Voyagerの買収契約の進展
米国の暗号資産(仮想通貨)取引所Binance.USによる、破産申請中の仮想通貨投資プラットフォームVoyager Digitalの資産買収に向けた取引について進展が見られた。
9日に開催された公聴会で、Binance.USの支払い能力に関してVoyageが提出した情報についてニューヨーク南部地区破産裁判所のMichael Wiles連邦地裁判事が承認した。今後の課題としては、対米外国投資委員会(CFIUS)の審査を控えている。
Binance.USは22年12月、Voyagerの資産売却価格として約1,400億円(10.2億ドル)を提示して落札した。しかし、支払い能力の確認不備を理由にSEC(米証券取引委員会)やニュージャージー州、バーモント州、ニューヨーク州、テキサス州、米国管財人から異議申し立てを受けていた。
8日にVoyager Digitalの弁護士が提出した文書によると、Binance.USは債務者への補償として約26億円(2,000万ドル)の現金支払いと、約20億円(1,500万ドル)の最大解約金の用意が要求される。
デューデリジェンスの結果、Binance.USの財務には合計3,500万ドルを支払うだけの十分な手元資金があること、また、Binance.USの全ての顧客のデジタル資産に対して100%に相当する資本を維持していることを確認したという。
Voyager DigitalはBinance.USへの売却により、破産申請時における顧客の預金価値の51%を回収できるとしており、ボイジャーの弁護士Joshua Sussberg氏は「これ以上の取引はない」と法定で述べた。
Voyager Digitalは22年7月に米連邦破産法11条(チャプターイレブン)の適用を申請。その後、FTXトレーディングへの資産売却プロセスを進めてきたが、11月にFTXが破産申請を行ったことで頓挫していた。
裁判資料によると、Binance.USとの取引内容は、FTX USとの取引と構造的に類似。債務者はBinance.USに対して全ての資産を売却し、顧客口座は全てBinance.USに移行する。一般無担保債権の保有者には現金を支払い、債務者の財産は適時清算する。
12月のVoyager Digitalのプレスリリースによると、バイナンスUSの落札価格は、10.2億ドル(約1,400億円)。内訳は、Voyagerの仮想通貨ポートフォリオの現在における市場価値が約10億ドル、そのほかに今後の増分価値として2,000万ドルが付加された。
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今後の課題
今後については、3月にも確認審問が行われる予定。事前に、Voyager Digitalの債権者の過半数の承認も必要となる。
また、公聴会でVoyagerのSussberg弁護士は、12月30日の裁判所提出書類で両社の取引に異を唱えた対米外国投資委員会(CFIUS)の審査に、Binance.USと共に対応していると述べた。
対米外国投資委員会(CFIUS)
米国の国家安全保障の観点から、米国の企業・事業・技術に対する外国投資の審査を行う組織。米財務長官がトップを務める。特定の取引について外国投資家に対して、事前にCFIUSに届け出を義務付けた。特に中国の対米投資を阻止する事例が増えている。
▶️仮想通貨用語集
Binance.USはカリフォルニア州に本拠を置くBAM社が運営。中国系カナダ人チャンポン・ジャオ氏がCEOを努めるBinanceからは「完全に独立している」と主張されている。Binanceは、米司法省の連邦検察官によるマネーロンダリングや制裁に関する法律違反の疑いがかけられていることが、情報筋の話として報道された。
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