伝統金融商品への投資を検討していても、その市場での投資経験・知識が少ないと二の足を踏んでしまうことも多いはず。こういった問題を解決し、長期投資にかかる労力を大幅に押さえられるのがAI(人工知能)に資産運用を一任できる「ロボアドバイザー」です。
本記事では、ロボアドバイザーとはどんなサービスかという基本情報から活用メリット・デメリット、投資家から高い支持を得るロボアドバイザーサービスまで詳しくご紹介します。
- 目次
1. AI投資サービス「ロボアドバイザー」とは
初めに、ロボアドバイザーについての基本情報から解説します。
1-1. ロボアドバイザー概要
ロボアドバイザーとは、独自のAIアルゴリズム・機会学習を用いて優秀なアナリストの運用知識や市場の膨大なデータを分析し、資産運用を自動で支援する投資代行サービスの総称。
人工知能が高度な分析に基づきサポートを行うため、専門家によるアドバイス無しにリスクを抑えた取引を実現します。
投資初心者向けに手放しで運用できる簡単な投資手法としての需要だけでなく、AIによる正確性・客観性・効率性の高い市場分析は投資経験者にも重宝されています。
こちらは、米国のリサーチ企業「インサイダー・インテリジェンス」による調査レポートのグラフです。19年時点で約34兆円だった北アメリカにおけるロボアドバイザー運用総額は24年には87兆円まで拡大すると予測され、将来の市場拡大に期待が集まっていることが分かります。
1-2. ロボアドバイザーの種類は「アドバイス型」と「投資一任型」
ロボアドバイザーは、大きく分けて「アドバイス型」と「投資一任型」の2種類です。
アドバイス型 | 投資一任型 | |
---|---|---|
初期設定 | ・WEB上で質問に回答
・理想的な資産配分、商品の種類を提案 |
|
商品の購入 | 最終決定は利用者が行う | 提案されたプランに同意・契約すると自動で購入 |
運用・リバランス | 利用者が手動で対応 | 自動で運用・リバランス |
手数料 | 基本的に無料 | 運用利益の1%程度 |
初めに年齢・年収・資産運用の経験等に関する質問の回答を入力すると、自動的にリスク許容度や最適な商品の組み合わせを診断します。
アドバイス型は最適なポートフォリオの提案や資産運用の助言を基本無料で提示してくれますが、実際の商品購入や運用など最終的な投資判断は利用者自身が行う必要があります。
一方、投資一任型は年に運用資産の1%程度の手数料を支払うことで、提案・助言に加えて一連の資産運用を人工知能に代行させることが可能です。実際の売買だけでなく相場の変化に応じた資産配分の調整にも対応し、中には発生する税金の額を最適化できるサービスも。
このような特徴から、アドバイス型は相場分析などのプロセスを省略したい投資経験者向け、投資一任型は本業が忙しい方や投資初心者向けと言えるでしょう。
2. ロボアドバイザーを活用するメリットとは
次に、ロボアドバイザーを活用する具体的なメリットについて、同じく投資を丸投げできるサービス「投資信託」と比較しつつご紹介します。
2-1. 完全手放し・リバランスもお任せ
まず最大のメリットとして、資産運用の手間を大幅に減らせる点です。
投資にはかなりの時間と手間がかかるものですが、投資一任型ロボアドバイザーなら簡単な質問に答えるだけでポートフォリオ選定・発注・運用・リバランスまでほぼ全て自動化できます。
リバランスとは、相場変動によってポートフォリオの比率が変化しリスク・リターンの大きさが当初の予定からズレた際に、売買によって資産配分比率を再調整することです。
ロボアドバイザーなら、定期的なリバランスだけでなく事前に設定したライフプランに合わせた細かな調整も可能。一方の投資信託では、このリバランスを手動で行う必要があります。
2-2. 知識不要で機械的にリスク判断
ロボアドバイザーは専門知識がなくても的確な運用やリスク判断ができる点もメリットです。
専門家が構築したアルゴリズムを利用するため、その市場に関する専門知識を持たない投資家でも最新のデータに基づいて運用が可能。また、シンプルなシミュレーション機能により、リターンの可能性やリスクの大きさを一目で把握できます。
また、投資においては、誰しも「焦燥」「不安」「希望的観測」といった主観的感情によって判断を誤るリスクを抱えているもの。この点、ロボアドバイザーなら判断に人の感情が介入しないため、高い客観性が担保されている点も魅力の一つです。
2-3. 世界の資産へ簡単投資
さらに、ロボアドバイザーなら多様な金融商品へ簡単に投資できるのも魅力的。国内外の株式・債券だけでなく不動産・コモディティ・米国ETFなど、個人で購入するにはハードルが高い商品にも手軽に投資が行えます。
投資信託では単一の資産の中で分散投資を行うケースが多いため、効果的な分散投資をするには複数の商品を自分で選択して都度購入する必要があります。ロボアドバイザーなら労力をかけることなく、様々な市場の幅広い商品へ簡単に分散投資できるのが大きなメリットと言えるでしょう。
3. ロボアドバイザー活用のデメリット・注意点とは
このように、ロボアドバイザーを利用する利点は非常に大きいです。しかし、その他全ての投資ツールと同様に完璧なわけではありません。実際に活用する前に、デメリットや注意点についても知っておきましょう。
3-1. 最低投資額・手数料は割高
ロボアドバイザーは、最低投資額や手数料が投資信託などと比べて高額になる傾向があります。投資一任型ロボアドバイザーの最低投資額は一般的に1万円/10万円で設定されており、100円から購入できる商品も多い投資信託と比較するとかなり高額です。
また、自動運用サービスの利用料が上乗せされる関係で、手数料もインデックス型投資信託や株式投資と比較するとやや割高に。とはいえ、ロボアドバイザーは人件費がかからないため、プロによる投資代行「ファンドラップ」の手数料(年率2~3%)に比べれば安価です。
3-2. 選択肢が少ない
また、運用商品の選択肢が限られている点もデメリットと言えるでしょう。
ロボアドバイザーで自動運用をする場合、診断結果に応じて提示される数種類の投資プランから一つを選択して運用を行います。一方で、投資信託はインデックス型・アクティブ型・テーマ型などタイプも豊富で、膨大な商品の中から自由に組み合わせられるため、選択肢の自由度という点では投資信託に軍配が上がります。
また、ロボアドバイザーはNISAなど非課税口座が利用できないタイプが多いため、節税効果を享受しにくい点にも要注意です。
3-3. 短期リターンは狙いにくい
ロボアドバイザーの投資対象は長期投資に適した投資信託・ETFに限定されており、リスクを抑えてコツコツ堅実な資産運用を行うために設計されています。ロボアドバイザーを利用する際は、その長所を最大限発揮できる長期投資を前提にして運用しましょう。
短期的なリターンを自動売買ツールで狙うのであれば、ロボアドバイザーよりも「システムトレード」の方が適しているかもしれません。
4. ロボアドバイザーの活用・運用シュミレーション
ロボアドバイザーの利点・注意点を把握できたところで、実際の大手ロボアドサービス「WealthNavi」を例に具体的な運用シミュレーションを確認しましょう。
まず、WealthNaviにおけるポートフォリオの種類・資産配分についてのグラフがこちらです。
このようにWealthNaviでは、リスクの許容度に応じた5通りのポートフォリオから選択可能。リスク許容度が高いほど全体に占める株式の割合が増え、期待できるリターン・損失を出す可能性が大きくなります。
例えば、21年4月時点の「リスク許容度3」ポートフォリオは、次の資産配分で形成されています。
こちらのポートフォリオで、30年間資産運用を行った場合を想定した資産評価額のシミュレーションが次の通り。100万円でスタートし、毎月3万円を積立した場合を想定しています。
30年後の元本は1180万円で、あくまで予測の域は出ませんが50%の確率で資産評価額が2399万円を超え、30%の確率で3066万円を超えています。元本割れを起こす可能性はありますが、8割の確率で元本の2倍以上の利益が見込めるという結果は特筆すべきでしょう。
実際、WealthNaviの過去5年の実績を見ると、右肩上がりで推移していることが分かります。
前提条件として、初回投資100万円に毎月3万円を積立投資し、半年ごとにリバランスを実施。ETFの分配金は、権利落ち日に再投資されています。運用益は年率1%の手数料控除後の金額ですが、分配金・リバランス時の譲渡益にかかる税金は考慮されていません。
5. 投資家から高い支持を得る投資一任型ロボアドバイザー3選
続いて、投資家から高い支持を得る投資一任型のロボアドバイザーサービスを3つ厳選してご紹介しましょう。
5-1. WealthNavi(ウェルスナビ)
過去の利回り(年率) | 4.61~8.01% |
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最低投資金額 | 10万円 |
運用手数料 | 1.1% |
投資対象 | ETF |
シミュレーション例としてもご紹介した「WealthNavi」は、ノーベル賞受賞者が提唱する理論に基づくアルゴリズムから最適なポートフォリオを構築するロボアドバイザーです。
21年11月には預かり資産総額6000億円を達成し、国内トップクラスの規模を誇ります。
ロボアドバイザーとしては日本で初めてNISA口座での取引に対応し、節税しながら資産運用の自動化ができる点が魅力です。また、一定の条件のもと税負担の最適化まで自動化できる「DeTAX機能」など、幅広い機能が搭載されている点も大きなメリット。
運用手数料は基本的に年率1.1%ですが、3000万円を超える資産を預ける場合「年率0.55%」まで手数料が割安になります。また、長期の運用で手数料が最大で年率0.99%まで割引される「長期割」というサービスも利用し、手数料を抑えることができます。
5-2. 楽ラップ
過去の利回り(年率) | 3.54~10.49% |
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最低投資金額 | 1万円 |
運用手数料 | 0.715%(固定報酬型) |
投資対象 | 国内投資信託 |
楽ラップは、楽天証券が開発・提供するロボアドバイザーです。最低投資金額1万円なため、その他のロボアドバイザーに比べて比較的気軽にスタートできる点が魅力。
ユニークな手数料システムを採用しており、預かり資産に対して固定の手数料が発生する「固定報酬型」のほか、運用利益に対して手数料が発生する代わりに固定手数料が割安になる「成功報酬併用型」も選択できます。
さらに、市場の価格変動が激しい状態が続いた場合に債券の配分を自動で増やす「下落ショック軽減機能(DRC機能)」の搭載されたコースもあり、より価格変動リスクを抑えた安定的な資産運用を実現しています。
5-3. THEO+docomo(テオプラスドコモ)
過去の利回り(年率) | 2.77~9.61% |
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最低投資金額 | 1万円 |
運用手数料 | 0.715~1.1%(税込・年率) |
投資対象 | ETF |
THEO+docomoはロボアドバイザー「THEO」を提供する株式会社お金のデザインがdocomoと連携して提供するサービスで、投資対象を世界86の国と地域の1万以上の銘柄に分散させる「グローバル分散投資」を提供しているのが特徴です。
THEOはポートフォリオのタイプが豊富で、最初の診断結果をもとに231通りの組み合わせから各利用者に専用のポートフォリオを提案。docomoとの連携により、運用資産額に合わせたdポイントが毎月還元されるため、ドコモユーザーには特に利用メリットが大きいロボアドバイザーと言えるでしょう。
このようにロボアドバイザーは伝統金融市場が主流ですが、21年には暗号資産(仮想通貨)のロボアドバイザーもローンチされています。
6. ロボアドバイザーに強いネット証券
ロボアドバイザーの利用を開始するには、サービスが連携するネット証券の口座を解説する必要があります。そこで最後に、ロボアドバイザーサービスがネット証券会社を2社厳選してご紹介しましょう。
6-1. SBI証券
SBI証券は、SBIホールディングスが運営する最大手のネット証券です。
WealthNaviと提携した「WealthNavi for SBI」のほか、「FundRobo」というアドバイス型のロボアドも提供しています。
さらに21年8月にはテーマ投資サービスやロボアドバイザーを提供する金融ベンチャーのFOLIOを買収した事を発表しており、22年3月から少額から購入可能なファンドラップ「SBIラップ」の提供開始が決定しています。
このようにSBI証券は多様なロボアドバイザーサービスを展開しており、今後もさらなる利用者層の拡大が見込まれる将来有望なネット証券です。
6-2. 楽天証券
楽天証券は、楽天市場や楽天カードなどでお馴染みの楽天グループが展開するネット証券。
前述した「楽ラップ」のほか「らくらく投資」というロボアドバイザーも提供しています。
楽ラップでは下落ショック軽減機能など細かい設定が可能な一方、らくらく投資はより初心者向けで簡単に利用できる点がメリットです。
らくらく投資の手数料は年率0.55%で、最低投資額は100円とかなりハードルが低くなっており、一般NISA・つみたてNISA口座に対応しているため節税しながら投資が可能。
より本格的な自動運用なら楽ラップ、投資初心者なららくらく投資から始めてみてはいかがでしょうか。
7. ロボアドバイザーで送る余裕のある資産運用
長期投資の運用において、一つ一つ目論見書等を読んで商品を選び、目的に合わせて組み合わせ、市場の変化に合わせて配分を調整するのは多くの労力がかかるもの。伝統金融市場の投資経験が少ない方や多忙な方は、運用を始めるだけでも疲弊してしまうかもしれません。ロボアドバイザーなら、投資運用における最も大変な部分をAIに任せて自動化できます。ロボアドバイザーを活用して、余裕のある資産運用を始めましょう。