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規制はコストではなく「堀」、NERO Chain創業者に聞く2026年のWeb3業界

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

Web3の実用化が進む中で、多くの機関投資家が求めるのは「規制に準拠した信頼できるインフラ」だ。

NERO Chainは、アカウント抽象化でガス代やウォレットの煩わしさを解消するレイヤー1ブロックチェーンだ。その一方で、オーストラリアの規制当局AUSTRACに登録し、豪州で規制に対応したチェーンとしての立ち位置を築いている。

同社は規制を「コスト」ではなく「堀(moat)」と捉え、金を軸とした現実資産(RWA)のトークン化を本格化。日本を重要な戦略拠点に位置づけ、WebX2026にプラチナスポンサーとして参画する。

創業者Jake Stolarski氏に、規制を強みとした事業戦略と2026年のWeb3展望を聞いた。

Jake Stolarski
Jake Stolarski(ジェイク・ストラルスキー)
NERO Chain|創業者(Founder)
物理学・電気工学の学位を持ち、ノースロップ・グラマンおよび米空軍研究所の研究員としてキャリアを開始。その後、シカゴ・トレーディング・カンパニーのディレクター、NYSEのオプションスペシャリストを経て、CMEで世界トップ3にランクインしたボラティリティ・ファンドを共同で構築(3年連続70%のリターン)。米国初のSEC・CFTC登録のデジタル資産ボラティリティ・ファンドであるCipher Technologies Managementでトレーディングとリスクを統括し、業界初の担保ロックボックス基準などを策定した。ビットコインETFの初期申請者の一人であり、Huobiでトップ20入りしたレイヤー1「Cube Network」のCEOも務めた。

WebX2025で得た手応え

昨年得られた主な手応えや、WebX2025出展での来場者の反響についてお聞かせください。

WebX2025で実感したのは、機関投資家の資金が、規制に準拠した現実資産(RWA)インフラへ本格的に動き始めているということです。

私たちのブースでは同じ3つの質問が繰り返し寄せられました。「その資産は本当に裏付けがあり、監査可能なのか」「運営者は実在する当局に登録されているのか」「その事業は規制当局の精査に耐えられるのか」というものです。この3つすべてに迷わず『イエス』と答えられたことが、何よりの決め手になりました。

とくに有意義だったのが、アセットマネージャーやファミリーオフィスとの会話です。これまで仮想通貨を遠巻きに見てきたものの、いまや真剣に向き合える取引相手を探している、資金を動かす側の人たちで、そのときのやり取りのいくつかは、その後、具体的な提携交渉へと発展しました。

そこで得た学びは、市場の性質が変わったということです。いまや本気の資本は、規制された枠組みと、その裏づけとなる本物の資産を示せるプロジェクトに向かうようになり、派手なトークノミクスの時代はほぼ過去のものになりました。

2026年のWeb3予測と「堀」になる規制

来年のWeb3業界をどのように予測されていますか。その中で貴社はどのような役割を担っていきたいとお考えですか。

2026年、Web3はついに、社会の裏側で動く『インフラ』になります。投機的なリテール(個人)のサイクルは燃え尽き、その代わりに育っているのが機関投資家の動きです。現実資産(RWA)のトークン化が実証実験から本番運用へ移り、ステーブルコインが基盤の決済レイヤーとして定着し、規制も国・地域ごとに順に整っていく。

米国のGENIUS法、欧州のMiCA、香港・シンガポール・UAEのステーブルコイン制度がその例で、トークン化された国債(米国債)とプライベートクレジットは、それぞれ10億ドルを突破しました。

次の波はコモディティ、株式、利回りを生む資産へと広がり、それらがステーブルコインのレール上で動き、やがてAIエージェント自身がオンチェーンで取引を行うようになります。

いまや優位に立つのは、『地味な資産』を持つ者です。各種の登録、コンプライアンス体制、銀行との関係、流通面での提携といったものが、それにあたります。かつて規制はコスト項目でしたが、今年、規制は『堀(moat)』になりました。

それこそがNERO Chainが立つ土台です。私たちはAUSTRACに、デジタル通貨取引所(Digital Currency Exchange)、仮想資産サービスプロバイダー(VASP)、そして金地金ディーラー(Gold Bullion Dealer)として登録されており、これにより豪州初の『規制対応レイヤー1』となっています。主軸は金(ゴールド)で、合成的な請求権ではなく本物の資産をオンチェーンに載せる、現物裏付けのトークン化です。監査可能で、カストディ(保管)され、規制下にあり、しかもすでに商用として動いています。

その上で私たちは、業界の他のプレイヤーがこれから必要とする『規制されたレール』を構築しています。コンプライアンスに準拠した取引所、豪州・パキスタン間の送金回廊、そしてその下で動くステーブルコイン決済です。

私たちが担いたい役割は明快で、この地域で現実資産の信頼できる規制対応の『拠点(ホーム)』になること、機関投資家が実際にビジネスをできる取引相手になることです。

編集部注:GENIUS法は米国のステーブルコイン規制法、MiCAは欧州連合(EU)の包括的な仮想通貨規制を指す。

今後1年の注力領域

Web3関連事業において、今後1年間で注力する領域や新規プロジェクトについてお聞かせください。

金(ゴールド)を起点としたRWAトークン化。
これが主軸の領域です。短期的な焦点は『$GOLD』で、現物の裏付けがあり完全にカストディされた金トークンとして、裏づけがあり監査も可能な資産を、いまオンチェーンに載せます。地中埋蔵分を対象とした『nGOLD』はその後に続きますが、完全なライセンスと採掘権(テニュア)を一式そろえる必要があるため、こちらはホールセール(卸売)限定にとどめます。合成的な商品を早すぎるタイミングで世に出すよりも、きちんと裏付けがあり取引できる状態の商品で先頭に立つことを選ぶ、という考え方です。

規制対応の取引所インフラ。
私たちは『NeroExchange』を、デジタル資産やトークン化されたRWAを扱う、コンプライアンス準拠の取引の場へと拡大しています。今年、機関投資家がオンチェーンに参入してくる中で彼らが求めているのは、いまやあらゆる主要市場に到来しているコンプライアンス負担に対応できる、登録され監査も受けた取引相手であり、私たちはまさにそこを埋めています。

送金とステーブルコイン決済。
私たちは豪州・日本間、そして豪州・パキスタン間の回廊を、ステーブルコインのレール上に構築しています。RWAと決済が最も役立つ形で交わる領域で、国境を越えて、安く、瞬時に、そして規制された枠組みの中でお金を動かします。パキスタンでPVARA向けのライセンス取得を進めている『NeroFi』への30%の戦略的出資が、この送金回廊のパキスタン側を支えています。

AIとコンピュート(計算資源)。
まだ初期段階ですが、上振れの余地が大きい領域です。AIトークンのマーケットプレイス、コンピュート(計算資源)の先物、そしてそれらのワークロードを支えるデータセンターのOPEX(運用費)と、いずれの市場も極めて非効率です。だからこそ私たちは、AIと仮想通貨の融合は本物であり、効率化の利益を最も取り込めるのはコンピュート市場だと考えています。

この4つの取り組みすべてをつなぐのが、私たちが2年がかりで整えてきたAUSTRAC登録です。今こそそれを生かして動く絶好のタイミングであり、NEROが手がける他のすべては、この土台の上に成り立っています。

AUSTRAC三重登録という土台

最後に、改めてアピールしたいポイントを教えてください。

NERO Chainは、AUSTRACにデジタル通貨取引所、仮想資産サービスプロバイダー(VASP)、そして金地金ディーラーとして『同時に』登録されている、豪州唯一のレイヤー1です。この三重登録こそが事業全体の土台であり、これにより、私たちが手がけるすべてが、3つの異なる資産クラスにまたがって、現時点で合法的に運用できる状態になっています。

しかも、このコンプライアンス体制はすでに現実のもので、実際に動いています。登録は完了し、現物の金のカストディ体制は稼働し、取引所のMVP(実用最小限の機能)も動いていて、国境を越えた送金回廊も動き始めています。

だからこそ、アジア太平洋地域でトークン化された現実資産への規制された入り口を探している機関投資家にとって、NERO Chainは『次の資金調達』や『次の規制判断』を待つまでもなく、いますでに存在している取引相手なのです。

このすべてを、WebX2026でお見せできることを楽しみにしています。

WebX2026プラチナスポンサー参画の理由

WebX2026のプラチナスポンサーとして参画を決めた理由と、イベントへの期待をお聞かせください。

WebXは、私たちが賭けている領域、つまりアジア、規制、そして現実資産とちょうど重なる場所にあります。日本はちょうど暗号資産(仮想通貨)を金融商品として位置づけ直したところで、これは初日からコンプライアンスを前提に作られた企業に有利な、まさに規制の成熟です。それが私たちのテーゼ(仮説)であり、WebXは機関投資家、政策立案者、投資家、そして実際に開発している人々といった、そこに関わる人々を同じ場に集めます。

プラチナスポンサーとしての参画は、NERO Chainを、信頼でき規制された取引相手として、その議論の中心に置くものです。日本は私たちにとって戦略的な拠点であり、だからこそWebXは、その関係を深め、『豪州初の規制対応レイヤー1がアジアへの本物の橋を架けている』ことを市場に示すのに自然な場なのです。

私たちが狙う成果は3つあります。一つ目はパートナーシップで、現実資産の規制された『拠点』と、この地域における信頼できるパートナーを求める、取引相手、カストディアン、取引所、インフラ提供者です。二つ目は資本で、WebXには、私たちが直接向き合いたいと考える水準のファンドや機関投資家が集まります。三つ目は政策で、日本が、そしてより広くアジアが、この業界の次の局面を形づくる枠組みを議論していく、その場に身を置くことです。

目指すのは、事業を前に進める少数の対話と、『現実資産の経済が走る、規制されたレール』としてのNERO Chainの明確な立ち位置です。

編集部注:日本では暗号資産(仮想通貨)を、資金決済法上の決済手段から金融商品取引法(金商法)上の金融商品へ移行させる法整備が進められている。金融庁は2026年の通常国会への改正案提出を見込んでおり、成立・施行を前提に、株式などと同じ20%(復興特別所得税等を除く)の申告分離課税が、早ければ2028年1月以降の取引から適用される見通し。

ブースの構想 Web3予測市場「NERO YOSO」

WebX2026でのブースなど出展内容について、現時点で構想されているコンセプトや新たな試みがあればお聞かせください。

WebX2026に向けて、私たちは日本初の合法的なWeb3予測市場プラットフォーム『NERO YOSO(ネロ・ヨソウ)』を発表できることを誇りに思っています。目標は、複雑な分散型市場と日常のユーザー体験との間にある隔たりを埋めることです。ブロックチェーンを使った予測市場はとかく難しく感じられがちなので、ブースは『見えないものを、見えるようにする』という、たった一つの直感的なコンセプトを軸に設計しました。

ブースでは、ライブのイベント連動型の予測ゲームを企画しており、報酬はその場で配布します。来場者はQRコードをスキャンするだけでアプリに参加でき、予測を入力すると、それが数秒でリアルタイムに反映される様子をその場で見られます。

日本初の法令準拠のWeb3予測市場として、複雑なウォレットの設定やブリッジの仕組みといった、よくある参入のハードルを取り払い、誰もが日常的に使っているツールから予測市場に参加できる、そのなめらかな体験そのものを届けます。

ぜひブースに足を運んで、これまでにない取り組みを体験してみてください。

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