- 既存アドレス・取引履歴を維持したまま署名鍵のみ移行できる設計
- 2026年から3段階で導入、Ed25519廃止は2028年以降に検討
二つの脅威へ対応
暗号資産(仮想通貨)ステラ(XLM)の開発・普及を主導するステラ開発財団(SDF)は9日、量子コンピュータ時代を見据えたネットワーク移行計画「Quantum Preparedness Plan(QPP:量子対応計画)」を発表した。
ステラは、ネットワーク独自の設計上の利点を活かし、既存のアドレスや取引履歴を維持したまま、2027年末までにすべてのアカウントを量子耐性署名方式へ移行させる計画だ。
SDFが示す量子コンピューターによる具体的な脅威は、以下の2点に整理される。
- ネットワークの整合性:バリデータが使用するEd25519署名が偽造されることで、コンセンサスプロトコル(SCP)そのものが掌握される深刻なリスクがある。
- アカウント乗っ取り:ショアのアルゴリズムを用いれば、Ed25519公開鍵から秘密鍵を導出できるようになる。ステラはアカウントアドレスが暗号処理されず公開鍵が露出する設計のため、ネットワーク上のすべてのアカウントが標的になりうる。
前者はバリデータ数が数百程度にとどまる規模であるため、SCPのアップグレードで対処可能だとSDFは説明する。より困難な課題は、後者のアカウントの乗っ取りであり、QPPが重点的に取り組む対象だと強調した。
一方、ステラは他の多くのブロックチェーンと異なり、「アカウントアドレス」と「署名鍵」を分離した設計を採用している。これにより、既存のアドレスや過去の取引履歴を維持したまま、署名鍵のみを量子耐性方式へと更新できる構造的な強みがあるとSDFは指摘する。
こうした背景から、QPPでは新たな署名方式の定義と、それを支える周辺インフラの構築を中核に据えている。
関連記事:「Q-Dayの基本シナリオは2033年」、ブロックチェーンの量子脅威対策は今すぐ始めるべき=Project Elevenレポート
量子耐性暗号企業Project Elevenは、既存の公開鍵暗号を破る「Q-Day」の基本シナリオを2033年と予測。約690万BTCが将来的な量子攻撃にさらされるリスクがあるとし、ブロックチェーン業界は今すぐ量子耐性システムへの移行を始めるべきだと警告している。
2026年から段階的に導入
SDFはQPPを3段階で実施する予定だ。
- 第一段階(2026年):構成要素とコントラクトアカウント スマートコントラクト基盤「Soroban」に耐量子署名の検証機能をネイティブホスト機能として追加。米国立標準技術研究所(NIST)が標準化したML-DSA-44およびML-DSA-65をサポートする。法人向けウォレットは同年内の対応が見込まれている。
- 第二段階(2027年):プロトコルレベルでの組み込みとオプトイン移行 Core Advancement Proposal(CAP、中核プロトコル改善提案)を通じて、量子耐性署名方式を正式に導入。既存の全アカウントは、set_optionsを使って従来のEd25519署名者に加え、量子耐性署名者を追加できる。新規アカウントの作成やアドレスの変更、残高の移転はいずれも不要。
- 第三段階(2028年以降):Ed25519署名の非推奨化 将来的なEd25519の廃止も視野に入れるが、時期については量子コンピューター技術の進展とエコシステム全体の準備状況を見極めて決定する。
SDFは最終段階において、長期間アクセスのない「休眠アカウント」の扱いをめぐり、コミュニティとの幅広い議論が不可欠だとしている。旧署名方式を完全に無効化する場合、当該アカウントの資産を事実上凍結するのか、それとも別途、救済・復旧手段を設けるのかなど、極めて難しい判断を迫られるためだ。SDFはこの問題を、設計上の重要な論点として広くコミュニティに提起して いる。
関連記事:マネーグラム、ステラ上で独自ステーブルコイン「MGUSD」を米国ローンチ
国際送金大手マネーグラムが2日、米ドル建てステーブルコイン「MGUSD」を米国市場で正式に立ち上げた。ストライプ傘下のブリッジが発行体を担い、ステラブロックチェーン上で発行。
前倒しされる量子リスクのタイムライン
SDFは、量子コンピュータが現在多くのブロックチェーンを保護する楕円曲線暗号を破ることは、「数学的に不可避」であり、問題はもはや実現の可能性ではなく「その時期」だと警告する。
タイムラインを巡ってはさまざまな予測があるが、近年の技術的進展を踏まえると、想定される猶予期間は確実に縮まっているとSDFは指摘する。具体例として、暗号解読の「危険領域」を2030年以降とみていたNISTなどの専門機関が近年その予測を前倒ししていること、また量子ハードウェア開発を進める米グーグル社が、自社インフラの量子耐性暗号(PQC)移行期限を2029年に設定していることを挙げた。
NISTが2024年に初のPQC標準規格を策定し、複数の方式が開発中であることから、技術的な移行基盤はすでに整っているとSDFは主張する。
また、米国の「CNSA 2.0」や欧州の「DORA」といった規制枠組みも、金融インフラに対し量子耐性への移行タイムラインを推奨しており、将来的なコンプライアンス要件の方向性が示されている。
危機が現実のものとなってから動くのではなく、今から準備を進めることが、計画的で安全なネットワーク移行につながるとSDFは結んでいる。
解説記事:ステラルーメン(XLM)とは?【2026年最新】DTCC連携・買い方・リスクを解説
ステラルーメン(XLM)は、DTCC・マネーグラム・Visa・Mastercardが採用する国際送金特化ブロックチェーン。仕組み・機関連携の最新動向・リスクと、SBI VCトレード・ビットバンク・コインチェックの比較を解説。



WebX完全ガイド
TOP
新着一覧
チャート
取引所
WebX




































