マカオとデジタル元の関係性
中国中央銀行がデジタル人民元(Digital Currency/Electronic Payments:DC/EP)の試運転を進める中、カジノ業(賭博関連)を重要産業とする中国のマカオ特別行政区業者は、顧客流出を懸念している。
米ブルームバーグ誌の報道によると、マカオのカジノ業者は「デジタル人民元」の導入によって、高額の資金移動に対する政府の監視を嫌った富裕層が、郊外のカジノエリアに移転する可能性を懸念している。 デジタル人民元は、市民の個人データやトランザクション履歴を記録することが出来るとされ、中国政府が個人データを取得し、監視されるのではないかとの懸念も強い。
中国で普及するQRコード決済アプリ「Alipay」と「WeChatPay」では、すでに厳格なKYC認証が導入され、一定の金額を超えたトランザクションでは顔認証確認などが求められる。上記決済アプリはデジタル人民元でのデータ収集および報告を行わない方針を示しており、マカオのカジノでは利用できない。
マカオは2018年、カジノ業で約380億ドルの収益を計上していた。新型コロナの影響で2020年は売上げが落ち込んでいるものの、アジアで賭博が合法となっている有数の地域であり、相応の需要がある。
マカオ政府の反応
マカオ政府は12月2日、「カジノでのデジタル人民元利用の噂は、事実と異なる」との声明を公開した。大手業者Galaxy Entertainment GroupやSuncity Group Holdingsの株価が下落するなどしていたため、顧客不安の解消を意識したものと思われる。
業者の1人はブルームバーグに対し、「水が綺麗すぎると(プランクトンなど餌となる微生物が生き残れず)魚がいなくなる。透明性を高めすぎると、その影響で富裕層が消え去る可能性もある。」とし、カジノ業の実情とデジタル人民元の影響について訴えた。
参考:ブルームバーグ