ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)と密接に関係する「ブロックチェーン」の仕組みとメリットについて、初心者でもわかるように図解付きで解説しています。
- 目次
-
- ブロックチェーンとは何なのか
- <ブロックチェーンの特徴
- ブロックチェーンの種類
- ブロックチェーンの活用例
ブロックチェーンとは何なのか
ブロックチェーンを一言で言うと「台帳」です。台帳とは、ビットコインで例えると、通貨が売買されたと記録される、土台となる帳簿です。
その帳簿に、世界中からいくつもの記録が記載されていくというイメージです。しかし、ブロックチェーンはただの台帳ではありません。ビットコインのブロックチェーンは、ビットコインが生まれた2009年1月3日から今現在までのビットコインの全ての取引を記録している台帳です。
しかし、これだけでは、この台帳が「ブロックチェーン」と言われる理由がわかりません。
なので、ブロックチェーンがなぜチェーンとよばれるのかを考えましょう。チェーンにおいて、リンクはそれぞれ前後のリンクと組まれています。これと同じように、ブロックチェーンにおいては、ブロック(取引の情報)の内容と特異的に結びつくハッシュ1という値を、次のブロックに入れることで、芋づる式にデータの信頼性を担保します。
過去のブロックを改ざんすると、そのブロックのハッシュが変わり、以降のブロックとつながらなくなるわけです。
取引記録が全てブロックの中に入り、それらがチェーンとなり繋がっているため、ブロックチェーンは今までの全ての取引が記録されていることになります。
さらに、ブロックチェーンを支える技術はその構造だけではありません。ほかにもP2Pネットワークによる冗長性、台帳の管理方法であるコンセンサスアルゴリズム、そしてブロックチェーンの自動化を行うためのスマートコントラクトによってブロックチェーン技術は成り立っています。
P2Pネットワーク
ビットコインのブロックチェーンは、中心となる一つのサーバーで管理しているわけではありません。 現在一般的な情報システムは、中心となるサーバーが情報を管理する、中央集権的な方法が取られています。
- メリット
- 取引データの改ざん耐性(不変性)
- 記録の透明性
- デメリット
- 取引データの消去や置換は困難
- 取引データの承認コスト(手数料)が高い
- 取引データの承認に時間がかかる
プライベート・ブロックチェーンとは
プライベート・ブロックチェーンとは、特権的な管理者が存在し、参加するためには管理者の許可が必要なブロックチェーンです。bitFlyer社が開発を行うmiyabiなどに採用されており、処理能力が高い一方で分散性に課題があります。
- メリット
- 取引データの消去や置換が可能
- 取引データの承認コスト(手数料)が安い
- 取引データの承認が早い
- デメリット
- 取引データの改ざんが容易
- 記録の非透明性
これとは対照的にブロックチェーンはP2P(Peer to Peer)ネットワークを用いてデータを管理しています。 P2Pネットワークとは中心となるサーバーが存在せず、対等の立場のネットワーク参加者がデータを保持または送受信し合うネットワークのことです。
これにより、ノード(ネットワーク参加者)で取引記録を共有し、誰もがブロックチェーンを閲覧することができ、お互いに監視する仕組みができているのです。 これがもう一つのブロックチェーンの特徴であり、ブロックチェーンが日本語で「分散」型台帳と言われる由縁です。
コンセンサスアルゴリズム
一言に取引記録を共有すると言っても、どのノードが信頼できるか、どの取引が実際起こったものなのか断言することはできません。どの情報を信頼するかの合意に達するまでの手法をコンセンサスアルゴリズムといいます。これにはいくつか種類があり、ビットコインなどで利用されるProof of Work、イーサリアムのProof of Stake、リップル(XRP)のXRP Ledger Consensus Protocolなどがあります。
スマートコントラクト
ブロックチェーンの利点の一つに、取引の自動化があります。それを行うシステムはスマートコントラクトとよばれ、ブロックチェーン上で条件を定義し、それが満たされたときに任意の動作を行わさせることができます。スマートコントラクトのプラットフォームとしてはEthereumが有名で、様々なサービスがEthereum上で動作します。
ブロックチェーンの特徴
ブロックチェーンはその仕組みによる特徴が複数あり、その特徴こそブロックチェーンを利用する意味とも言えます。P2Pネットワークと分散台帳、これらがどのようなメリットを生み出すのかを紹介します。
改ざんや不正が極めて困難
ブロックチェーンはP2Pネットワークを用いており、特定の人物や団体が管理しているわけではありません。 誰かが管理しなければ、不正や改ざんが横行する心配が出てきそうに感じるかもしれません。しかし、以下の2つの理由からこれを防ぐことができます。
- 改ざんされる中央サーバーがない。
- データが全て繋がっている。
改ざんされる中央サーバーがなく、多数のネットワーク参加者でデータを共有しているため、中央サーバーにあるデータを書き換えることはできません。 もし、一部のデータが破損したとしても、ほかの場所からデータを復元することが可能になるのです。
また、ブロックチェーンでは過去のすべてのデータは繋がっているため、データの一部分を改ざんした場合、ハッシュの帳尻を合わせるために過去の全てのデータも改ざんしないといけません。 これを行うには莫大なコンピュータの処理能力が必要になるため、現時点では限りなく不可能に近いです。
「価値」や「権利」も記載可能
今までは、価値や権利の転送、オンライン上への記録は、改ざんの恐れがあるため、第三者(企業や業者など)の介入なしに行うことは難しいものでしたが、ブロックチェーンではその恐れがないため、第三者を間に挟む必要がありません。 ビットコインのようにお金の「価値」を送る以外にも、不動産登記や、著作権や知的財産権などの権利書を、第三者を間に挟まずに送ることができます。
データベースとの違い
データベースとは、管理者によって実行される集権型台帳です。 管理者はデータの整理や統合、活用のために、データの読み取りや書き込み、更新、削除などが行えます。ブロックチェーンとデータベースの性質は非常に似ているものの、いくつかの点において決定的な違いがあります。
台帳の管理権限ブロックチェーンは、台帳の確認、共有、記録を行う特権的な管理者が決められておらず、アクセスできる参加者に制限はありません。データベースは、台帳の確認、共有、記録を行う特権的な管理者が決められており、アクセスできる参加者が制限されています。
つまり、ブロックチェーンは世界中の誰でも台帳にアクセスすることができ、参加者によってデータの不正処理を防止し、透明性が提供されています。
データ処理能力
ブロックチェーンは、世界中の参加者から合意を得てデータの記録が行われるため、処理能力に依然課題があります。つまり、ブロックチェーンの分散管理による改ざん耐性(セキュリティ)とデータ処理能力は、トレードオフの関係にあるということです。台帳へのアクセス速度などはデータベースが勝る場合もあります。
ブロックチェーンの種類
これまで説明をしてきた分散型台帳はパブリック・ブロックチェーンを指しますが、ブロックチェーンには、パブリック・ブロックチェーン、プライベート・ブロックチェーン、コンソーシアム・ブロックチェーンの3種類があります。
今回はそれぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説します。
パブリック・ブロックチェーンとは
これまで説明した通り、パブリック・ブロックチェーンとは、特権的な管理者が存在せず、世界中の誰でも参加可能なブロックチェーンです。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などに採用されており、分散性が高い一方で処理能力に課題があります。
メリット・取引データの改ざん耐性(不変性)・記録の透明性 デメリット・取引データの消去や置換は困難・取引データの承認コスト(手数料)が高い・取引データの承認に時間がかかる・プライバシー性にかける
プライベート・ブロックチェーンとは
プライベート・ブロックチェーンとは、特権的な管理者が存在し、参加するためには管理者の許可が必要なブロックチェーンです。bitFlyer社が開発を行うmiyabiなどに採用されており、処理能力が高い一方で分散性に課題があります。
メリット・取引データの消去や置換が可能・取引データの承認コスト(手数料)が安い・取引データの承認が早い・プライバシーの保護が可能 デメリット・取引データの改ざんが容易・記録の非透明性
コンソーシアム・ブロックチェーンとは
コンソーシアム・ブロックチェーンとは、複数の企業や組織によって管理され、パブリック・ブロックチェーンとプライベート・ブロックチェーンの中間に位置するブロックチェーンです。リップル(XRP)などに採用されており、処理能力が高い一方で分散性に課題があります。
パブリック・ブロックチェーンとプライベート・ブロックチェーンの中間に位置するブロックチェーンとしてハイブリット・ブロックチェーンとも言われています。 コンソーシアム・ブロックチェーンは、参加するコンソーシアムメンバーとルール形成によって、メリットとデメリットが大きく異なります。
ブロックチェーンの活用例
世界には銀行口座を持っていない人が多くいて、そのような人たちと銀行を介してのお金のやり取りをすることはできません。 しかし、携帯やパソコンがあればブロックチェーン技術により、仲介機関を経ずにお金の価値のやり取りをすることが可能になります。 ブロックチェーンは取引記録だけでなく、様々な情報を記録することができるため、金融サービスの他にも様々な分野でブロックチェーンは活用されています。
不動産登記簿情報の追跡を容易に
パブリック・ブロックチェーンを使ったユースケースについて紹介します。
株式会社LIFULLは、ブロックチェーン技術を使った不動産登記の効率化に関する実証実験を行いました。 日本全体で空き家と言われる物件は800万戸近く存在しており、近い将来1,000万戸に到達すると言われています。そういった状況下でありながら、空き家の正確なカウントは難しく、不動産登記簿から所有者を追っても現所有者にたどり着けないという課題がありました。
そこで、ブロックチェーン上に不動産の権利移転とみなす当事者間契約の情報を記録することで、所有者の追跡と記録の確認を容易にすることを想定した実験が行われました。 従来、登記簿情報は行政管轄のデータベースで管理され、国の信用で成り立っているからこそ、同等の公証性を担保するためにパブリック・ブロックチェーンが最適であるという結論に至りました。また、登記の移転情報は短時間に膨大な取引数が発生する可能性も低いため、プライベート・ブロックチェーンを使う必要もありませんでした。
行政文書のデジタル化
プライベート・ブロックチェーンを使ったユースケースについて紹介します。
2021年1月20日から2月28日まで、飯塚市(福岡県)では株式会社Chaintopeが開発したブロックチェーンTapyrus(タピルス)を使って行政データのデジタル化を実現するための基盤となる「トラストシステム(認証局)」の構築および運用体制の実証実験を予定しています。
ユーザーは自身のスマートフォンを使って、いつでもどこでも自分自身の証明書をダウンロードでき、身分を証明したい企業・団体に提示することができます。 証明書を発行した行政は電子署名したデータと交付した日時(台帳に記録した日時)をブロックチェーン上に記録し、インターネット上に公開します。 証明書を提示された企業・団体は、インターネット上のトラストサービスを通じて、その証明書が不正に作成されたものでないことを確認します。
サプライチェーンの効率化
コンソーシアム・ブロックチェーンを使ったユースケースについて紹介します。
BMWグループではブロックチェーンを使ってサプライチェーンの透明性を推進しています。複雑なサプライチェーンにおいて、部品の出所や経路を追跡するには労力を要します。従来は各パートナーが別々にデータを管理してきたため、それぞれのシステム間で互いにコミュニケーションを取ることができませんでした。そのためBMWの購買部門やサプライヤーが手作業で透明性を確保する必要がありました。
BMWは、このような非効率性を排除することを目的にPartChainと呼ばれるプラットフォームの開発を発表しました。PartChainでは、ブロックチェーンを採用することでデータの改ざん耐性と検証可能性を高めることができます。 最終的にBMWでは、業界全体で重要なデータの匿名性を維持しながらサプライチェーン全体の追跡と効率化を目指しています。