
今後のステーブルコイン市場を展望
金融大手シティグループの研究部門は23日、「ブロックチェーンとデジタルドル」と題するレポートを発表した。ステーブルコイン市場が2030年までに0.5兆ドルから3.7兆ドルに達すると予想している。
ステーブルコイン市場が拡大する要因については、主に以下のものを挙げた。
- 米国および米国外のドル保有の一部が、紙幣からステーブルコインに置き換えられること
- 米国および米国外の家計や企業が保有する米ドル短期流動性の一部が、利便性(24時間365日、国際取引など)からステーブルコインに割り当てられること
- ステーブルコインが決済、また法定通貨との仲介として利用される仮想通貨市場の成長
こうした要因により、2030年のステーブルコイン市場規模について、基本シナリオで1.6兆ドル(約229兆円)、強気シナリオでは3.7兆ドル(約529兆円)、弱気シナリオでは0.5兆ドル(約71兆円)と予測している。
レポートは、規制で認められれば、ステーブルコインが利回り資産の一部代替となる可能性もあると意見した。
なお、この点については現在米国両院で進められているステーブルコイン法案にて、「決済用ステーブルコイン」の定義から利回りを提供するものは除外するとされているため、動向が注目される。
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さらにレポートは、2030年の基本シナリオ・強気シナリオの両方で、ステーブルコイン市場は引き続き米ドルが約90%のシェアを維持するだろうとも予測した。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、アルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
強気シナリオへと導く要素としては、欧州と北米、サハラ以南アフリカやラテンアメリカなど主要地域での好ましい規制、ステーブルコイン準備金の健全性に対する広い信頼、新旧のインフラを橋渡しする技術などを挙げている。
一方で、弱気シナリオの要因としては、地政学的要因、デジタルドル化への抵抗、ステーブルコインに代わるCBDC(中央銀行デジタル通貨)の広範な導入などに言及した。
弱気シナリオでは、ステーブルコインの使用は仮想通貨エコシステム内や、一部の国際決済などに限定されるとしている。
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ステーブルコイン発行者と米国債
シティグループのレポートは、米国のステーブルコインに関する規制枠組みが進展することで、米国債に対する新たな需要を促進するとも見解を述べた。2030年までに、ステーブルコイン発行体を米国債の主要保有者にする可能性があるとしている。
現在も、市場シェアトップの米ドル建てステーブルコインUSDTを提供するテザー社をはじめ、様々な発行者が準備資産として米国債を保有しているところだ。
テザー社は昨年10月時点で、準備資産の主要な部分として約1,000億ドル(約14兆円)の米国債を保有している。昨年4~6月時点で、同社の米国債保有量は、ドイツ、アラブ首長国連邦、オーストラリアを上回り、世界の国家を含めた保有ランキングで18位になった。
同社は大規模に保有する米国債の利回りからも大きな収益も上げている。