAの細分化により、投資家の参入障壁が下がり、投資へのアクセスが容易になる
- ユーザーの透明性とプライバシーを同時に高める:所有権と譲渡モデルの共有に暗号技術の使用
- 決済効率向上とコスト削減
- 譲渡の可能性:例=名画のトークン化により、部分的所有権の取引や担保設定が可能になる
金融サービスにおけるトークン化
Leung氏は、上記のようなメリットと効率性の向上は、金融サービスにも適用可能だと考えている。トークン化により、債券やマネー・マーケット・ファンドのような伝統的な資産の一次発行、流通市場での取引、保管、抵当権の設定を、すべてブロックチェーン上で行うことが可能なると同氏は主張する。
しかし、これは「金融の未来のビジョン」であり、実現に結びつけるためには、多くの課題があると指摘する。金融機関や国境を超えたブロックチェーンの相互運用性、ファイナリティや国際決済、法律との関係も考慮しなくてはならない。
トークン化を奨励
SFCは今後3年間の戦略的優先事項の一つとして、「テクノロジーを通じて金融市場を変革すること」を挙げているとLeung氏。イノベーションと規制は連携すべきだとの信念を持っていると強調した。
SFCはトークン化を奨励しており、トークン化は「株式、債券、ファンドのような伝統的な金融商品をテクノロジーで包むもの」と考えているという。
革新的なテクノロジーを責任を持って活用することで、金融業界の効率化が促進され、香港において持続可能なWeb3エコシステムが育つと信じている。
SFCは香港におけるWeb3エコシステムの発展に対して多大なサポートを表明しているが、Leung氏はこのようなサポートは、仮想通貨を同様に支持するものと捉えるべきではないと釘を刺した。
現在の状況において仮想通貨は「極めて投機的な性質を持ち、価格変動が激しい」ことから、投資家の需要に応えつつ、投資家保護に幅広い安全策を講じていると付け加えた。
香港の取り組み
香港ではDLT技術を利用した金融商品が次々に認可されてきた。
昨年2月には、世界初の政府発行によるトークン型の環境債(グリーンボンド)を発行。さらに今年2月に第二回目の発行も行われ、合計68億香港ドル(約1,356億円)のグリーンボンドは世界から幅広い投資家が申し込み、大成功を収めたという。
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SFCは、個人投資家向けのトークン化投資商品として、金(ゴールド)トークンを認可。各トークンは0.001トロイオンスの金で裏付けられており、金の現物は発行する銀行の金庫に保管される。
さらに今年4月30日には、香港証券取引所に、 ビットコイン(BTC)と イーサリアム(ETH)の現物ETF(上場投資信託)が上場。5月31日現在、提供されている六つのETFの時価総額はは3億100万米ドル(469億円)に達し、上場以来の1日あたりの取引高は580万米ドル(9億円)で好調だとLeung氏は報告した。
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Leung氏はトークン化の次の段階は、規模を拡大することであり、その中心となるプロジェクトとして、今年3月に香港金融管理局(HKMA)によって開始されたProject Ensemble(プロジェクト・アンサンブル)を紹介した。
このプロジェクトは、ホールセール型CBDC(wCBDC)を通じて、トークン化されたマネーの円滑な銀行間決済を促進する金融市場インフラの探索を目指している。
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